16歳の農業アイドルを自殺に追い込んだえげつない暴言とLINEメッセージ
「亡くなる当日の朝、萌景は“社長に会うのが怖い”と言っていたんです」
【写真】パワハラ社長が萌香さんに送っていたLINEでのやり取りがリアルすぎる
愛媛県松山市を中心に活動するご当地アイドル『愛の葉Girls』のメンバーだった大本萌景さんが、自宅で自殺したのは'18年3月21日のこと。所属事務所による過重労働やパワハラが原因だとして、10月12日に母の幸栄さんは、娘の所属先だった『Hプロジェクト』などに9200万円の損害賠償を求める訴訟を松山地裁に起こした。
萌景さんがオーディションを受け、Hプロジェクト所属のアイドルになったのは中学2年生だった'15年7月のこと。その後、'16年7月にレギュラーメンバーに昇格すると、活動は多忙を極める。
「1日4、5時間のレッスンが週4回。終わるのが深夜12時近くになることもありました。そのほかにイベントなどがあるんです。'17年4月から通信制の高校に進学すると、平日のイベントにはほとんど出させられ、自宅からの往復時間を入れると11時間から13時間は拘束されていました」(以下、幸栄さん)
あまりの多忙さに、火曜と日曜の週2回の登校さえも支障をきたしていた。大学進学へ向けて勉強もしていた萌景さんは、アイドル活動は辞めることを決意する。
「'17年6月に佐々木貴浩社長へ、萌景は辞めると言いに行ったんです。ですが、帰ってきたらいきなり“来年から全日制高校に行く”と。しかも、社長から転学する資金の援助も約束してくれたので、親には迷惑はかけないと。“辞める話はどうなったの?”って聞いたら、彼女は“社長に丸めこまれた”って」
保護者に何の相談もなく、娘に転校をすすめる事務所に不信感は募ったという。
「彼女が“辞めたい”とか“休みたい”とか事務所に話すと、かなりキツい言葉がスタッフから投げつけられたんです。萌景の『LINE』に残っていたのですが、それを見たのは彼女が亡くなったあとです。あまりにひどい内容だったので、見つけたときは言葉が出ませんでした……」
遺された携帯には、'17年8月30日に脱退したい旨を社長に伝えたあと、スタッフから《次また寝ぼけた事言いだしたらマジでブン殴る》と。同年10月4日には学校へ行くため休日が欲しいと言うと、《お前の感想はいらん》 《学校の判断と親御さんの判断の結果をそれぞれ教えろ》という高圧的なLINEのやりとりがあった。
「昨年1月には萌景が佐々木社長と電話で話しているとき泣いている娘に対し“おまえ誰にものを言いよるんかわかっとるんか! おおおお!!”と大声で言われている声を聞いてしまったんです」
一見、華やかそうに見えるアイドル活動だが、ウラでは大人からのパワハラが日常的に行われていたのだろう。10月11日に行われた会見では、“奴隷契約”とも思える内容が一部明らかにされた。
情報漏洩は50~100万円の罰金
例えば罰金制度があり、遅刻・忘れ物は1回5000円。陰口は1回1万〜5万円。スキャンダルは50万円以上で、情報漏洩(口外禁止条項)には50万〜100万円と記載されている。活動の報酬が月平均3万5000円ほどの少女たちにとって、それがどれほど精神的プレッシャーになっていたか、容易に想像がつく。
「今年1月から萌景はスタッフからの推薦でリーダーになりました。グッズなどの売り上げがよかったのが娘だったのです。ですが2月ごろから“リーダーになるんじゃなかった”と頻繁に泣きながら話すようになりました。精神的に追い詰められ、不信感が募っていた萌景は“本気で辞める”と決意していたので、私は契約満了になる'19年8月31日をもって契約更新しない旨を3月17日に伝えたのです」
すると、事務所は萌景さんと結んでいたはずの約束を反故にする。
「2月に約束どおり全日制高校へ転学するための入学金3万円と制服・カバン代6万6000円は、事務所から借りることができました。
新入生招集日である3月21日までにあと12万円が必要なので、萌景と私で20日に事務所へ借りにいったのですが拒否されたのです。娘は“契約満了まで頑張ります。そのあとは働いてお金を返します”と話しましたが、無視されました。萌景はよほどショックだったのか、しばらく立ち上がることができませんでした」
祖父が運転する車で幸栄さんと帰宅した萌景さんは、終始無言だったという。その夜は友人宅に宿泊。そして、翌21日の午後1時40分ごろ、自宅で変わり果てた娘の姿を目撃することになる。
「まさかって……。見つけたときはびっくりしすぎて涙が出ないんです。夢か現実かもわからない。とにかく心臓マッサージに必死でした。“萌景が首つっとる!!”って叫んだのだけは覚えています」
亡くなる前日に宿泊した友人とその母親から、通夜の日に衝撃的な事実を知らされる。
「20日の晩、萌景は30分ほど佐々木社長と電話で話していたんです。21日の朝、車の中で友人に“私は何も悪いことをしていないのに謝らされた”“社長から1億円払えって言われた”と話していたことを教えてくれたのです。それを聞いて、亡くなった日に“社長に会うのが怖い”と言っていた意味がわかったのです」
だが、所属事務所社長の佐々木氏は、パワハラや“1億円払え”などの発言については否定している。
それでも、幸栄さんは16歳の娘を失ったことで、後悔の念に駆られている。
「昨年6月に通信制高校での単位が危なくなったので事務所に“辞める”って言いに行ったときに、ちゃんと辞めさせておけばと。自殺の兆候はまったくなかったんですよ。でも、亡くなる前日に事務所を出て数分後、私もいる車の中で“自殺”のことをスマホで検索していたことが後からわかったんです。そのときは涙が止まらなかった。何であのとき、私に話してくれなかったんだろうって……」
家族を失った悲しみは日常と隣り合わせでやってくる。
「夕食を考えるとき、今までは萌景を合わせて5人分用意するんですね。でも、亡くなってからは食事を作ろうって思うと“ひとり少ないんだ”っていつも気づかされて、涙がバーッってあふれてくるんです。佐々木社長にはとにかく真実を話してほしい。できることならば、今すぐにでも娘を返してほしいです……」
母の慟哭が彼の胸に届く日は来るのだろうか─。