記者会見に臨んだグッドウィル・グループの折口雅博会長(右)とコムスンの樋口公一社長

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   数々の「処分逃れ」を指摘され事実上「事業廃止」処分を受けた訪問介護最大手「コムスン」の親会社、グッドウィル・グループ(GWG)の折口雅博・会長兼CEOが2007年6月8日、ようやく記者会見を開いた。2時間半以上に及んだ会見で、折口会長は何度も頭を下げたが、「現場が悪い」「お客のためを第一に考えてやった」などとし、内容は「保身」のオンパレードだった。

   会見は、15時から同グループ本部が入る東京の六本木ヒルズ34階の大会議室であった。黒のスーツに濃い紺のネクタイという「反省モード」のいでたちで現れた折口会長は、ほかの幹部4人を引き連れ会見席に並び、「多大なご迷惑をおかけして心よりおわび申し上げます」と頭を下げた。

社長は辞任、報告を受けて了承した会長は居座り

   折口会長は冒頭、「経過につきまして樋口の方から説明させます」といきなりマイクを振った。コムスンの樋口公一社長が、不正に関与した事務所の廃業届けを出すという一連の「処分逃れ」について、「連座制を適用されては大変だ、と(廃業届け提出を)指示した」とあっさり処分逃れの意図を認めた。次に折口会長は、「会長は知っていたのか」との質問に対し、報告を受けて了承した、と話した。しかし「報告の際は適法と聞いていた」と付け加え、法律に触れなければ問題ないだろう、といわんばかりの態度を示した。

   これに助け舟を出すように樋口社長は「法律的に問題ないから、と折口に強く勧めたのは私だ」と説明、「責任を取るため辞職します」と話した。一方で折口会長は、グループを運営するには自分が必要で、引き続き改善に向け努力したいと引責辞任する考えがないことを示した。経団連の理事についても「経団連におまかせする」という言い方で、自分から辞任する考えはないとした。

   さらに、役員報酬を1年間辞退することも明かした。記者から、報酬辞退だけでは理解は得られないのではないか、と問われると、折口会長は、そうかもしれないが、結果的に不正になったものの意識的ではなく、今後改善していくので「チャンスをお与えください」と開き直った。

現場の知識不足が不正請求の原因?

   そもそもの事務所での介護保険料の不正請求の原因についても、コムスン役員が、現場の知識不足だと言い切った。樋口会長は会見の中で何度も「すみません」と頭を下げたが、それは管理、監督が至らなかったためとの考えを強調した。現場が勝手にやったというのだ。ノルマが厳しすぎ、それが現場を追い込んだのではないか、という質問に対してもコムスン幹部が通常企業の努力の範囲だと答え、折口会長は細かくうなずきながら聞いていた。

   コムスンのグループ内譲渡については、厚生労働省の指導に従って「凍結」する考えは示したものの、「検討してから判断を下すが、理解が得られれば最終的にグループ内に移すこともありうる」と未練を残した発言だった。

   樋口社長は、コムスンへの「廃業」処分が出ることに備え、子会社の所属を移すなど事前に準備していたこと、これも折口会長が知っていたことも明らかにした。折口会長は「適法と聞いていた」と答えた。記者から「それは、処分逃れを指示した、と思われて仕方ないでしょ」と詰め寄られると、20秒ほど沈黙し、「結果的にそう見られるかもしれない」と認めた。しかし、介護事業の利益があがらない実態を強調し、「邪心もなく利得行為でもなかった」とした。

   介護事業をグループとしてどうするかを何度も問われたが、自身の父親の介護経験と社会貢献の重要さから、仮にコムスンをグループ外へ売却することになっても、グループ内で介護事業を継続したいと話した。

   会見中「済みません」を繰り返した折口会長だが、記者からは「反省してないでしょ」と質問とも感想ともつかない言葉が何度も出た。折口会長は「すべて出直さなければならない、全力で努力する」とひたすら、グループ内で自分が必要だと幾度も訴えた。

   折口会長の総資産を尋ねる質問が出たが、答えは「把握しておりません」だった。