Instagramの「手書きツイート」とはどのようなものなのでしょうか(写真 : Mills / PIXTA)

完全にデジタルなSNSの世界でも、ぬくもりの感じられる「手書き」で女心をつづる人たちがいます。片思いの彼への思い、デートでキュンとしたところ、そして報われない不倫相手との恋です。今回は、Instagramで盛んに行われている「手書きツイート」の世界をお伝えします。

ガラケー世代はアナログ感を愛する


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LINEが7月にリリースした「デコ文字」をご存じでしょうか。絵文字の「文字」バージョンで、ひらがな、カタカナ、アルファベットや特殊記号を色つきのポップな文字で送ることができます。LINEでメッセージを送るとき、文字パネルの上に候補として表示されることから、気づいた方も多いと思います。

“盛る”ことが好きな中高生にさぞ受け入れられると思いきや、サポートされた当初こそ使ったものの、今ではほとんど使わなくなっているようです。「わざわざ変換するのがめんどくさい」「もともと、絵文字を使わない」などの理由で、ステータスメッセージ(ひとこと)にポイントとして入れることはあっても、メッセージで常用するほどではないそうです。


LINEの「デコ文字」(写真:筆者撮影)

一方、デコ文字を歓迎していたのは、デコメを利用していた“ガラケー世代”。デコメとは、デコメールやデコレーションメールと呼ばれた、テキストと画像、背景色を組み合わせたメールです。動く絵文字やカラフルなイラストをダウンロードし、メールの先頭や文字のあちこちにかわいく配置し、1通のメールを時間をかけて作り上げていました。

ケータイメール文化の衰退とともに、なんとなく忘れ去られていましたが、今回のデコ文字はその頃を思い出すと喜ぶ声が挙がったのです。

Twitterを検索してみると、「ママの絵文字の使い方ウケる」など、親世代に愛用されていることがうかがえます。

“ガラケー世代”といっても、ガラケーを使っていた人すべてとすると年齢層が厚くなってしまいますが、ガラケーを中高生の頃に使っていた世代に絞ると、今おおよそ30代前半。仕事、結婚、育児など、人生の岐路に立たされている年頃です。

この世代を中心にInstagramで流行っているのが、「手書きツイート」です。手書きツイートとは、ペンなどで手書きした紙を撮影した画像を、主にInstagramに投稿する文化です。

おしゃれな風景やスイーツで「インスタ映え」に燃える人が多いInstagramで、なぜかTwitter投稿のように「ツイート」と呼ぶ「手書きツイート」は、30代の女性を中心に人気があります。

「#手書きツイート」にはタブーな恋も投稿される


Instagramの「#手書きツイート」(写真:筆者撮影)

Instagramを「#手書きツイート」で検索すると、さまざまな手書きツイートがヒットします。おおまかに分類すると、4種類のタイプがあります。

・手書きの文字と絵を見せたいタイプ

筆ペンで習字のような文字を書ける人、カリグラフィーで英字を書ける人が字を見せるために投稿をしています。「Instagram live」を使って書き方講座をライブ中継している人もいます。かわいいイラストや文字で、1コマ漫画のような画像を描く人も。

・格言タイプ

相田みつをさんのように、格言を美しく書いて投稿しています。有名な格言から、自分の思いを一言にまとめたものまでさまざまです。

・文房具自慢タイプ

かわいいメモや使い勝手のいいペンなどの文房具が好きな女性たちは、紙とペンを一緒に添えて撮影しています。これはInstagramらしいオシャレな画像がほとんどです。

・題名タイプ

「昨日彼と……」などのタイトルを1枚目の画像に記し、文章が続くタイプです。これが最も典型的な手書きツイートです。

題名タイプのほとんどが、複数の画像をひとつの投稿にできるInstagramの機能をうまく利用して、画像をフリックすると次の画像が出てくる、パワーポイントのスライドのような投稿にしています。「昨日彼と……」という画像をフリックすると、「久しぶりのデートをしました。なかなか会えなかったから、つい思いが高まって〜」と続きが書かれた画像が読めるといった仕組みです。

このタイプの手書きツイートで最も多いのは「恋バナ」です。恋バナといっても、両思いで幸せいっぱいの投稿ではありません。幸せカップルは、リア充な写真をたくさん撮影して「インスタ映え」しているからでしょう。

手書きツイートで語られるのは、元カレへの未練、不倫相手への思い、彼とのセックスなど、知り合いには打ち明けづらい赤裸々な話ばかりです。特に「#不倫」や「#18禁」などのハッシュタグとともに記されている投稿は、Instagramとは思えないアダルトな内容ですが、あくまでもポエムのようにつづられています。

内容が内容だけに「身バレ」が怖いからか、手書きではなく、画像加工アプリやメモアプリにテキストを打ち込んだ画像を使っている人もいます。こうしたスマホで文字を入力するタイプは、「デジタルツイート」と呼ばれています。

際どい内容であっても公開アカウントで投稿されているのは、Instagramは複数のアカウントが使えるからでしょう。投稿主への共感や励ましなど、優しいコメントやいいね!も多く寄せられています。ブログや漫画のように、恋の行方が気になって読んでいる人も多そうです。

手書きツイートをウォッチして楽しむ掲示板が「2ちゃんねる」にあるのですが、張られているリンクをクリックしても、すでにアカウントが消えていることも珍しくありません。恋の終わりとともに閉鎖するのかもしれませんね。

女子中高生にも派生するのか

LINEとTwitterを駆使する女子中高生たちですが、Instagramを始める人も増えています。また、Twitterの「勉強垢」と呼ばれるアカウントを作っている人は、テスト勉強したノートを文房具と一緒に撮影して投稿しています。小学校高学年あたりから、女子は「自分の手書き文字をかわいくする」ことに燃えはじめ、文字の練習をしたり、色つきペンで文章を飾ったりすることに凝るので、中高生が手書きツイートにはまっても不思議はありません。

しかし、若年層のリサーチ結果を発信する「TesTee Lab!」が9月に発表した「手書きツイートに関する調査」によると、「手書きツイート」をしたことがある」と答えた女子高生は6.9%。今は少数派といってもいいでしょう。

中高生はスマホの文字入力に慣れており、画像加工もお手のものです。写真に加工アプリを使って指で手書きして飾ることはありますが、手書きした紙を撮影して投稿する意味がピンと来ないようです。

その一方、Instagramの「#手書きツイート」は執筆時点で約42万件も投稿されています。恋愛や結婚、育児の悩みを誰でもいいから聞いてほしい――手書きツイートからはそんな思いが切々と伝わってきました。ブログやTwitterではなくInstagramがその役割を担っているのは、シェア機能がなく炎上しにくいInstagramが、女性たちの“安全地帯”になっているのかもしれません。