美容家電大手、ヤーマンの業績が急激に拡大している(撮影:今井康一)

ある平日の昼間、ビックカメラ有楽町店の美容家電コーナーを訪れると、中国人観光客であふれていた。中国語を話せる店員は息つく間もなく、客の対応に追われていた。

その美容家電で訪日観光客に圧倒的に人気のあるのが美顔器だ。ビックカメラ有楽町店ビューティーコーナー担当の本間奈々氏は、「ヤーマンの美顔器は本当によく売れる」という。機種によって異なるが、売れ筋は1つ4万円前後もする高額な製品だ。この美顔器が飛ぶように売れている。

また、「指名買いの9割がヤーマンという印象」(本間氏)といい、品番が書かれたメモや商品の写真を店員に見せて、「これをください」と実際の商品を手に取らずに”即買い”していく人が多いという。有楽町店では、高額製品が売れることもあり、美顔器の売上高に占める割合は免税のほうが多いと言う。

営業利益は前期比で急増

ヤーマンと聞いて、なじみのない人も多いかもしれない。同社は1978年に創業、2009年に上場した。美顔器、痩身機、脱毛器など、手で持って使えるコンパクトな家庭用の美容・健康機器を柱の商品としている。

美顔器は機械を顔に当て、温めながら毛穴のケアや保湿などを行うもの。主な販路はテレビ通販や家電量販店、バラエティショップなど。

2014年ごろに始まった中国人観光客によるいわゆる「爆買い」は、炊飯器や数十万円もする高級時計などがメインだった。

2016年ごろに爆買いが落ち着いてから、家電量販店など小売店の免税売り上げを支えるのは、美容家電やマグボトル、化粧品などの小物類だ。特に理美容家電は、「自分のためになにか良いモノを買って帰りたい」という中国人観光客のニーズにも合い人気商品となっている。

3月14日に発表された2017年5月〜2018年1月期(第3四半期)決算は、売上高は175億円(前年同期比18.4%増)、営業利益は45億円(同59.6%増)と急増している。この好業績を支えているのが冒頭のような中国人向けの理美容家電の販売だ。


独身の日に売れた美顔器「フォトPLUSハイパー」(写真:ヤーマン)

中国での販売も拡大している。インターネット通販で大規模なセールが行われる11月11日の「独身の日」には、大手アリババが運営するTmall(天猫)で、2017年にコスメ部門の電子美容機器で販売実績1位を獲得。

代理店に卸売りをしているので、独自に販売網を拡充するよりも在庫リスクや撤退時の雇用問題などに悩まされないのも利点だ。

中国の美容関連市場は拡大中だ。英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると、ヘアケア家電や電気シェーバー、脱毛機器などを含むパーソナルケア家電の市場規模は、2012年の18億米ドルが2017年には34億米ドルまで拡大したという。

その一方、国内向けは好調とはいえない。日本人向けのテレビやカタログなどの通販部門は通販業界自体が厳しいことなどから低迷。店舗での販売も免税向けが多く、中国人ほどの熱烈な支持を得られていないのが課題だ。

国内立て直し、海外販路拡大が課題に

そこで、2017年5月に企業ブランドや商品カテゴリーごとのブランディングをする「ブランド戦略本部」を新設。今年3月には会社ロゴも刷新した。国内では、継続的な購入が見込める化粧品を強化していく方針だ。

ほかにも脱毛器などは春先から夏にかけてハイシーズンで、この時の気温が高いと販売が好調になるなど季節に影響されやすい。季節や気温をあまり気にせずに通年販売できる「健康」をテーマにした商品も展開をしていく。

だが、爆買いが嵐のように過ぎ去っていったことを考えると、生活必需品でない理美容家電の需要がいつ落ちるかはわからない。ヤーマンとしても中国だけに依存するのではなく、需要が見込まれる中東や東南アジアなど販路拡大が、今後の成長のカギを握りそうだ。