そこで高原は始動日から積極的に動く。去年の体験を踏まえ、今年は1月中旬以降からJクラブがキャンプを張っていることを最大限に利用し、数多くの練習試合を組んだ。1月22日と29日に天皇杯沖縄県予選の地区大会を控えていたが、23日に浦和、24日にG大阪、28日にFC東京とトレーニングマッチを実施。結果はすべて敗戦となったが、2月1日も千葉に胸を借りる予定になっており、貴重な経験を積む機会を得ているのは確かだ。
 
 それでも、高原は経験値を高めるだけではJFL昇格は果たせないと話す。若手プレーヤーの取り組みに甘さを感じたからだ。
 1月29日に挑んだ天皇杯沖縄県予選の地区予選・北中城サッカークラブ戦。6-0で勝ったとはいえ、消極的なゲーム運びで前半は1得点しか奪えなかった。Jクラブとの一戦で得た学びを生かせず、ハーフタイムには叱責せざるを得ない状況に陥った。
 
「人から言われてやっているうちは何もできないし、何も通用しない。今日の試合は今年の天皇杯出場を懸けた県大会に出るための予選だけど、去年からいる選手しか登録ができない。今年も新しく選手が来るけど、彼らが来れば去年からいた選手は厳しくなる。そういう意味で、この試合はチャンスなのに生かそうとしていなかった」(高原)
 
 今季、JFL昇格を目指すチームにとって、意識改革はなによりも急務だ。森も「試合になると理由は分からないけど、選手は自信を持ってやれていない。だから、本当にもったいないと思う。どんどん新しい選手が入ってくるし、去年よりも良い選手が来るので、もっとチャンスはなくなる」と競争力の欠如を嘆いており、積極的にチャレンジをしていく姿勢が今のチームに求められている。
 
 沖縄の地で自身の経験値をすべて注ぎ込む高原は、過去に所属したクラブで得たモノをすべて継承させたいと話す。沖縄SVというクラブ名が03年から06年に在籍したハンブルガーSVに由来し、ユニホームが01年に在籍したボカ・ジュニオルスを彷彿とさせる青と白と黄を配色したデザインになっているのも、そのためだ。
 
「監督として指揮を執る難しさはない。それよりもチームの経営は今までやったことがない部分なので難しさがある。でも、良い仲間が集まってきているし、良い話もできている。その輪をもっと広げてやっていければいいなと思う」と語る高原は、今季も持てる力をすべて注いで、さらなる飛躍を目指す。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)