あなたはこの画像平気ですか?

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インターネット上で恐怖画像などとして「ネタ」にされるものに「蓮コラ」などと呼ばれるものがある。

蓮の種が詰まっている穴の部分(花托)の画像を人の腕や足などの画像にコラージュしたもので、人の体にポツポツと細かな穴が大量に空いているかのような画像に恐怖・嫌悪感を抱く人も少なくない。

恐怖症として正式には認められていないが

蓮の花托に限らずスポンジ状の構造物やコーヒーなどの液体の上に浮かぶ大量の泡といった小さな穴の集合した様子に対する恐怖症は「トライポフォビア」と呼ばれ、海外ではいくつか論文も発表されている。

2013年には英エセックス大学のアーノルド・ウィルキンス博士とジェフ・コール博士が286人の健康な成人を対象に研究を実施。トライポフォビアとされる反応を確認し、

「トライポフォビアはその形状(小さな穴が大量に空いている状態)が潜在的に危険な動物(有毒生物など)の視覚的特徴と似ていることから、こうした危険を回避しようとする脳反応に基づいている」

と発表していた。

基本的には自己診断になるため「そもそも恐怖症などではなく単なる思い込みや特異体質ではないか」との意見もあり、米精神医学会なども公式な恐怖症としては認めていない。

しかし、単純に嫌悪感を抱くだけでなく、かゆみや吐き気、パニック発作を起こすという重度のトライポフォビアを報告する論文が2017年4月に南アフリカから発表されており、本格的な検証が必要になっていた。

そんななか、7月6日、英ケント大学のトム・クップファー博士らが発表した最新の研究結果によると、トライポフォビアは有毒生物への恐怖ではなく「寄生虫や感染症などの病気に対する嫌悪感」である可能性が高いという。

クップファー博士らの研究は、フェイスブック上にあるトライポフォビアのグループから募ったトライポフォビアであると自称する18〜69歳までの374人と、同じような年齢構成でトライポフォビアではない304人を対象に、16枚の画像を見せ、その反応を比較するというもの。

8枚は人の肌に発生する円形の発疹や痘瘡、犬の耳に寄生するダニや寄生虫の卵といった病気に関連する画像で、8枚は細かな穴の開いたレンガや蓮の花托といった病気とは関係のない画像となっている。それぞれの画像を見た後に不快感を1(とても快適)、5(快適でも不快でもない)、9(とても不快)で採点。さらに嫌悪感を「嫌悪感尺度(TDDS)」という評価シートで、恐怖感を恐怖症の診断に用いる評価シートでそれぞれ0〜7点までで採点している。

恐怖よりも嫌悪が強い

まず不快感は、「病気に関連した画像」に対しトライポフォビアのグループもトライポフォビアでないグループも平均8点以上となったが、「病気に関連しない画像」ではトライポフォビアのグループが平均7〜8点だったのに対し、トライポフォビアでないグループは平均5点以下、中には4点(快適)に近い人もいた。

嫌悪感と恐怖感ではどうだっただろうか。「病気に関連した画像」に対しトライポフォビアのグループは恐怖感が平均3点だったのに対し嫌悪感は4点、「病気に関連しない画像」では恐怖感が平均2.5点に対し嫌悪感は平均3点で、嫌悪感が強い傾向にあった。

トライポフォビアでないグループでは「病気に関連した画像」に対し恐怖感2点、嫌悪感3.5点、「病気に関連しない画像」は恐怖感0.5以下、嫌悪感1点以上となっている。

こうした結果から、トライポフォビアのグループは病気に関連していようといまいと嫌悪感を強く抱いており、研究者らは「危険な生物への『恐怖』より、病気への『嫌悪』がトライポフォビアの根幹にある」と推測しているのだ。

また嫌悪感について、トライポフォビアのグループからは「皮膚がぞわぞわする」「皮膚を虫が這いまわるような感覚」といった意見が多く、クップファー博士らは

「寄生虫への明示的な言及となっており、病原菌や寄生虫への嫌悪を強く感じさせる」

とコメント。トライポフォビアが嫌悪感をベースにした感覚であり、寄生虫や感染症を回避しようとする過度の応答のひとつであると結論付けている。