しかしエデル・リマのプレーについて尋ねると指揮官はこう返してきた。「リマのところは許容しているというか、ああいう特徴だと選手にも言っている。困ったときにひとりで行って、何とかしちゃうので。だからリマが運び出した時にどうするかを周りのメンバーに共有している。あれを日本人に『やれ』と言っても出来ないし、普通じゃないから。それはそれとしていいなと思っている」。
 
 どちらかと言えば後ろが重い、前への推進力が乏しい甲府にあって、彼の意外性に富んだ攻撃参加はいいアクセントになっている。怪我明けの3試合目であれだけできるということも、ポテンシャルの証明だろう。
 
 硬かった表情も『微笑』くらいは浮かぶようになってきた。新井も「試合で隣に入ってみると自分を持っているし、思っていることを伝えようとしている。やりたいことを伝え合うことはできる」と説明するように、決して周りに対して閉じたタイプではない。
 
 3試合のプレーで評価を云々するのはナンセンスだろう。ただし彼の独特なプレーは単純に見ていて面白いし、甲府や日本サッカーでは見たことのなかった“何か”が間違いなくある。堅くて退屈なスタイルから徐々に脱皮しつつある新生ヴァンフォーレの中でも、意外性あふれるエデル・リマのプレーには要注目だ。
 
取材・文:大島和人(球技ライター)