「20代でコンサルに転職」は簡単ではない

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中小企業からコンサル会社への転職は可能か?(写真:polkadot / PIXTA)

→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。

こんにちは。私は社員が50人程度の、情報の販売を生業とする企業に入社した新卒社会人です。
2〜3年で戦略コンサルタントに転職したいと考えているのですが、中小企業出身者がコンサルティングファームに転職できるのでしょうか? 2〜3年後というのは経験を裏付ける時間としては妥当なのかという2点が私の相談内容です。
現在勤めている会社にはコンサルのような情報を活用するお客様が多く、コンサル業界について知れば知るほど、コンサルタントに転職することを強く志望するようになりました。
また、情報を販売することは必ずしも企業ではなく、個人や少人数のグループでもできると考えるようになったことも転職を志望するようになったきっかけです。以上、稚拙な文章ですが、ご回答してくださるとうれしいです。
会社員 青木

「ポテンシャル採用枠」に入れるか否かが勝負


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中小企業からコンサル会社への転職が可能であるか否か、ということですが結論からいうとまったく問題ありません。実際に私自身、かつてそういった小さな企業の出身で戦略コンサルに転職した人間です。

そして、青木さんは働き始めてから2〜3年後の転職を考えておられますから、そのときの年齢はおそらく25歳前後なのかと思われます。その年齢で中小企業出身であれば、経験者というよりもむしろ「ポテンシャル採用枠」に入れるか否かが勝負になってきます。

戦略コンサルファームは、その業務の特性として異業種から採用する場合は、同一業務そのものの経験者の採用というわけにはいきませんから、基本的には業務において「通用するか否か」での判断となります。

それが20代の中頃くらいまでであれば、自頭のよさやコミュニケーション能力、行動力といったポテンシャル力を見ることとなります。

ちなみにそれ以降、特に30歳以降については上記に加え、職務にかかわる具体的実績、経験とスキルをもって判断をされることになります。つまり、入社後即戦力として、少なくとも、たとえば出身業界におけるプロジェクトでは使えるか否かなどが判断されることとなります。

自分で考える癖をつける

青木さんの場合は前者の20代中頃くらいまでの層ですから、そもそも出身企業や業界というのはさほど意識されません。

当然、2〜3年としても仕事において誇れる実績や経験があれば、非常にプラスに働きます。特にそのプラス面が、ファームにおける既存メンバーの経験にない場合はなおさらです。

そういったものがない場合は、どういったスタンスで仕事に取り組んでいるかといった姿勢や、難解な事柄を分解して理解し伝える力といった基本的能力の高さをいかに示せるかが勝負でしょう。

そのためには、日々の業務において言われたことをこなすだけではなく、なぜその業務をやるのか、もっといいやり方はないのか、といったことを考える癖をつけたり、身の回りのことに対する観察力を意識して養ったりする必要があります。

後者についていえば、たとえば新聞で企業の新しい事業への進出やM&Aなどが発表されたときは、業界やその会社の動きを考えたうえで、なぜ、そういった動きをしているのかを考える癖をつける、ということですね。

こういった思考をそもそもするか否かは習慣によりますし、物事をそのまま受け入れるのではなく、いろいろな角度から分析をする、背景を探る、理解して伝える、といったあたりはコンサルの仕事で必須ですから、そういった思考回路に慣れておく必要はあります。

そしてそういった習慣化がポテンシャルに引っかかるか否かの分かれ道でもあるのです。

私は長い間、戦略コンサル会社で採用にも携わってきましたが、どんな有名大学や有名企業出身者、いやたとえ有名戦略コンサル会社出身者でも、この考える癖のない人は絶対に採用していませんでしたし、5分も話せばそういった能力があるか否かはわかります。

たとえば、コンサル会社によってはある特定の手法(コストカットにかかわる手法など)を有している場合もあるのですが、その手法そのものを饒舌に語れる人は多いものの、なぜ特定のプロジェクトでその方法を採用したのか、ほかにどのような手法があり、比較した際にその手法はどこが優れているのかなどといったことを語れる人は多くはありませんでした。

このケースでも、やはり学校の勉強よろしく方程式を暗記しているにすぎませんから、解決策ありきになってしまって、状況に応じた最適解、固有解を提示し実行しなければならないコンサル的にはアウトな状態なのです。

ポテンシャル力のある人、つまり応用力のある人は物事の本質を考えますから、上記の質問にも答えられるわけです。そして答えられるということは、ポテンシャル力が高いわけです。

「挑戦のための準備」をしているか

加えて、やはりコンサルを目指すのであれば、仕事以外での準備もぜひしておきましょう。

採用を通じて、非常に多くの異業種からコンサルに転職したいという人を見てきましたが、皆さん「挑戦したい」という人は多いですが、実際に「挑戦のための準備」をしている人は非常に少なかったです。

たとえば、簿記やファイナンスの勉強をしている、夜間学校でMBAコースを受講しているなど、そういった業務以外にもコンサルになるための準備をしていると非常に印象に残ります。

ポテンシャルでの採用ですから、やはりそういった自己投資をどの程度できる人か、行動力はどの程度あるかが見られますから、実際にやっているとなると非常にポイントは高くなります。

ですから採用時に私はいつも、「熱意はわかりましたが、仕事および仕事以外で具体的にコンサルになるためにどんな準備をしてきていますか」と質問をしていました。候補者の本気度を判断するためです。

戦略コンサル会社の持つ唯一の資産は人ですから、採用には非常に力を入れていますし、本気です。本気だからこそ、本気の候補者を採用したいのです。

そのような考えから、青木さんには仕事および仕事以外の2方面でぜひ準備を進めていただきたいのです。

物事を分解し、理解し、伝える力を仕事を通じて養うだけでなく、今の自分とコンサルとを比較した際にどのような知識が不足しているのかを考え、スクールに通うなどのアクションを起こしてみてください。

ご自身のキャリアにおける課題解決をして具体的行動に落とせるか否かが、コンサル転職への最初の第1歩だとお考えください。青木さんが本気を通じて夢をつかまれるであろうことを応援しております。