アンリツはスマートフォンや基地局向けの計測機器に強みを持つ(写真:アンリツ)

スマートフォンや携帯電話の基地局などに使われる通信用計測機器の大手、アンリツの株価が急騰している。

2017年1月4日につけた638円をボトムに、直近では1200円台と年初来高値圏を維持。理由は、現行の100倍の通信速度を持つ「5G」(第5世代移動通信システム)需要増による、来期以降の業績回復への期待感から上がり始めたようだ。

5Gの「G」はGeneration(世代)の略。モバイルネットワークはニーズに合わせて進化しており、出先で移動中に電話ができる「1G」から、インターネットからメールもできる「3G」などといったように、節目節目に通信システムと携帯端末の両方を刷新し大幅な通信速度向上を図ってきた。

3Gから4Gへと引き継ぐための中間技術である「LTE(Long Term Evolution)」を経て、日本で主流なのが第4世代の「4G」である。

アンリツの2016年度売り上げの45%はモバイル市場向け。地域別に見ると、2割が国内で、残り8割がアジア、欧米など海外が占める。新たな技術が導入されると、計測器による新たな試験ニーズも生じる。

モバイル市場では、1990年代の2G、2000年代の3G、2010年代の4Gと約10年ごとに変革が起き、アンリツの業績を後押ししてきた。

現在の業績は2013年3月期の売上高946億円、営業利益158億円を直近のピークに、4期連続の減益だ。当時は、LTE方式の開発と普及の進展で関連企業の投資が活発化しスマートフォン開発、生産向け計測機器の販売が好調だった。

ここ数年はLTEから5Gへの端境期で投資抑制が続いている。2017年4〜9月期の決算は、売上高が前期比1.2%減の406億円、営業利益が同34.1%減の5.7億円だった。


苦戦が続く業績にもようやく薄日が差しそうだ。韓国は2018年2月の平昌オリピックで試験的に導入し、2019年から本格導入を目指している。

米国や欧州、中国、日本でも2019〜2020年にかけて本格的な展開が始まる見通しだ。その前段階として、2018年は5G商用化に向けた開発が本格化するというのがアナリストなど市場関係者の見方だ。

2018年から需要が本格化も

アンリツでは、「ミリ波測定技術」など、5Gの計測でも必要とされる既存技術を武器に、新商品の開発にも着手している。2018年からは、5G関連の開発が進む米クアルコムなど主要チップセットメーカーや端末メーカーへの、計測機器の販売が進むだろう。

ただ、アンリツが目標とする2020年度の大幅増収、増益(計測分野の売上成長率7%以上、営業利益率20%以上)は、これまでのようにスマートフォン頼みでは達成は難しい。

IoTデバイスや自動車の自動運転のために使われる通信方式に対応した新商品で、新規市場の需要獲得にも邁進する計画だ。

はたして計画通りに進むのか。