Jリーグが開幕して2週が経過した。こちらがあるメディアで降格候補と予想したサンフレッチェ広島が2連勝。かと思えば、昨季13位から6位にジャンプアップしたその反動はないだろうと予想したジュビロ磐田が2連敗したり、予想屋(?)泣かせの事象も起きている。

 しかしこれはトーナメント戦ではない。長丁場のリーグ戦。探るべきは、いまから32試合後に笑うチームだ。

 ひとつの物差しとなるのは、試合後半の戦い方だ。サッカーは時間の経過とともにオープンな展開になる。中盤が間延びし、撃ち合いになる。レベルの低い試合ほど、早い時間からそうなる。
 
 その原因を作ったチームが勝利を収めれば、それは偶然の産物だ。次戦以降はあまり期待が持てないという話になる。

 Jリーグで最後まで崩れにくいチーム、中盤が間延びしにくいチームはどこか。昨年同様、鹿島は、開幕第2週対ガンバ大阪戦でも、終盤に行けば行くほど締まった戦いをした。決勝ゴールが生まれたのは後半33分。野球で言えば、8回の裏に1点取って逃げ切るパターンだが、これこそが鹿島が得意とする勝ち方だ。終盤まで0-0で推移すれば、試合は鹿島のもの。そうしたムードが出来上がっている。

 サッカーそのものの質に加えて特筆すべきは、交代選手のレベルが高いことだ。交代選手が試合を締める。レベルの維持に貢献している印象だ。理由は分かりやすい。選手の層が厚いからだ。ベンチに座るメンバーを、すべてピッチに送り出してもプレーのレベルは低下しそうにない。総合力が高いのだ。

 その点で鹿島は川崎Fを上回る。そのうえ今季のJリーグは、6月から7月にかけておよそ1ヶ月半中断される。ロシアW杯のために。よって日程はとてもタイトだ。週に2試合こなすこともザラだ。それにアジアチャンピオンズリーグ(ACL)や、国内のカップ戦が加われば、モノを言うのは選手層になる。シーズン前に鹿島を優勝候補に推したそれこそが一番の理由である。

 今季、鹿島に加入した一番の大物は、他ならぬ内田篤人だ。開幕第1戦の清水戦(アウェー)では、さっそく先発を飾り、鹿島ファンのみならず出身高校(清水東)がある清水のファンも喜ばせた。

 しかし、内田はフルタイム出場しなかった。後半39分、ペドロ・ジュニオールと交代でベンチに下がった。その時スコアは0−0。格上の鹿島としては、アウェーとはいえ、是が非でも1点が欲しい状況だった。

 サイドバックを下げフォワードを投入する、試合終盤におけるこの交代。一般的には納得できる順当な交代だが、内田に対して少なからず懐疑的な目を向けたくなるこちらには、少々気になる交代でもあった。

 翌、第2週、ホームでガンバ大阪と対戦した鹿島のスタメンに、内田の名前はなかった。筋肉に張りが出たために、前日練習から別メニューだったとか。

 内田の代役候補が複数いる鹿島にとって、これは痛くも痒くもない問題だ。4日後にはACLのアウェー戦対シドニーFC戦も控えている。層の厚い鹿島が、開幕週に84分プレーし、筋肉に張りが出た選手を休ませたことに特別、違和感は抱かない。

 しかし、手術した右膝の具合はどうなのかという疑念は湧く。もし回復しているなら、日本代表に復帰して欲しいとの願いもある。彼に対してどこまで期待を抱いていいのか。整理したい思いもある。

 鹿島は内田がいなくても優勝争いには十分絡む。必要なのは日本代表の方だ。内田がフィットした状態にあるなら即戦力。僕がハリルホジッチなら、右サイドバック(SB)は迷うことなく内田で行くだろう。

 日本代表に欠けている要素が内田にはある。落ち着きだ。SBというより、チームのヘソである守備的MFで活かしたいほどだ。国際舞台で気負うことなく平常心でひょうひょうとプレーできる日本人選手は、彼をおいて他にはいない。

 この日のG大阪戦は、ハリルホジッチが視察する中で行われた試合だった。しかし、鹿島は内田を登場させなかった。

 鹿島の大岩剛監督は試合後、出場を回避した理由について「コンディション面を注意深く見守っていかなければならない状態だ」と述べたが、鹿島側からすれば、彼を積極的に代表へ送り出そうとする気持ちは少ないはずだ。そこで再び、怪我でもされたらたまったものではない。敢えて慎重に使っているという見方もできる。

 内田がいいチームに戻ったことは確かだ。Jリーグで最もメンバー的に余裕がある鹿島なら、活躍しなくてはならないという変な重圧を抱かなくて済む。無理なオーバーワークを回避できる。だが、そうした慎重な使われ方をすればするほど、その膝はいまどのような状態にあるのかという謎は深まる。

 内田の出場時間にはとくと目を凝らしたい。期待値は本田、香川より高い。少しずつ増えていくことを願うばかりである。