いきなりだけど、電車はなかなかいいものだ。
本屋で買ったこち亀やハガレンの新刊を読みながら、両耳はイヤホンを通して「愛を取り戻せ」を聞く。
あるいは、駅で買った新聞を穴が開くほど見つめ、株価の変動に一喜一憂する。
自分で運転しなきゃいけない車と違って、電車とは実にいいものだと思う。
・・・そんなふうに思っていた時期が、僕にもありました。

大阪市営地下鉄で男性会社員が痴漢にでっち上げられた事件の後、「男性専用車両を導入してほしい」という申し入れが市交通局に殺到していることが21日、わかった。
同市交通局のWEBサイトには、事件が発覚した今月11日以降、男性専用車両の導入や男女の乗車車両の分離を要望する乗客からのメールが18日の時点で20件を超えていた。
これについて、平松邦夫市長は、「えっ、ほんまに!? そんなにリアクションがきてるんですか…」と驚きを隠せない様子だとか。

そもそも事の発端は先月に起きた痴漢冤罪事件。
「お知り触ったでしょ?」と地下鉄御堂筋線の電車内で、男性会社員が近くの女性から声をかけられた。
否定すると女性はうずくまって泣き出し、甲南大の男性も「触りましたよね」と詰め寄った。
男性会社員は、府の迷惑防止条例で現行犯逮捕されたが、その後、証言の食い違いから示談金目当てのでっちあげである事が発覚した。
同様の事件は今や全国各地で起きている。冤罪と証明された人であればまだしも、中には冤罪でありながら、言われなき罪で服役している人もいる。

こうした事件の背景から、現在の女性専用車両に加え、新たに男性専用車両を作ってほしいとの声があがったのだが、これはなんともやりきれない話だ。
女性専用車両ができたとき、ネットではずいぶんと賑やかな議論が繰り広げられていた。内容の大半を占めていたのは、「男性専用車両も作れよ」といったもの。
その後、痴漢冤罪による問題が多発、それらをモデルにした映画「それでもボクはやってない」などが公開されるなど、痴漢の冤罪問題は非常に大きく、そして異常なほど陰湿に浸透していった。

痴漢は犯罪であり、もちろん許される行為ではないし、厳罰を持って対処すべきであろう。だが、同時に示談金目当てなどで冤罪をでっちあげるのも、これまた許される事ではない。
ひとたび痴漢容疑をかけられれば、そこから先の人生は終わったも同然だからだ。男性であればこれ以上の恐怖はない。こうした声が上がるのは、当然と言えば当然である。
だが、こうした冤罪で本質的に被害にあっているのはやはり「本当の被害者」であろう。冤罪などの可能性を考慮すれば、「痴漢です」と叫ぶのも躊躇してしまう。
冤罪は、こうした実際に被害にあっている人までをも傷付け、貶めてしまう行為なのだ。

男性専用車両の設立要請は、こうした背景を考えると、もはや必須ともいえる。
これに対し私鉄大手5社は「要望が多数寄せられれば、(男性専用車両の導入を)『検討する可能性がある』」と言う。
このしがらみが払拭される日は、まだまだ遠い。