日本代表ポジション別「最新勢力図」 W杯メンバー“23枠”入りへ抜け出したのは?

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欧州遠征2連敗も、強豪との試合から浮き彫りとなったW杯メンバーの輪郭

 バヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表は11月の欧州遠征を2連敗で終えた。

 10日の国際親善試合ブラジル戦は1-3、14日の同ベルギー戦は0-1といずれも敗戦。だが、指揮官は「選手たちに大きなライオンを倒すところまで行ったと祝福した」と試合後に明かしており、強化としては実り多き2試合となった。

 2018年6月のロシア・ワールドカップまで残り7カ月に迫るなか、12月にはE-1選手権(旧東アジアカップ)が控えており、「12月にトーナメントがあるが、そこでしっかり準備してほしい。この12月で国内組からA代表に入るのかどうかの決断がされる」と指揮官は公言。その後は来年3月19日から27日の間に2試合を予定しているが、ハリルホジッチ監督は3月までに最終的なメンバーを決めると明かしており、すでに大枠は固まったと見ていいだろう。

 今回の欧州遠征を受けて、序列はどのように変化したのか。ポジション別に最新の勢力図を見ていく。

[対象選手]
2017年に招集経験のあるメンバー
[序列評価]
◎=メンバー入り濃厚
○=当落線上
△=現状ではメンバー入り困難
※=11月欧州遠征メンバー

■GK(予想:3枠)
◎ 川島永嗣(メス)※
〇 東口順昭(G大阪)※
〇 中村航輔(柏)
〇 西川周作(浦和)※
△ 林 彰洋(FC東京)

 ブラジル戦とベルギー戦にフル出場した川島が不動の地位を築いており、その牙城は揺るがない。今回の遠征で8カ月ぶりに代表復帰を果たした西川だが最後まで出番は訪れず、当落線上の立場は変わらない。コンスタントに招集されている点を考慮すれば東口が第2GKの座に近く、中村と西川が残り1枠を争う構図だろう。

槙野の評価上昇、長友&酒井宏は不動の存在

■センターバック(予想:4枠)
◎ 吉田麻也(サウサンプトン)※
◎ 槙野智章(浦和)※
◎ 昌子 源(鹿島)※
〇 三浦弦太(G大阪)※
〇 植田直通(鹿島)
△ 森重真人(FC東京)

 ブラジル戦とベルギー戦に起用されたのは吉田と槙野のコンビだった。格上相手に二人を固定起用した点を考えれば、ディフェンスリーダーの吉田、槙野という序列と言っていいだろう。最終予選で頭角を現した昌子もバックアップとしてメンバー入りは確実視される。一方、代表デビューがお預けとなっている三浦は当落線上。11月の遠征メンバーから外れた植田も含めて、国内組は12月のE-1選手権でどこまで指揮官にアピールできるかに懸かっている。負傷により長期離脱した森重は、戦列復帰に向けて動き出しているが、E-1の出場は難しく、メンバー入りは極めて難しそうだ。

■サイドバック(予想:4枠)
◎ 酒井宏樹(マルセイユ)※
◎ 長友佑都(インテル)※
◎ 酒井高徳(ハンブルガーSV)※
〇 車屋紳太郎(川崎)※
△ 宇賀神友弥(浦和)

 11月の欧州遠征で2試合とも先発を飾ったのが左サイドバックの長友、右サイドバックの酒井宏だ。もはやこの二人は不動と言っても過言ではなく、怪我やコンディション面の不安がない限り、ロシア大会もメンバー入りが予想される。バックアッパーの筆頭は両サイドに対応する酒井高で、ベルギー戦の後半41分から出場を果たした。出番のなかった車屋は継続的に招集されており、国内組の中では頭一つ抜けた存在か。他の候補選手を含めて、E-1で最終決断がなされそうだ。

■守備的MF/インサイドハーフ(予想:3枠)
◎ 山口 蛍(C大阪)※
◎ 長谷部誠(フランクフルト)※
◎ 井手口陽介(G大阪)※
〇 遠藤 航(浦和)※
△ 今野泰幸(G大阪)
△ 郄萩洋次郎(FC東京)
△ 加藤恒平(ベロエ・スタラ・ザゴラ)

 欧州遠征で成長を見せた一人が井手口だ。ブラジル戦はトップ下で起用され、自身のミスから得点を献上するなど課題の残る内容となったが、ベルギー戦ではインサイドハーフで起用され存在感を示した。長谷部はベルギー戦を欠場したが、現状では山口、長谷部、井手口の選出は確実と言っていいだろう。遠藤はブラジル戦の後半41分から出場したもののアピールするには至らず、現状では厳しい状況に立たされている。

激戦区のトップ下で長澤浮上、原口も盤石

■トップ下/インサイドハーフ(予想:3枠)
〇 森岡亮太(べべレン)※
〇 長澤和輝(浦和)※
〇 倉田 秋(G大阪)※
〇 香川真司(ドルトムント)
〇 小林祐希(ヘーレンフェーン)
△ 清武弘嗣(C大阪)
△ 柴崎 岳(ヘタフェ)

 唯一、不動と呼べる存在が見当たらないのがこのポジションだ。ブラジル戦はトップ下に井手口を起用したが、一定の結果を残したとは言い難い。欧州遠征2試合で途中出場した森岡もインパクトを残せず、倉田は起用されずに終わった。株をただ一人上げたのが、代表初招集となった長澤だ。指揮官も働きを評価しつつ、「初めての試合にしては本当に良かった。たくさん走り、守備もたくさんしてくれた。攻撃面でもう少し顔を出してほしい」とリクエストしている。攻守両面でハードワークできるタイプをハリル監督は求めているが、ほぼ横一線の状態で多くの選手が並んでいる。E-1選手権で長澤や倉田ら国内組が見せるパフォーマンス次第で、序列がようやく固まってきそうだ。

■左ウイング(予想:2枠)
◎ 原口元気(ヘルタ)※
◎ 乾 貴士(エイバル)※
△ 宇佐美貴史(アウクスブルク)

 欧州選手権を通じて序列が明らかになったポジションの一つだろう。原口と乾は切磋琢磨を続けており、ともにW杯メンバー入りは濃厚と見られている。ただ先発の座を勝ち取るのは原口か。欧州遠征で2試合連続先発を飾っており、指揮官の期待値も高い。乾は試合途中から起用し、流れを変える“ジョーカー役”を担う形になりそうだ。当初は指揮官の寵愛を受けていた宇佐美だが、今や声がかかる気配は一切なく、原口と乾のどちらかに緊急事態がない限り、招集の可能性は極めて低い。

■右ウイング(予想:2枠)
◎ 久保裕也(ヘント)※
◎ 浅野拓磨(シュツットガルト)※
〇 本田圭佑(パチューカ)

 序列が明らかになったポジションがあった一方、混沌としているのが右サイドだ。ブラジル戦は久保、ベルギー戦は浅野が先発。ともにゴールという結果を手にできていないものの、スピードという武器で相手を脅かしたのは浅野だ。一本のパスに抜け出してシュートを放つ場面もあり、何度も相手ゴール前に迫っている。これまで久保が不動に近い存在だったが、欧州遠征ではアピールに失敗した感がある。リオデジャネイロ五輪世代の二人が本大会直前まで熾烈な争いを繰り広げる形になるだろう。それだけに、本田ら他の候補が食い込む余地が少ないのもこのポジションか。リオ五輪世代の二人が健在であれば、そのままW杯行きとなり、本田は落選の憂き目を見る可能性もありそうだ。

大迫の代役不在、E-1選手権で国内組選定か

■センターフォワード(予想:2枠)
◎ 大迫勇也(ケルン)※
〇 武藤嘉紀(マインツ)
〇 岡崎慎司(レスター)
〇 杉本健勇(C大阪)※
〇 興梠慎三(浦和)※
△ 小林 悠(川崎)

 欧州遠征で2試合連続先発出場の大迫は不動の存在だが、現状では最も選手層に不安を残すポジションとも言える。杉本は欧州遠征で2試合連続の途中出場を果たし、チャンスに絡んだものの結果を残せなかった。興梠は招集されたものの、起用されずに11月シリーズを終えた。武藤や岡崎にしても大迫の代役にはなり得ず、大迫の状態次第で最も不安が残るポジションとなるだろう。指揮官はかつて浅野や本田らも最前線で起用しており、ある種の割り切った選考もあり得る。

 ◇    ◇    ◇



 11月の欧州遠征を終えて、ハリルホジッチ監督が信頼するメンバーの輪郭は見えてきた。指揮官も明言する通り、12月のE-1選手権で国内組の最終選考を行い、本大会に向けた23枠の大半が決まると見ていいだろう。3月に発表されるメンバーは“本大会仕様”で、そこから入れ替わりがあるとしても、新顔抜擢の可能性は極めて低い。

 その意味で、最大の注目はE-1選手権だ。欧州遠征を終えた指揮官は国内組の中で山口を称賛し、「もしかしたら蛍だけがフィジカル能力が高い。こうした試合についていけるのは蛍で、他の選手はまだまだ」と物足りなさを口にしている。国内組にとっての最終サバイバルは、熾烈なものとなりそうだ。

【了】

大木 勇(Football ZONE web編集部)●文 text by Isamu Oki

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images