ローソンが期間限定で出店した実験店舗では、「ロカボで健康、始めませんか」というキャッチコピーが店内の至る所で強調されていた(記者撮影)

ローソンは1月16日から40日間、期間限定で健康関連商品に特化した実験店舗「ローソンMC FOREST(エムシーフォレスト)店」を三菱商事ビル(東京都千代田区)の1階で展開する。

店内には健康関連の食品約250点が並び、行動シーンに合わせてセットメニューを提案する。たとえば、「午後に重要な会議を控えていている」というシーンに合わせて提案するのは、昼食に蒸し鶏のサラダ、ブランのバタースティック、カフェラテのセット。糖質を低く抑えているため、眠くなりにくいという。

ロカボ認証の商品を拡充


店内には、糖質からできる老化物質を指先で測定できる「AGEs(エージーイー)」が設置されている(記者撮影)

同店には管理栄養士の資格を持つ店長がおり、商品選びや食生活の相談に乗ってもらえるほか、糖質からできる老化物質を指先で測定できる機器「AGEs(エージーイー)」も設置されている。

今回の期間限定店舗において、客の意見や購買データを吸い上げ、今後の店作りに生かす考えだ。竹増貞信社長は「健康関連商品はニーズがあるし、健康が嫌いという人はいない。反応が良かったものは全国展開したい」と述べた。

ローソン全体では、緩やかな糖質制限を表す「ロカボ」の認証を受けた商品を今年1月末時点の36品目から5月末には約70品目にまで拡充する。

ロカボを提唱・認証する「食・楽・健康協会」によれば、ロカボとは「糖質量を1日70〜130グラム(1食20〜40グラム、間食10グラム)をメドに摂取する穏やかな糖質コントロールをする食生活のこと」を指す。食後血糖値が上がらないようにすることで、生活習慣病の予防にもなる。

ロカボ商品などの販促を強化することで、健康関連商品の売上高を2017年度の3000億円(見込み)から2019年度に3800億円まで増やす構えだ。

ローソンはこれまでも健康をテーマにした取り組みを行ってきた。2001年に「美と健康」をテーマに据えた「ナチュラルローソン」業態を立ち上げたほか、2013年にはコーポレートスローガンを「マチの健康ステーション」に変更し、会社全体で健康を訴求していく姿勢を明確にした。


実験店の外ではローソンの看板商品である「からあげクン」がロカボ商品であることがアピールされていた(記者撮影)

ナチュラルローソン業態で開発した商品の中にはヒット商品も生まれた。代表的なのは2012年に誕生したブランパンだ。通常のパンに不可欠な小麦粉や砂糖は糖質が高い。小麦粉の代わりに穀物の外皮、大豆の粉などを使用、砂糖の代わりに牛乳やバターの風味を強調することで低糖質のパンを作り上げた。

販売1年目は売り上げが伸び悩んだものの、2年目から低糖質であることをパッケージで訴求し、ヒットした。売上高は毎年2ケタペースで伸び、2017年度のブランパンシリーズの販売高は65億円、販売数は4800万個を見込む。リピート購入率も通常のパンが20〜25%なのに対し、ブランパンは46%と高い。

そのほか、2015年に発売したチルド飲料「グリーンスムージー」も1秒に1本売れるヒット商品に成長した。東京都内でローソン店舗を運営する加盟店オーナーは「健康関連商品は買い上げ点数が多く、リピート率も高い」と語る。

首位セブンとの差は小さくない


竹増貞信社長(写真中央)は「(今回の実証実験の取り組みが)買い上げ点数の向上につながるという点は特に考えていなかった」と述べた(記者撮影)

こうした健康関連のヒット商品を生み出している一方で、店舗売り上げの動向は芳しくない。ローソンの全店日販(1日当たり1店売上高)は54.4万円(2017年3〜11月累計)と、約5年間は横ばいで推移しており、目標に掲げる60万円や首位セブン-イレブンの65.9万円(同)にはほど遠い。

前出の加盟店オーナーは「商品の知識を身に付けたり、売り場作りを担う人手が足りていない。勤務シフトを回すことに精いっぱいで、現場レベルで商品の訴求にまで手が回っていないオーナーが多い印象だ」と話す。

今回の丸の内での実証実験は、老化物質の測定機器や管理栄養士が駐在という差別化ポイントはあるものの、全国のローソン店舗にこうした取り組みを広めていくのは簡単ではないという。

昨夏に行った東洋経済のインタビューで竹増社長は伸び悩む日販について、「過去にもヒット商品はあったが、あくまで単品として消費者を引き付けるマグネットにしかなっていなかった。人気商品だけではなく、売り場をしっかりと作り上げているという部分で、チャレンジできていないところがあった」と語っていた。

健康関連商品を投入するだけではなく、本部と加盟店が一体となった売り場作りが実践できなければ、セブンとの差は縮まらないだろう。