auとソフトバンクの有料化により、注目を浴びているテザリング機能(筆者撮影)

今、スマートフォンのテザリングが注目を集めている。これはiPhoneでは「インターネット共有」と呼ばれる機能で、その名のとおり、スマホが自身の通信をほかの機器に分け与えることを指す。スマホと同じLTEの通信に対応するパソコンやタブレットも増えてはいるが、Wi-Fi接続だけで使っている人も多い。こうした機器を外出先などでネットに接続する際に、テザリングは欠かせない機能といえる。


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日本では、iPhone 5でiPhoneのインターネット共有が開放された。この機能がにわかに注目されているのは、auが、主力とする料金プランでテザリングを有料化したからだ。ドコモは現状のまま無料キャンペーンを無期限で続けていく方針だが、ソフトバンクも6月から大容量プランでテザリングを有料化する。いずれも料金は500円だ。古くからある機能だが、有料化をきっかけに話題が集まっているというわけだ。

ユーザーからの不満の声が上がっているが、残念ながら、auとソフトバンクのユーザーには、この課金を避ける方法がない。無料で使うには、大容量プランをあきらめてテザリング料金の設定がないプランに変更するか、解約して、ドコモやワイモバイルなど、テザリングが無料のキャリアに移るしか方法はない。逆に、どうせおカネを払うのであれば、もっと有効活用したいと考える向きもあるだろう。有料化を契機に、改めてテザリングの使い方を見直してみてもいい。今回は、iPhoneのインターネット共有にまつわる裏技を紹介していく。

1.BluetoothやUSB接続のテザリングも便利

iPhoneのインターネット共有は、接続がなくディスプレーが消えている状態だと、約90秒でSSID(Wi-FiのID)を自動的に非公開にしてしまう。バッテリーを節約するための仕様だと思われるが、地味に不便なことが多い。たとえば、PCを接続して作業をしている合間の休憩時間にPCをスリープすると、接続が切れてしまい、90秒以上経つと、作業再開時に改めてiPhone側でインターネット共有をオンにしなければならない。

インターネット共有を再開したいときは、ロックを解除して設定を開いたあと、一度インターネット共有をオフにして、再度オンにする必要があるため、意外と手間もかかる。もちろん、毎回、これをやってもいいが、インターネット共有が自動終了するのを防ぐ方法もある。

1つ目が、Bluetoothテザリングを使うという方法だ。テザリングというと、Wi-Fiでほかの機器をネットに接続する機能だと思われがちだが、実はWi-Fi以外にも接続方法がある。BluetoothやUSB接続が、それだ。iPhoneのインターネット共有も、このBluetoothテザリングやUSBテザリングに対応している。Bluetoothテザリングの場合、省電力のため、Wi-Fiテザリングとは違い、90秒で自動的にオフにはならないのだ。


Bluetoothテザリングは省電力なため、Wi-Fiと違って自動でオフにならない(筆者撮影)

そのため、使おうと思ったときだけ、iPhone側に接続するといった使い方もできる。PCやタブレットなど、使いたい機器をiPhoneとペアリングしておき、設定からインターネット共有をオンにすればいい。ただし、デメリットもある。BluetoothはWi-Fiと比べると通信速度が遅いのだ。いくらiPhone側の通信速度が速くても、Bluetoothがボトルネックになってしまうため、速度は1Mbps強程度に落ちてしまう。ウェブサイトを見るには十分だが、大きなファイルをダウンロードするには向かない方法といえるだろう。

iPhoneをUSBで接続するUSBテザリングなら、この速度の問題は解決できる。ただし、USBテザリングは接続できる機器がPCなどに限られてしまうのがネック。iPadのようなタブレットでは利用できないため、限定的な手段だ。Lightningケーブルを常時持ち歩かなければいけないのも、手間になる。

逆にバッテリーを消耗してしまうことになるが、もう1つの方法として、ディスプレーを消灯させないという手もある。この場合、iPhoneはインターネット共有の画面を表示しっぱなしにしておく必要がある。ホーム画面に戻ったりすると、画面消灯時と同様、90秒程度でSSIDが非公開になり、Wi-Fiテザリングで接続できなくなる。

ディスプレーを点灯したままにするには、「設定」の「画面表示と明るさ」で、「自動ロック」の時間を変更すればいい。ここで「なし」を選ぶと、画面が自動で消えなくなり、いつの間にかテザリングが切れているということがなくなる。iPhoneを常時充電できるようなときは、こちらの方法を選んでもいいだろう。

2.「iPhoneの名前」で自分が特定されないよう注意

iPhoneのインターネット共有は、パスワード(暗号化キー)を設定できるだけで、SSIDの名称を変更する項目が存在しない。とはいえ、SSIDがなければ、Wi-Fiに接続することができない。どういう仕組みかというと、iPhoneにつけた名前がそのままSSIDになっているのだ。

名前なんてつけた覚えがないという人もいるかもしれないが、標準だとApple IDにつけた名前が、そのままiPhoneの名前になっている。筆者の場合だと「純也のiPhone」になるというわけだ。ただし、この状態だと、インターネット共有を利用するたびに、名前が丸見えになってしまう。この名前は、インターネット共有以外では、アップル製品同士でファイルを送受信する「AirDrop」にも利用される。

数人しかいないところで使うと、簡単に自分の名前が特定されてしまうため、たとえ実害はなくても、知らない人が自分の名前を知ってるという気持ち悪さは残る。インターネット共有を使うときは、名前を変更しておいたほうがいいだろう。ただ、単純な名前だとほかの人とかぶってしまい、いざ接続しようとした際に、どれが自分のiPhoneかわからなくなる。


テザリング利用時に名前を知られたくない場合は、iPhoneの名前を変更しておこう。絵文字も使える(筆者撮影)

たとえば人に知られてもいいペットの名前を入れたり、辞書を適当に開いて見つけた適当な文字列にしたりすれば、ほかの人とかぶることは避けられる。意外なところだと、この名前には、漢字や絵文字も設定することが可能だ。好きな顔文字や、アップルにちなんでリンゴの絵文字を入れておくといったこともできる。絵文字まで使う人は少ないので、「iPhone」に何らかの絵文字を組み合わせるだけで、SSIDのかぶりを避けられるだろう。

iPhoneの名前変更は、「設定」の「一般」にある「情報」で、最上段にある「名前」をタップすると書き換えることができる。

3.パソコンの設定を変更して「高額請求」を避ける

パソコンをネットに接続する際に便利なテザリングだが、容量が無制限の固定回線に接続することを前提に設計されたパソコンは、スマホ以上にバックグラウンドの通信量が多い端末だ。特に、OSのアップデートがあったりすると、知らないうちに、何GBものデータ容量を消費してしまう。

iPhone側で契約しているデータプランが20GB、30GBの大容量プランであれば大きな問題はないかもしれないが、小容量、中容量のデータプランで使っていると、気づかないうちにデータ容量を使いつくしてしまうおそれがある。データ容量がなくなり、通信速度に制限がかかるだけならいいが、容量が足りなくなったとき、自動で1GBを追加購入するような設定にしていると、思わぬ高額請求につながることもある。

このようなトラブルを避けるため、パソコンをテザリングでネットに接続する際には、バックグラウンドのデータ通信にある程度、制限をかけておくようにしたい。Windows 10やWindows 8.1には、接続するアクセスポイントごとに、データ通信を抑制する設定が用意されている。


予期せぬ大容量通信を避けるため、パソコン側の設定も変更しておきたい(筆者撮影)

iPhoneでインターネット共有をオンにして、パソコンを接続させたら、Windows側で設定を開き、「ネットワークとインターネット」をクリック。Wi-Fiの項目を開き、接続中のSSIDを選択すると、画面中央に「従量制課金接続として設定する」というボタンが表示されるため、これをオンにする。これで、一部のアプリの動作が変わってデータ通信量を抑制するほか、Windows Updateのダウンロードが行われなくなるので、安心してテザリングを利用できる。

Macには同様の設定項目はないが、「TripMode」(7.99ドル)と呼ばれるアプリをインストールすると、テザリング時に通信するアプリを個別に選択することができる。TripModeにはWindows版もあるため、より細かく制限するアプリを決めたいときは、導入しておくといいだろう。