Amazonは、彼らのプラットフォームを利用するサードパーティセラーにも、年齢、収入、性別、そして結婚歴といった顧客情報のデータにアクセスできるようにしはじめた。

これはサードパーティセラー向けのプラットフォームであるセラーセントラル(Seller Central)を使用して、より多くの情報を提供するというAmazonの努力の一環だ。4月9日に新しくローンチされたAmazonブランドアナリティクス(Brand Analytics)では、これらの取り組みを強調している。そこで提供されるのは、人気のある検索単語や比較されるプロダクトについてのインサイト、フルフィルメント by Amazon(FBA)における月間ストレージと削除手数料の免除プロモーション、グローバル販売展開をするためのカスタムガイダンス、そして販売者向けのトレーニングツールなどだ。

Amazon専用のエージェンシーであるボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)のCEOであるキリ・マスターズ氏は、4月第1週の週末に、セラーによるLinkedIn(リンクトイン)投稿でこの動きを知ったという。また、Amazonは、デモグラフィックアナリティクスをアメリカのセラーたちに公開したことを、米DIGIDAYに対して認めた。

Amazonによると、カスタマーデモグラフィックレポートも含めた、Amazonブランドアナリティクスは「ブランド登録(Brand Registry)」を行った一部のブランドオーナーのみアクセス可能となっているという。現時点では、ブランドを有するセラーか、ブランドの代表、製造者、もしくはエージェントとして機能しているセラーのみとなっている。

問題点のひとつが改善



サードパーティ販売者たちにとってみれば、顧客データへのアクセスが限定的であることは大きな問題点だった。顧客のデモグラフィック情報に無料でアクセスできることで、Amazonのマーケットプレイスが抱えていた最大の問題点のひとつが改善されたことになる。検索単語、単語の人気度、クリックとコンバージョンといった、それまでほとんど得られなかった情報を、ブランドアナリティクスは提供してくれると、ライズ・ブルーイング(Rise Brewing)のファイナンス部門ディレクターであるライアン・ウィリアムズ氏は言う。顧客のデータが限られているなかでは、Amazonでアイテムを購入する顧客相手にマーケティングを行うことは、セラーにとって困難であった。

顧客のデモグラフィックに関するインサイトは、Amazonを超えてより広範囲なマーケティング戦略に影響を与えるだろうと、ウィリアムズ氏は言う。彼自身も先日、この機能を吟味しはじめたばかりだ。

「これはマーケティング戦略に非常に有益だ。AmazonだけでなくAmazonの外側についてもそうだ。どのような顧客にフォーカスするべきか、という質問を投資家たちから常に投げられている。Googleアナリティクス(Analytics)以上のことは、答えるのは容易ではない」と、ウィリアムズ氏は語った。

セラーセントラルの販促



ファットスナックス(Fat Snax)の最高マーケティング責任者であるブライアン・へマート氏は、今回加えられたインサイトはAmazonからのポジティブな動きではあるものの、ファットスナックスが抱えている自社のeコマースサイトを廃止するほどのものではないという。

「我々のサイトを通して、ダイレクトなチャンネルを持つことは、いまだに非常に重要だ」と、彼は語った。

今回の新しいアナリティクスの導入におけるAmazonのモチベーションは、小規模なセラーを助けることだけではないと、Amazon専門のエージェンシーたちは言う。Amazonが、卸売プラットフォームからセラーセントラル(Sellter Central)へセラーたちの一部を移動させようとしていることは、最近になって報道されている。ベンダーセントラル(Vendor Central)を使っていた場合、料金を支払わなければいけなかったようなデータに、サードパーティセラーたちもアクセスできるようにすることで、セラーセントラルをプロモーションしようとする戦略が見えると、エージェンシーのエグゼクティブたちは言う。

べンダーセントラルを使って販売するブランドたちは、Amazonリテールアナリティクスプレミアム(Retail Analytics Premium:ARA)のサブスクリプションの一部としてデモグラフィックデータにはお金を支払っている。報道によると、その料金は1年間3万ドル(約330万円)にも及ぶ(無料プランとなるリテールアナリティクスのベーシックプランは、セールスや在庫レベルといったビジネス指標のレポートは提供される)。Amazon自身がサイト上の商品扱いを処理しているため、ベンダーモデルにとっては、ブランドアナリティクスは重要性が低いと、Amazonは述べている。

Amazon広告への追い風



「(今回の動きが)『ウィン(利益のある変化)』として形容するかどうかはわからない。大規模なセラーたちにとっては、セラーセントラルへと移動するインセンティブだ」と、Amazonに特化したエージェンシーであるヒンジ(Hinge)のCEOであるフレッド・キリングス氏は語る。これによってAmazonが、ベンダーセントラル内におけるセラー関係に注がれていたリソースを、別の場所で活用することができるようになるだろうとも付け加えた。「Amazonはテックプラットフォームだ。Amazonが何らかのサポートを提供するという期待のなかでは、ベンダーとの関係はそのプロセスにおいてより多くの人間を必要とする」。

と、同時に、ブランドにとってはアナリティクスの機能が追加されたことで、Amazonの広告プラットフォームに追加投資をする強い理由となる。

「ブランドアナリティクスにおいて、ここ数日でも新しいデモグラフィックが出てきたことで、Amazonにおける広告支出の増加をする説得力が増した」と、マスターズ氏は言う。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:塚本 紺)