スマホの4年契約は、何が問題なのか? その仕組みと本体代金は本当に半額になるのか

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最近、大手携帯電話会社の「4年契約」に注目が集まっています。
今まで実施されてきた2年契約についても
・契約時に、なかば強制的に2年契約に加入させられる
・2年毎の契約更新以外の契約解除料が高額
といった点について消費者からの相談は今もなくなっていません。

そんな中での2年契約よりも長い「4年契約」とは一体どのようなものなのでしょうか。

具体的に4年契約では
・何が問題なのか?
・どのようなメリットも存在しているのか?
これらについて、今回は解説していきます。


○本体代金の「半額が無料」になる4年契約
大手携帯電話会社に限らず、格安スマホでもスマートフォンの本体代金を「分割」で購入する方法は、購入時のかかる一時的費用を小さく抑える手法として定着し、ある意味、当たり前になっています。

分割回数は従来では、
・12回(1年間)
・24回(2年間)
各社とも2つの選択肢を用意しています。
契約者もこのどちらかで購入する事が多いでしょう。

例えば、一年毎に新型モデルが発売されるiPhoneの場合は、
・一年毎に新機種に買い替えるユーザーであれば12回払いを選択、
・一年毎に新機種に買い替えないユーザーであれば24回払いを選択
といった方法で購入するのが多いケースでしょう。


高騰する最新モデルも48回払いと半額免除で安く購入できると案内されている


ただ、スマートフォンの本体価格はご存知の通り、最新モデルで10万円以上する機種も珍しくないほどに高騰しています。

つまり、いくら月々の負担が少なくなる24回払いででも、10万円を超えるような機種を購入すれば、月5,000円近い支出が必要になるのです。

そこで大手携帯電話会社は
・支払いコースに48回を追加
・24回の支払いを終えると、残り24回の支払いが免除される
といった2つの仕組みを追加し、高額な最新モデルを購入した際の負担が少なくなるような対策をしました。

これだけ聞くとメリットだけしかないように感じます。
・毎月の負担は増えない
・48回払い(4年間)でも、2年毎に最新機種に買い替えができる

しかし、実際は、そうでないからこそ、今「4年契約」が問題視されているのです。


わかりやすい48回払い・半額免除の図とは別に条件がいくつも設定されている



48回払いで、半額に相当する「残り24回の支払い」が免除されるには、
・同じ携帯電話会社で次の機種を購入する
・今使っている機種を携帯電話会社に返却をする
といった条件に従わなければなりません。

たとえば、
・通信品質やサポートに不満がある
・新規に欲しい機種がない
などの理由で、別の会社に移ろうと思った場合は、
本体代の半額を免除してもらえないのです。

つまり、48回払いで2年後に半額を免除して新機種に変えるには、
「同じ携帯会社を使い続ける」という条件に縛られてしまうわけです。

さらに半額を免除してもらうためには、今使っている機種を返却する必要もあります。
今までのように
・故障時に備えて、現在の機種を予備に残しておく
・音楽プレイヤーやWi-Fi利用モデルとして使う
といった活用もできません。

本体代金の半額免除の仕組みは自動車の購入時にみられる「残価設定ローン」のようなものだと考えれば納得もできます。
しかし、半額の免除のために通信契約の継続が条件となることは、ユーザーが通信サービス選択を狭め、選択の自由を制限する可能性にもなります。

48回払いの契約そのものは、従来通り「2年毎の更新」となる2年契約です。
そして2年の更新を迎えるタイミングでは
・本体代金の半額が残っている状態
・免除には次の機種を購入し、契約を更新するしかない
となれば実質4年以上という「2年契約以上の縛り」になります。

極端な言い方をすれば、48回払いを開始すると、2年毎に
・半額の免除
・新機種の買い替え
が繰り返されるので、4年どころか、「永年契約・縛り」とも言えなくもありあせん。

48回払いの仕組みを利用する限り、同じ携帯電話会社を使い続けなくてはならなくなり、ほかの携帯会社に変えるハードルは高くなります。
当然、携帯会社の変更を躊躇するユーザーも多くなるでしょう。

これこそが48回払いは「健全な競争にならない」と問題視されている理由なのです。

さらに現在は、48回払いに限らず24回払いの分割払いでも、半額が免除される仕組みも用意されています。こちらも適用する条件は48回払いの半額が免除と同じ条件になっています。

今回注目を集める「4年契約」は、4年間という長期の契約期間に問題があるわけではありません。
48回払いのメリットとして謳っている「最新機種が半額になる」キャンペーンの実態が、ユーザーの通信会社を選択する自由度を制限する可能性が高い点にあるのです。


○仕組みを理解した上で48回払いを選ぶメリットもある
48回払いの仕組みには、選択肢の制限という問題点があるわけですが、
・48回払い
・半額免除
この仕組みを理解した上で、活用でするのであればメリットもあります。

現在のスマートフォンは、以前に比べ、性能や機能の進化は鈍化しています。
特にハイエンドモデルを購入した場合、2年以上の利用でも不満が無いというケースも多くなってきています。

実際、一般ユーザーの機種変更を検討するタイミングは、以前の2年でなく、3年前後になってきているとも言われています。

また、各携帯会社がSIMロック解除にも対応しているので、48回払い(4年間の支払い)中でも、SIMロックを解除すれば、ほかの携帯電話会社のSIMカードを利用することも可能です。

これは携帯電話会社との電話番号・回線の契約そのものは2年契約だからです。

たとえば、48回払いで2年を迎えた時点で解約・他社に乗りかえた場合、
本体代金は残っていますので、元の携帯電話会社に分割での支払いが続きます。
しかし48回払いなので月々の本体代金の支払い額が高額になるといったこともありません。

2年時点で携帯会社を変更した際に、新機種を購入するとなれば、当然、出費は高額になります。ですが、今使っている機種をSIMロック解除して使い続けるのであれば、新規購入の費用はかかりません。

新たに契約した携帯電話会社の月額と、残った分割の支払いを足しても、元の携帯電話会社に支払っていた額と変わらないか、安くなるケースもあるでしょう。

4年契約は
・事実上の永年契約に近いサービス
・同じ携帯電話会社を使い続ける人に向いている
ということを理解した上で、
「最新機種の本体代金が半額になる」
という甘い言葉だけに惑わされず、選択する必要があります。

こうした4年契約の仕組みをキチンと理解してから申込を行わないと、
・後々に契約の見直しも難しくなる
・ユーザーを同じ携帯会社に縛り付ける
というった負担にもなってしまいます。

どのような便利でオトクなサービスでも、デメリットは存在します。
ただ、仕組みさえ理解していれば、損をしないで活用する方法もないわけではありません。

今回の4年契約についても、
・消費者に、仕組みを、わかりやすい説明する
・消費者に、メリットだけでなく、デメリットも正しく伝える
といった対応と、
できれば、
・消費者を必要以上に縛り付けのない
そんな制度の見直しが実施されることを強く望みます。


迎 悟