楽天モバイルの事業概況説明会を紹介!

楽天は1日、同社が仮想移動体通信事業者(MVNO)として運営する携帯電話サービス「楽天モバイル」( http://mobile.rakuten.co.jp )の事業概況説明会を開催しました。

説明会では2017年のビジネス概況やマーケティングおよびカスタマーサービス(CS)などの施策、そしてMVNO業界に震撼をもたらした、プラスワン・マーケティング(以下、POM)が運営していたMVNOサービス「FREETEL」の買収に関連した事業継続説明など、多岐にわたる発表が行われました。

楽天モバイルの2017年はどのような年だったのでしょうか。そして2018年からの楽天モバイルはどのような戦略とビジョンを打ち出していくのでしょうか。説明会の模様を写真とともに紹介・解説します。


タレントのローラさんを起用したCMが印象的だった2017年


■単月黒字化も達成しつつある収益概況
「常日頃からお客様の声を大事にしていきたいと考えている」。プレゼン冒頭でそう切り出したのは楽天執行役員 楽天モバイル事業の大尾嘉宏人氏。NTTドコモやauといった大手移動体通信事業者(MNO)に対抗意識を見せつつも、敵わない部分を認めながら「これからもお客様の声に真摯に応えていきたい」と語気を強めていました。


楽天執行役員 楽天モバイル事業 大尾嘉宏人氏



MNOに見劣りしない豊富な端末ラインナップや充実した料金プラン、そして楽天グループとのシナジーが楽天モバイルの大きな強みとなっている


はじめに解説された「ビジネス概況」では契約回線数が楽天モバイルとFREETEL事業を合わせて140万回線を突破したことが報告され、個人向け回線では楽天モバイルのみで102.2万回線となるなど非常に好調である点を強調しました。


法人向け事業も含めた回線数は140万契約を突破した



楽天モバイル単体での契約数でもIIJのMVNOサービス「IIJ mio」の契約件数を上回っているが、FREETEL事業の買収によってさらにシェアで大きな差をつけた


また事業の安定継続の点で最も重視されるARPU(1契約あたりの月間平均収入)の改善についても触れ、2015年10月比で約1.4倍、特に通話料金の占める割合が伸びている点に注目し「電話をよく利用してもらっている」と語り、ユーザー層が格安のデータ通信専用端末としてではなく通話も頻繁に行うメイン端末として利用している実状を示しました。

売上の大幅の成長率と赤字については「赤字幅は大幅に縮小しており、月間では何度か黒字にも」と大きな改善を述べ、事業全体の健全化が順調である点を強調。さらに「新規契約者(割合)も今年が上回っている。それも一桁(パーセント)ではない」と、数字こそ挙げなかったものの加速度的にユーザーを獲得している点に言及しました。


通話利用者の増加は一般層にMVNOが浸透してきたことを示唆する



売上全体の成長率も非常に大きい


■宣伝費を抑えつつ効果的に契約獲得につなげる楽天ならではの施策の数々
マーケティングやCSといった各分野の施策では効率的な宣伝効果について語り、「少ないCM投下量でも十分に効果が得られている」と、TVCM単体の効果に加えて楽天グループ全体のシナジーを活かしたキャンペーン施策が大きな効果を挙げている点を強調しました。


「CM投下量はYやUといった(大手キャリアの)サブブランドの14分の1だが認知率はそれほど変わらない」と、ほぼ名指しで他社比較を行うのも楽天モバイルらしいプレゼンだ



楽天スーパーポイントを絡めた施策が大きな効果を上げている



認知度が十分に上がった今だからこそ、Web広告やTVCMに掛ける費用を端末値引きに置き換えることで投資額を抑えつつ契約数の増加を達成できたと言える


店舗展開では契約情報のビッグデータを活用し、オンラインでの申し込みが多く店舗展開されていない地域を重点的に出店することで効率的な集客と契約獲得につなげていると説明。また「ウェブと店舗では顧客獲得コストはあまり変わらない」とも語り、店舗展開が事業の大きなコスト増とはなっていない点や、むしろ店舗数の増加が「看板」としての役割を持ちつつある点も示唆しました。


店舗数の増加に合わせ店舗での申込比率も順調に伸びている



IT企業らしい効率的なビッグデータ活用だ



縦軸の数字がないのが若干あやしいが、顧客獲得コストはウェブと店舗の差を上手く抑えているようだ


CSではコールセンターでの受電数の減少について大きく取り上げ、問い合わせの多い内容に対する改善を素早く行うことを第一としている点や、FAQの充実やチャットボットの導入など、そもそもユーザーが電話による問い合わせをしなくても良い環境を整えている点などを説明しました。


オンライン上でできる手続きを増やしユーザビリティを向上



FAQの充実は地味ながらもCSへの効果が大きい



FAQを対話式で行うチャットボットもオペレーターの負担軽減やユーザーの待ち時間を減らす良い施策だ


そして今年9月より開始された「スーパーホーダイ」の契約が好調である点についても言及しました。スーパーホーダイは通信容量を使い切っても最大1Mbpsでの通信が無制限に利用でき、国内通話も5分間かけ放題となるプランで、ユーザーの声に応え2018年1月25日より既存の通話SIM契約者もスーパーホーダイへのプラン変更を受け付けると発表しました。


実利用において通信容量制限なしとも取れる1Mbps使い放題は他社にはない大きな魅力だ



既存ユーザーのプラン変更についてはキャンペーンも投入する


■FREETEL事業は収束へ。ユーザーの流出を食い止めるためのキャンペーン施策も
FREETEL事業の買収については質疑応答や囲み取材の場でも数多くの質問が飛び、注目度の高さを伺わせました。

とくにFREETELが展開していた端末代金の残債込みで新端末へ機種変更できる「スマートコミコミプラン」の扱いについての質問が多く、大尾嘉氏は「既に契約されているお客様については今後も継続してサポートしていくが新規契約を継続するかどうかは検討中。」、「機種変更可能な端末については飽くまでもFREETEL側でのプランなのでFREETELブランドとして準備している端末(≒POM側が用意した端末)からのみの選択となる」と回答しており、FREETELと楽天モバイルの端末事業についてはしばらくの間平行して展開していくとしています。


2018年1月15日からは通信事業を楽天モバイルに合併し端末事業のみをFREETELブランドで継続する



事業統合に合わせ一部のプラン名を変更



FREETEL SIMユーザーから不満の声が多かった回線速度については今後楽天モバイルの回線へ切り替えることで解決させていく予定


その一方でFREETEL事業の収拾についても言及しており、2018年春よりFREETEL SIMのユーザーを対象としたスーパーホーダイへの乗り換えキャンペーンを実施するとしています。


各種無料キャンペーンや大幅な値引きによってFREETEL SIMユーザーの他社への流出を食い止めるのが目的だ


■大胆且つ繊細に。隙のない事業戦略を着実に展開する楽天モバイル
スーパーホーダイプランの投入やFREETEL事業の買収など、2017年も話題性に溢れていた楽天モバイルですが、広告費の圧縮や費用対効果の良い配分など、その事業戦略は派手な表向きとは裏腹に非常に堅実で緻密な印象を受けました。

とくに楽天グループの知名度やブランド力を最大限に活かす事業戦略は一貫しており、大尾嘉氏が質疑応答で「経営合理性で判断していきたい」と答えたように、全ての施策が短期的な収益性よりも長期でのシェア確保や収益力の安定度を向上させるために使われている点は特筆に値します。

一方で、MVNO業界全体としての「壁」を感じるプレゼン内容も少なからず見受けられました。大尾嘉氏が「スマホ利用者全体に占めるMVNO利用者数は8人に1人」と語ったように、既にスマホ利用者の1割以上がMVNOを契約している状態となっており、スマホや通信回線の仕組みなどにあまり詳しくない一般層の取り込みが今後の主力となっていく点を踏まえると、急速に増加する利用者に対応できるサポート体制の充実や効率化がMVNO業界全体での大きな課題であることは、楽天モバイルがCSへの取り組みとして発表した内容を見ても明らかでしょう。


収益性を改善する上でも、急増する契約件数に対しどのようにサポート費用を抑えていくのかが各社の腕の見せ所になる


2015年にサービスを開始し、2016年を「仕込みの期間」として赤字覚悟でシェアを広げ、2017年にようやくその芽が出始めた楽天モバイル。FREETEL事業の買収や楽天グループとのシナジーという他社にない大きな武器を手に、2018年は一気に黒字化を目指すのか、それともまだまだ堅実なブランド醸成とシェア拡大に努めるのか。「いつ黒字になるのかはお答えできない。マーケティングへの投資を止めればすぐにでも黒字になるが、それでは成長できない」。大尾嘉氏の言葉に独特の凄みを感じた説明会でした。


楽天モバイルが考えるビジョンは、我々が考えている以上に壮大かもしれない




記事執筆:あるかでぃあ


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