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恐ろしいスピードで発射される銃弾を止めるだけではなく、粉々に砕くことができるほど強固な素材の開発が進められています。耐熱性や耐放射線性も備わっていて防弾ベストや防護服などさまざまな使い道が模索されています。

Ballistic performance of composite metal foams

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0263822315000434

This foam stops bullets cold and pulverizes them to dust | Fox News

http://www.foxnews.com/tech/2017/02/23/this-foam-stops-bullets-cold-and-pulverizes-them-to-dust.html

ノースカロライナ州立大学のAfsaneh Rabiei博士の率いる研究チームが開発しているのは「Composite Metal Foams(CMF:複合発泡金属)」と呼ばれる新しいタイプの発泡金属で、銃弾を止めるのではなく粉々にすることが可能です。銃弾を粉々にする様子は以下のムービーから確認できます。

NC State: Metal Foam Obliterates Bullets - YouTube

開発された複合発泡金属を中間層に使用し、着弾面にダイヤモンドに次ぐ硬さを誇る炭化ホウ素セラミックス、背面に超々ジュラルミンを採用してあるパネルに対して、7.62×63mmのM2徹甲弾が放たれます。



徹甲弾がパネルに着弾。穴が穿たれるのかと思いきや……



パネルにダメージを与えることなく、弾は砕け散ってしまいました。



研究チームがCMFを初めて開発したのは2015年のことで、発表された論文では1インチ(2.54cm)以下の薄さでも銃弾を止められたと書かれています。しかしながら、実際に防弾ベストや防護服に使用するには、耐熱性や耐放射線性など銃弾以外のものに対する耐久性も必要になってきます。

実用化を目指す研究チームは2015年7月に複合発泡金属がX線やガンマ線、さらには核分裂の際に放出される中性子線に対する耐性を十分に持つことを示す研究結果を発表。放射線に対する耐久力を上げるためにステンレスとタングステンを合成させた素材を使い「High-Z Steel-Steel Foam(高Z金属発泡金属)」というのを開発したとのこと。



翌年の2016年3月28日には0.15cmの厚さの発泡金属とステンレスを800度の熱に30分間さらすという実験の研究レポートを公開。実験では発泡金属の方がステンレスよりも発火するのが8分間遅かったことが確認され、耐熱性も備え持つことが証明されたというわけです。



研究チームはこのような改良を重ねて、発泡金属の実用化を模索中。発泡金属は従来の金属よりも軽量で耐久性も高いことから、アメリカのFoxニュースは「防弾ベストだけでなく、宇宙服や作業服など軍事以外での用途も考えられる」としています。