【現役の眼】元日本代表MF、橋本英郎が解き明かす「流行する3-4-2-1の狙いと効きめ」
攻撃時には、逆にディフェンスラインは3人で守るので、残りの選手で攻められ、攻撃に枚数を多く割けます。
そしてもう3つ目の理由は、「日本人の特徴に合っているから」です。
それは、体格に恵まれた選手が少なく、ポゼッションに特化しているセンターバックや、逆にポゼッションは苦手だけど、守ることだけが得意な選手がいる。勤勉に繰り返しボールにアタックでき、味方選手のために汗をかくことを厭わない──。まさにそうした点です。
これは、ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督が気づいた点でもあると思いますが、日本人の特徴であり、特長でもあると思います。
採用しているチームによって考え方に差がありますが、攻撃時には3枚のセンターバックもオーバーラップして、サイドバックのような動きをする場合があります。
逆にオーバーラップが苦手な「ザ・センターバック」な選手は、相手カウンターに備え、密着マークをしていたりします。
ここまで述べた点を考慮して、Jリーグのチームをジャンル分けしたいと思います。
3-4-2-1を攻撃的に採用しているチームを「Aパターン」、守備的に採用しているチームを「Bパターン」に分けます。
まずは、「Aパターン」。代表格が浦和になります。昨季と今季前半戦の攻撃力は目を見張るほどでした。
ポゼッション率がすこぶる高い。攻撃は最大の防御と言わんばかりにボールを保持し、いったん攻撃のスイッチが入った時の連動性は、分かっていても簡単には止められませんでした。
ほかにもこのパターンに合致するのが、徳島と大分です。
徳島は今季からスペイン人監督に代わり、新たなサッカーの構築に取り組んでいます。連動性が豊富なプレー、閃きのあるプレーが多く見られ、また、結果も付いてきているので、観ていてワクワクする強いチームになっています。
大分は、後方からのビルドアップで緩急をつけながら、急激にスピードアップしてゴールを落としにかかります。昨季J3にいたとは思えないほどで、いまや上位陣を苦しめる存在。J2のプレーオフ圏内に食い込んでいます。
「Bパターン」の代表格は、広島です。
もともとペドロビッチ監督が作り上げた攻撃的なサッカーを、森保監督が守備の改善を施すことで進化させ、Jリーグ連覇を成し遂げました。
守備時のディフェンスの人数は本当に多く、日本人の苦手とする1対1の局面のカバーを完遂していました。今季はカバーの意識が強すぎて、1対1の戦いで強さをあまり見せられず、失点数が増えてしまったのが残念でした。現在は、新監督の戦術やフォーメーションの変更により、新たなチャレンジが奏功しているように感じます。
ほかには、甲府、松本、岡山もこのパターンに分類できます。
甲府は、ディフェンスラインにザ・センターバックを並べ、引いてカウンターを仕掛けるスタイルを確立しています。日本人の勤勉さ、そして日本人が苦手とする当たりの強さを武器に守りを固めています。しかし、連動した攻撃や、閃きのあるプレーなど、攻撃時の選択肢が少ないため、なかなかゴールを挙げられなくなり、辛抱できずに敗れてしまうことが多々あります。
今年はそのスタイルが正念場を迎えているのかもしれません。なんとか降格圏から脱出して、落ちない甲府、残留争いのスペシャリストぶりを見せてほしいです。
松本も、甲府とスタイル的にはあまり変わりません。こちらはより運動量を重視して、攻撃時に両サイドのウイングが上がり、クロスを上げて得点を演出します。