出場枠6のうち、ロシア人選手が5名出場して注目されたジュニアグランプリ(GP)ファイナル女子の戦い。優勝したアレクサンドラ・トゥルソワは歴代2位の205.61点、2位のアリョーナ・コストルナヤは歴代4位の204.58点、3位のアナスタシア・タラカノワは歴代5位の199.64点と、ロシアのエテリ・トゥトベリーゼコーチの門下生たちが強さを発揮した。

 トゥルソワの合計得点は昨季の世界ジュニアでアリーナ・ザギトワ(ロシア)が出していたジュニア女子最高の208.60点には届かなかったが、彼女たちの戦いは大会初日の12月7日のSPからレベルの高いものだった。


ジュニアGPファイナルで初優勝したロシアのトゥルソワ

 SP1位と2位になったトゥルソワとコストルナヤはともに得点が高くなる後半にジャンプを入れた構成で、ザギトワが昨年のジュニアGPファイナルで記録した70.92点のジュニア世界最高得点を上回る73.25点と71.65点を獲得した。

「高得点が出てビックリした」と記者に囲まれて少しはにかみながら話すトゥルソワは、「スピンをもっと頑張ればよかった。反省はいつも残るものだから、これからも頑張っていきたい」と、フライングシットスピンの加点が0.79にとどまったことを悔しがった。

 一方、ジュニアGPファイナルで唯一の日本選手である紀平梨花も見せ場をつくった。ハイレベルな戦いの中で「初出場だった去年より緊張しなかったので、やれるかなと思った」と、ほぼノーミスの演技。自己最高を0.04更新する66.82点でSP4位発進とした。

 さらに、紀平は9日のフリーでもロシア勢に一矢を報いる演技を披露し、国際大会では初の成功となるトリプルアクセル+3回転トーループの連続ジャンプを1.86の加点をもらう出来で決めた。しかし、2本目に予定していた単発のトリプルアクセルはパンクをして1回転半になってしまうミス。「最初のジャンプを決めたあと、心の中で『これも跳ばなきゃダメだ』とつぶやくような気持ちになっていた。やっぱり頭の中が真っ白になっているような状態で跳ばなければダメだと思いました」と本人が言うように、少し力が入ったジャンプになってしまった。


トリプルアクセル+3回転トーループを成功させた紀平

 紀平は、続く3回転フリップも回転不足で減点されたが、それ以降はスピンとステップでレベル4を獲得し、4本のジャンプもノーミスで成功させて、シーズンベストの125.63点を記録。今季は、SPがよければフリーで失敗、フリーがよかったときはSPで失敗と、ふたつ揃わない状態が続いていたが、GPファイナルの大舞台でようやくSPもフリーも満足できる演技で揃え、合計を自己最高に1.79点まで迫る192.45点とした。

 だが、ロシア勢のフリーはその紀平の得点を大きく上回る強さを見せつけた。最初に滑ったSP3位のタラカノワは、乱れのないノーミスの演技をして131.74点。SP2位のコストルナヤは後半に入れたジャンプをすべて決めたうえで、つなぎにも気を配った技術の高いスケーティングで滑りきり、132.93点まで得点を伸ばした。

 そして、最終滑走のトゥルソワは、冒頭の4回転サルコウこそ転倒したものの、ほかは後半の3回転フリップ+3回転ループが0.40減点されるだけのミスにとどめ、フリー2位の132.36点。SPの貯金を生かし、コストルナヤを1.03点抑えて初タイトルを獲得した。

 チームメイト同士の優勝争いとなったことについて、上位の3人は「仲間がたくさんいるので、大会というより練習のような感じだった」という。彼女たちがエテリコーチの門下に入ったのは昨シーズンの始め。トゥルソワは「(世界女王のエフゲニア・)メドベデワと一緒に練習したかったから」、コストルナヤとタラカノワは「自分も進歩しなければいけないと思ったので移籍した」と言う。

 そんな3人は、全員が今回自己ベストを更新する滑りを見せたが、この先まだまだ得点が伸びる可能性は大きい。

 優勝したトゥルソワは、4回転サルコウと3回転ルッツ+3回転ループの失敗で減点された合計が5.40点。これを成功させてGOE加点をもらえれば、少なくともあと6、7点は上積みできることになり、合計210点を超えてくる。しかも、トゥルソワは「難度の高いジャンプを覚えたい」と、4回転トーループの修得にも意欲を見せている。

 コストルナヤは「4回転も大事だと思うけれど、コストナー選手のような滑り方をしなければいけないと思う」と言い、タラカノワも「難易度が高いエレメンツを覚えないといけないが、スケーティングとプログラム構成をさらにレベルアップさせて、観客を喜ばせるような演技をしたい」と表現への意識を口にする。

 今回表彰台にのぼったロシアの3人は、来シーズンもジュニアで戦うことになる。したがって彼女たちが、今回シニアのGPファイナル初出場でいきなり優勝したザギトワのジュニア時代の記録更新を果たす可能性はきわめて高い。ロシア女子旋風はまだまだ続きそうだ。

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