音楽の勉強をするヨハンナさん(右から2人目)。カフェの時間に集まると、自然に政治や社会について語り合うという(スウェーデン・ストックホルムで)

写真拡大 (全2枚)

 日本の若者の投票率が、世界各国に比べて著しく低い水準であることが分かった。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、加盟国中で日本の若者の投票率は最下位で、平均の半分程度しかない。一方、投票率の高い北欧では、若者が社会参画しやすい環境づくりが整い、若者と政治の距離が近い。海外ではさまざまな方法で投票率を上げており、専門家は日本でも抜本的な対策を講じることが必要と指摘する。

汚職なく政治身近 80%を超すスウェーデン


 2014年の総選挙で、30歳以下の投票率は81%と全世代の投票率(86%)と大差なかったスウェーデン。地方議員は会社員や学生などと兼職できるよう、議会は夕方や土・日曜日に設定。幼い時から政治や社会に参画する重要性を教育され、政治家の汚職がほぼないため政府への信頼度が高く、若者たちは投票の重要性を知っている。

 ストックホルムで若者が集まる施設に行くと、どの若者に聞いても「選挙に行く」と答える。農村出身のヨハンナ・リーボンさん(22)は「一票の力を信じている。友人と誰になぜ投票するか、当たり前に会話する」と明かす。

 地方議員のウィリアム・エロフロンさん(22)は「若い力で社会を変えようという意識がある。政治家は特別な存在ではない」と強調する。若者たちは選挙について考えるフェス(祭り)で盛り上がるなど、文化祭のような雰囲気で選挙運動をしている。

 一方、日本で東京都内の大学に通う大学生に聞くと「高校の授業で選挙には行くべきだと言われたので行くが、報道を見てもどこに投票すべきか分からない」(20歳、女性)との声や、「今の政治は心に響かず、好奇心が湧かないから投票しない。与えられた権利という論理にも、むずがゆさを感じる」(19歳、男性)といった消極的な声が返ってきた。

高率の国では義務や罰則も


 OECDの16年の発表によると日本の18〜24歳の投票率は32・6%で、統計にある29カ国中最下位だ。加盟国平均(65・0%)のわずか半分。加盟国中最も高い投票率だったオーストラリア(96・9%)は、義務投票制を採用している。投票を棄権すると20豪ドル、最大で50豪ドルの罰金が科される。

 次いで高かったベルギー(89・9%)も義務投票制で、罰金の他に15年間に4回以上投票を棄権すると選挙権が10年間停止される仕組みだ。

 義務投票制を採用していなくても高い投票率を維持する国もある。デンマーク(83・7%)やオーストリア(80・4%)など8割を超す国はいずれも被選挙権年齢が18歳と低く、若者が立候補者や政治そのものに対して親しみを感じていること、女性議員の割合が高く若い女性が投票しやすいことが背景がある。

「将来見据え教育が重要」


 世界の選挙事情について詳しい日本大学法学部の岩崎正洋教授は「投票率は幸福度や政治の透明度などと連動している」と指摘。国連が17年に公表した世界幸福度調査で最も高かったノルウェー、続くデンマーク、アイスランドはいずれも若者の投票率は高い。また、非政府機関(NGO)が公表した政治の透明度を示す世界腐敗指数レポートの上位国(デンマーク、ニュージーランド、フィンランド)でも、若者の投票率は高い。

 岩崎教授は「ノルウェーなどの投票率の高い国は日本の公民のような形式的な授業と違い、子どもの頃から政治教育に触れ、日常から意識付けされている」と制度の違いを指摘。また「年配者ばかりが選挙に行くと、若者を無視していいという状況をつくり出してしまう。自分の将来を考えた場合、今選挙に行かないと大変なことになる」と警鐘を鳴らす。(若者力キャンペーン取材班)