潜水艦に搭乗した金正恩氏

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朝鮮中央通信が10日付で伝えたところによると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)戦略軍の金絡謙(キム・ラクキョム)司令官は「グアムの主要軍事基地を制圧、けん制し、米国に厳重な警告信号を送るために中・長距離戦略弾道ロケット『火星12』型の4発同時発射で行うグアム包囲射撃方案を慎重に検討している」と発表。弾道ミサイルが「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過する」とも明らかにした。

これを受け、小野寺五典防衛相は10日午前の衆院安全保障委員会の閉会中審査で、集団的自衛権を行使して北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃することは可能との認識を示した。

日本は、2015年に成立した安全保障関連法で集団的自衛権の行使に踏み込んだ。日本と密接な関係にある他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」と認定すれば集団的自衛権を行使できるとしたのだ。

小野寺氏は、北朝鮮のミサイル発射により「米国の抑止力が欠如することは、日本にとって存立の危機にあたる可能性がないとは言えない」と述べ、北朝鮮のミサイル発射が「存立危機事態」に当てはまる可能性があるとの考えを示したわけである。

ちなみに、安全保障関連法の国会審議においては、このような事態が起きる可能性はほとんど議論されなかった。当時はまだ、北朝鮮が米国へ向けたミサイル発射を宣言する日が来るなどとは、誰も想像できなかったのだろう。

しかし、たったの2年間で情勢はここまで変わった。今後も北朝鮮情勢は、激変に激変を重ねる可能性がある。

その中で起こり得る事態として筆者が前々から懸念しているのが、北朝鮮の弾道ミサイル潜水艦が韓国や米国領に向かおうとするとき、海上自衛隊はどうするのか、というものだ。

今回の小野寺氏の認識が正しいものだとするならば、同じ理屈で、「海上自衛隊は北朝鮮の潜水艦を撃沈すべき」ということになりかねない。そしてそれは、日本が核武装国に先制攻撃を加えることを意味する。

(参考記事:北朝鮮の新型潜水艦は、いずれ海上自衛隊が沈めることになる

それにより発生するリスクと防衛コストの莫大さは、未曽有のものになるだろう。

もちろん、情勢が必ずその方向に動いていくとは限らない。日本が北朝鮮の潜水艦に対する攻撃を真剣に検討するような状況になるほどならば、その前に米韓が何らかの対処をしている蓋然性の方が高いだろう。

しかし繰り返し述べるが、安全保障関連法が成立したとき、このような形で戦争のリスクが高まるとはほとんど誰も考えていなかった。

今後の北朝鮮の出方によっては、筆者がここで指摘したよりもさらに深刻な状況が生まれてくる可能性もゼロではないのだ。