「友引」が決まらないため葬儀業界も震撼

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「友を引く」として葬式を避ける「友引」。これが決められなくなるとして、葬儀業界に波紋を広げているのが「2033年問題」だ。

〈終活業界に激震!? 友引が消える 六曜の2033年問題〉と大見出しを打ったのはシニア向け雑誌『ソナエ』(9月16日発売号)だ。「六曜」は、「友引」「大安」など日の吉凶を示す民間信仰。結婚式の日程を考えるときに「大安かな」と自然にカレンダーに目をやるように、日本人にとって身近な縁起物だ。

 旧暦(天保暦)の日付の確定には、

(1)新月と新月の間を1か月とする。
(2)「その月が何月か」は春分、夏至など太陽の動きから算出される「中気」の日で決める。春分のある月が2月、夏至は5月、秋分が8月、冬至は11月とする。

 など複数のルールがある。ところが、2033年秋に、「ルールを全て満たそうとすると、『9月の次の月が11月』になってしまう」といった不具合が生じてしまうのだ。これは1844年に天保暦が導入されて以来、初めての異常事態だ。

 旧暦の日付が決められない以上、六曜も「友引」の日も決まらない──これが2033年問題である。最も混乱が懸念されるのが葬儀業界だ。火葬場は、葬儀の日としては避ける人が多い友引を定休とするところが少なくない。

「友引の休業日は、火葬炉のメンテナンスのために必要なものです」(都営の瑞江葬儀所管理事務所)

 年間130万人が亡くなる多死社会において、うまく休業日が設定できず、火葬炉の金属部分などが熱疲労を起こして事故などになればそれこそ一大事だ。

 影響は業界全体に及ぶ。桐ヶ谷斎場など6斎場に61基の火葬炉を所有する東京博善の管理本部は「毎年12月に葬儀業者向けに翌年の友引日を記した冊子を配っているが、その時までに六曜が決まっていなければどうしたらいいか」と話す。僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏もこういう。

「寺院関係者は葬儀がない友引をコンサート観賞や家族旅行に充てる場合が多い。友引がなくなれば休日を決められなくなる」

 春分などを決める立場の国立天文台(文科省所管)は「あれこれいう立場ではない」とコメントするのみ。

 日本カレンダー暦文化振興協会は解決に向けて昨年8月、2033年11月に閏月(※暦のズレを調整するために例外的に設けられる「13番目の月」)を置く案を発表したが、この方法も旧暦のルールを全て満たすわけではない。

 そのため、「他の案が今後出てきてもおかしくない」(業界関係者)といい、仮に友引がカレンダーによってバラバラなら、火葬場、葬儀業者、僧侶の日程が合わず、葬儀日程がスムーズに決められない事態も発生する。住職の都合に合わせてスケジュールを設定したら遠方で骨を焼かされるハメに──といったケースが続出する懸念もある。

 ただでさえ2033年頃は団塊世代が80代後半になり、“葬儀インフラ”が足りなくなる時代だ。「混乱を避けるためには、できる限り見解を統一させることが好ましい」(中牧弘允・暦振協理事長)

「穏やかな死」のためにも、無関心ではいられない。

※週刊ポスト2016年10月7日号