オランダ代表のジャンセン【写真:Getty Images】

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試合後にはミューレンス監督に質問、降板に「何か理由があったのか?」

 20日(日本時間21日)にロサンゼルスのドジャースタジアムで行われた第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝で、オランダはプエルトリコに3-4で敗れた。4時間19分の大熱戦は、延長11回タイブレークで決着。最後はオランダ6番手の元楽天ファンミルが決勝犠飛を浴びたが、試合後の記者会見では、9回に登板したドジャースの守護神ジャンセンをなぜ続投させなかったのか、ミューレンス監督に質問が飛んだ。その裏には、ドジャースとの「約束」があったという。

 まさに圧巻の投球だった。ジャンセンは同点で迎えた9回に登板。150キロ超のカットボールを軸に先頭リベラ、アービレスを2者連続で3球三振に仕留めた。3人目のパガンへの2球目が低めに外れ、初めてボールとなったが、続く95マイル(約153キロ)の直球を打たせてニゴロ。3者凡退に打ち取った。

 わずか9球の完璧な内容。しかし、10回のマウンドには上がらず、元楽天のファンミルが登板。1イニングは無失点に抑えたものの、タイブレークとなった11回にサヨナラ犠飛を浴びた。

 捕手として09年のWBCに出場しているジャンセンは、その後、投手に転向してメジャー屈指のクローザーに成長。昨年は71試合登板で3勝2敗47セーブ、防御率1.83と圧巻の成績を残してFAとなり、5年総額8000万ドル(約90億円)の大型契約で残留した。今大会はこの決勝ラウンドからチームに合流したばかりだった。

「ジャンセンはほとんど投げなかったが、何か理由があったのか?」

 試合後の記者会見でミューレンス監督にこんな質問が飛んだ。確かに、ジャンセンがもう1イニング投げていれば、流れは完全にオランダに傾いていたかもしれない。昨年のポストシーズンでは、ナショナルズとの地区シリーズ第5戦で7回途中から2回1/3で51球、カブスとのリーグ優勝決定シリーズ第6戦では6回から3イニングで30球(ともに無失点)を投げた経験もあり、回跨ぎでも不安はない。30球以上を投げなければ、WBCの球数制限ルールで決勝に勝ち進んでも登板可能だった。

「ドジャースとの取り決めだった。1イニングを超えて投げさせるつもりはなかった」

 ミューレンス監督はこの質問に「何球投げたかに関わらず1イニングだけしか投げられない約束だった。彼は9球を投げた。素晴らしかったよ。彼は卓越していた。でも、ドジャースとの取り決めだったんだ。1イニングを超えて投げさせるつもりはなかった。だから、彼をマウンドから降ろさなければいけなかった。ルールはルールだから」と答えている。

 結果的にファンミルは10回の1イニングを無失点に抑えた。仮にジャンセンを続投させても、延長11回まで引っ張れば30球以上に達する可能性が高いため、2イニングで降板となっていた可能性も高い。走者を背負ってスタートするタイブレークとなれば、全く違う要素も出てくる。そして、9回からジャンセンを投入した采配についても議論の余地があるだろう。

 シーズン前に開催されるWBCと、シーズンの最後に行われるポストシーズンとでは状況が違うため、ドジャースとの「約束」も仕方ないものかもしれない。もっとも、マリナーズの守護神ディアスを10回から投入したプエルトリコが、11回も続投させて無失点に抑え、勝利をもぎ取ったという事実もある。

 試合の結果にどのような影響があったかは、すべて推測で語ることしかない。ただ、ジャンセンの圧巻の投球にはオランダに試合を流れをぐっと引き寄せるだけの“力”があった。10球目以降があれば…と思わせる内容だったことは確かだ。
 
 ミューレンス監督は、タイブレークでの敗戦を「我々はそのルールに適応する必要がある。でも、このような負け方をするのはつらいね」と振り返った。2大会連続での4強入りという好成績を残したが、初の決勝進出にあと1歩まで迫っただけに、その声には無念さが滲んだ。