Silent Siren「私たちはもっといける!」――ワールドツアーで得た確信を胸に、新たなステージへ
今年3月に4thアルバム『S(エス)』をリリースしたSilent Siren(サイレント・サイレン)。過去最高のオリコン3位を記録したが、彼女たちにとってリリースはあくまでも通過点。産みの苦しみを味わい、世に送り出すと、そこから息つく暇もなく、その“新生児”をお披露目する怒涛のツアーが始まった。横浜アリーナを含む国内26公演にインドネシア、中国、台湾、香港、そしてアメリカを巡るワールドツアーを一気に駆け抜けた“サイサイ”の4人の顔には、10カ月前のアルバムリリース前の取材時とはまた違った自信がみなぎっていた。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



ライブを重ねるごとに、アルバムが成長していく喜び



――今年3月に『S』が発売され、4月には全国ツアーが始まりましたが、リリース後の反響や手応え、ライブで実際に披露されてみてのファミリー(※サイサイのファン)の反応などはいかがでしたか?

ひなんちゅ(梅村妃奈子/Dr.) 去年、このアルバムを収録した時期もツアーを回っていて、ずっと音楽に触れている中で制作したこともあって、等身大の音が録れたっていう感覚があったんです。それが実際に過去最高の順位で多くの人に届いてうれしかったですね。ファミリーにどの曲が好きかと聞くと、バラバラなのもサイサイらしくていいですね。
すぅ(吉田 菫/Vo&Gt.) すごく苦労して作り上げたアルバムだったので、それがみんなに届いて、ツアーを通じて変化し、成長していくのを感じていて「あぁ、作ってよかったな」って心から思います。ライブで、こちらが想像していたのとまた違うものをファミリーと一緒に作り上げていくような感覚を味わえて幸せでした。


▲ひなんちゅ


▲すぅ


あいにゃん(山内あいな/Ba.) みんな、アルバムをすごく聴きこんでライブに来てくれてるのが感じられて、すごくうれしかったです! ライブを重ねていく中で、日に日にアルバムの“色”がハッキリしてくるのを実感しました。
ゆかるん(黒坂優香子/Key.) いままで、ライブではアップテンポな曲を並べて、最初から最後までガンガン盛り上げていくことが多かったけど、今回はしっとり聴かせる部分ができて、それによって他の曲が引き立つところもあったり、バリエーションが増えたのを強く感じましたね。


▲あいにゃん


▲ゆかるん


――スタジオでのアルバム制作だけでもかなり大変な作業だったかと思いますが、その後のツアーもかなりのハードスケジュールでしたね。そのぶん、それぞれの楽曲、そしてファミリーと向き合う時間も長かったかと思います。

すぅ そうなんですよ! 最初は、こちらの体にもまだ完全に曲が入り込んでないから、探り探りでいろんなことを試して、それが徐々に定着していく感じでした。

――みなさんが抱いていたイメージと異なる形や予想外の成長を遂げた楽曲もあったのでは?

ゆかるん 『チェリボム』は最初、「こんな難しい振り付けで大丈夫かな?」と不安があったんです。いままでは、初めてサイサイのライブに来た人もその場ですぐ乗れるようなのが多かったので。でも、みんなしっかり覚えてきて、一緒に踊ることですごい一体感が生まれて、いまでは全楽曲の中でも一番ってくらい盛り上がる曲になりました。
すぅ 『吉田さん』の最初のイントロで「うおぃ!」って掛け声が入ったり、『スローモーニング』でも、私たちが「サビで手を上げたら乗りやすいかな?」って相談して、実際にやってみたら、みんなもやってくれたり。『milk boy』では「そこもやってくれるの!?」ってところでファミリー発信で掛け声があって、想定以上の成長をしてくれたと思います。



「横浜アリーナはそんなに大きくない」発言の真意



――国内ツアーのファイナルは横浜アリーナでした。昨年の“聖地”日本武道館を経て、今回、さらに大きな横浜アリーナはいかがでしたか?

すぅ 横浜アリーナでは、以前、ファッションショーのオープニングアクトで3分くらい演奏したことはあって、そのときに「次はワンマンで帰ってくる!」って誓ったので、それが果たせて感慨はありました。
ひなんちゅ これ、そのまま文字になると語弊があるというか、誤解されそうなんですが、私はそこまで「大きい!」という感覚がなくて…。もちろん「小せぇな」って思ったわけじゃないですよ!(笑) なんていうか「私たち、まだまだいける!」って感じ?
あいにゃん 覚えてるよ! 前日に会場を見たひなから「そんなに大きくなかった」ってLINEが送られてきたの。私、その言葉にすごく救われたから。まあ、翌日、入ったら「大きいじゃん!」って思ったけど(苦笑)。
ひなんちゅ ライブの前日に、すぐ隣の日産スタジアムでBUMP OF CHICKENのライブを見たんですよ。それが終わって、設営中の横浜アリーナに行ったんです。






――日産スタジアム→横浜アリーナの順番で行くと小さく感じるかもしれませんね…。

ひなんちゅ ここ、うまく書いてほしいんですけど(笑)、「私たち、もっと多くのファミリーと一緒にライブを作れるはず!」って自信につながりましたね。自分が観客として行ってたときはすごく広く感じたんですけど、実際にステージに立ってみて、もちろん大きいんですけど…子どもの頃に通ってた幼稚園に、大人になってから足を踏み入れたような…。
すぅ 横浜アリーナが子どもの頃に通ってた幼稚園!? どゆこと?(笑)
あいにゃん ヤバいよヤバいよ!(笑)
ひなんちゅ いや、難しいな…(苦笑)。少なくとも、マイナスな意味での緊張や力みを感じずにできたなって思います。実際にお客さんが入ったら、やっぱり広く感じましたけど。

――空っぽの状態よりも、観客が入ったほうが広く感じるものなんですか?

すぅ お客さんが入ると、全然、印象が変わりましたね。「こんなに広かったんだ!」って。
あいにゃん 奥まで人がいるのがわかるから、広さが実感できるんですよ。私は「広い!」って思ったけど、それでも、これまでずっと応援してきてくれた、なじみのファミリーの顔が見えるんです。そうしたら緊張もなくなったし「うわっ、こんな広いところでヤバい!」っていう感覚は確かになかったですね。



――ツアーをこなしていく中で、バンドとしての成長を感じる部分も多かったのでは?

すぅ やっぱり、ツアーが一番、成長させてくれますね。もちろん、各公演をそのとき、その場でしかできないこととして全力でやってはいるけど、必ず反省もある。それを次に活かしていけるのがツアーのいいところで、ファイナルの横浜アリーナに向けて、日々全力で、日々成長していくのは感じていました。
ゆかるん スタッフさんの存在の大きさもすごく感じました。一度、ある公演で、照明のトラブルがあり、普段なら暗転から私がピアノを弾き始めてスタートする曲なのに、明るいまま弾き始めなきゃいけなくなって、すごく緊張したんです。あぁ、スタッフさんの仕事が会場の雰囲気だけでなく、私たちの気持ちも作ってくれていたんだなって実感しました。

――あいにゃんさんは、今回、ツアーリーダーとして演出やセットリストにも関わったそうですね?

あいにゃん 前回の年末ライブのリーダーが、ひなだったんですけど、ひならしい強さや勢いをすごく感じたんですよね。今回、「私らしさって何?」と考えつつ、自分も、そしてメンバーやスタッフさんも気持ちよくやれるライブにしたいなって。



――メンバーのみなさんから見て、“ツアーリーダー”あいにゃんはいかがでしたか?

すぅ やっぱり、ツアーリーダーごとの“らしさ”って、うまく言葉では表せないけど出るんですよね。今回はフワッと優しさに包まれるような。年末、ひながツアーリーダーを務めたときは、ライブが終わると「よっしゃ! サイコーだぜっ!」って感じだったけど…。
ひなんちゅ ……(笑)。
すぅ 今回は終わって引き上げてくると心が温かくなって「あぁ、よかったねぇ」とほろりと感動するような? あいにゃんらしいなって思いました。



「音楽は国境を越える」けれど…海外で手にした自信と課題



――国内ツアーに続いて、ジャカルタ(インドネシア)を皮切りに、上海(中国)、ロサンゼルス(アメリカ)、サンフランシスコ(同)、台北(台湾)、香港とワールドツアーもありました。

ゆかるん ワールドツアーの経験はすごく大きかったけど、半面、言葉の重要性を改めて感じましたね。まず英語がしゃべれないと…。特に国内では、その場でのメンバー間やファミリーとのやり取りを楽しんでもらうことが多いので、その空気感をもっと出せたらより楽しんでもらえるなぁと。
すぅ 勉強になりましたね。長距離の移動が続く中で、自分でメンテナンスしながら走り続けないといけない大変さも感じたし、やっぱり英語がしゃべれないと始まらないなって。



――歌自体は日本語ですが、やはりMCの部分で?

すぅ そうですね。「音楽は国境を越える」というのは事実ですが、やはり言葉で直接、思いを伝えたい場面もあります。感謝の気持ちを思い切り伝えたくても、ままならないこともあって「もっと英語でコミュニケーションができたら」と思うことが何度もありました。

――逆にワールドツアーで手応えを感じた部分は?

あいにゃん 私たちの曲がすごく好きで来てくれたんだなというのは感じましたね。お客さんも日本語の意味を全部わかってるわけじゃないけど、口ずさんでくれたり、“音”で通じ合うのが感じられました。Instagramでベースのフレーズをほめてもらったり。スキルアップすればもっと楽しんでもらえるって励みにもなりました。
すぅ お客さんの反応を直接見て、私たちは、もっともっといろんな国に行けるし、行かなくちゃいけないバンドなんだって改めて思いました!



――そして、年末にはスペシャルライブ Dream on!が控えています。

あいにゃん 1年の締めくくりに、みんなの心に残り、来年につながるようなライブにしたいです。年末のツアーリーダーはゆかるんなんですけど、ゆかるんワールド全開になる気がしてます!
すぅ 昨年に続いてのスペシャルライブということで、これを年末の恒例イベントにしていきたいです。サイサイは、常にみなさんを驚かせることを考えてます。今回も、ゆかるん演出のもとで(笑)、みんなを驚かせつつ「また明日から頑張ろう!」って思えるライブをお届けします!

――メンバーからの期待(プレッシャー?)もかなり大きいですが、ツアーリーダーとして意気込みを!

ゆかるん ……(笑)。やったことないことをやりたいです。驚き、ワクワクを盛り込むので、遊園地に来る感覚で遊びに来てほしい。働いてる方も学生のみんなも、日常でいろんな大変なこと、やりきれないことがあるかもしれませんが、サイサイのライブに来たら、全部忘れてまた頑張ろうって思える――そんな夢いっぱいのライブにしたいです!