すべての恋は片想いからはじまる! 中川大志「しょっちゅう、恋してるかも(笑)」
「片想いの経験? もちろん、ありますよ」。いやいや、モテ男が何をおっしゃいますやら。中川大志が切ない恋に身悶える姿なんて想像できませんが? そんな意地悪な指摘にもこの男、笑みを浮かべさらりとこう返す。「だって、どんな恋もはじまりはすべて片想いでしょ?」。なるほど…金言です! そんな彼の最新出演映画は、タイトルそのまま、一方通行の恋模様をつづった8編からなるアンソロジー映画『全員、片想い』。若き“恋愛マスター”に本作の魅力から切ない恋への処方せんまで(?)たっぷりと語っていただきます!

撮影/平岩 亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.



幼馴染のふたりのリアルな会話にキュンキュン!



――中川さん主演の『MY NICK NAME is BUTATCHI』は、女子高生のノムラ(伊藤沙莉)と彼女が密かに想いを寄せる幼馴染のサタケ(中川)の恋を描いた一編ですね。

今回の飯塚 健監督には以前、『REPLAY & DESTROY』(TBS系)というドラマで1話だけお世話になったんですが、今回、映画でガッツリとご一緒できるのがまず嬉しかったです。脚本を読んだら、飯塚さんらしい独特の物語で…。

――どんなところが独特なんでしょうか?

セリフのひとつひとつのニュアンスが絶妙というか、なんとも言えない世界観なんですよね。だからこそ、伝える役者のセンスが問われる(苦笑)。笑いも独特で以前、監督が「観客が10人いたら、そのうちのふたりが笑ってくれたらいい」と言ってましたが、まさにその言葉通りの変化球です! これがいいコースに決まってくるんですよねぇ…(笑)。



――子どもの頃は、いじめられっ子のサタケをノムラが助けてたのに、いつのまにかサタケのほうが体も大きくなって。そんな彼にノムラは恋してるけど、何でも言い合える超近距離だからこそ恋心だけは伝えられない…。

僕がこれまで出演させていただいた少女漫画原作の、夢見るような恋愛とはまたひと味違って、誇張のないリアルさが印象的でした。生々しいやり取りを切り取っていて、だからこそ、目を背けたくなる現実とか、つらい部分もそのまま描いていてグサグサと刺さってきます。




――サタケはノムラの親友のカンザキ(上原実矩)と付き合ってて、カンザキはノムラのサタケに対する気持ちにも気づいてる。それでもふたりは親友で…。中川さんが出ていない、女子ふたりの屋上のシーンも印象的です。

あそこは最高ですよね! 切ない…。男同士じゃできないというか、男だったら殴り合いになってるかも(笑)。この物語の切なさって、ノムラのサタケへの思いも本物だけど、カンちゃんとの関係も嘘のない本物の友情だってところ。どちらかでも、うわべだけの関係だったら、こんな深い話にならず、恋か友情のどちらかを失って終わってるんです。

――なるほど。

カンちゃんもノムラが大好きで、でもどうにもならない現実がある。すべてをわかった上でのあのやり取り。見ていてつらかったし、ノムラが屋上で叫ぶセリフは…「ホントにそうなんだよなぁ…」と胸が締め付けられました!



――繊細な女子ふたりのやり取りの一方で、中川さんが演じたサタケは…

こいつは鈍感すぎるでしょ!(笑) 男と女で恋愛に対する感覚の違いってあるんだな、と感じましたね(苦笑)。



片想いこそ最も「恋愛っぽい時間」



――サタケを演じる上で意識したことはありますか?

どこにでもいそうなダルそうな男子高校生をイメージしました。僕の周りに異性の幼馴染がいなかったので「どんな感じなんだろう?」と悩んだんですが、現場に入って演じてみて、幼馴染って性別を超えた存在なんだなというのを感じました。

――近すぎて異性として相手を見てない。それがまさにノムラにとっては問題点なのですが…。

そうなんですよね(笑)。サタケにとっては恥ずかしいところも弱い部分もすべて見られてるから、一緒にいて着飾ったり、カッコつけたりする必要がない。互いに言葉を選ばずに何でも言える――だからこそ、一方のスイッチが“恋愛”に切り替わっても、友情の殻が破れない…。幼馴染の恋って難しいですねぇ(苦笑)。 



――映画を見ていると、片想いって切ないし、もちろん、両想いになりたくてあれこれ思い悩むんですが、その期間もすごく大事な経験なんだなと思います。

そうなんです、実は一番恋愛っぽい時間なんですよね。「あぁ、恋してるな」って感じます。恋愛って、本能的な部分が強いじゃないですか? 自分の気持ちに嘘をつくことはできないし。それをまざまざと感じさせられるんですよね。



――相手の気持ちが見えない、一方通行の恋だからこそ、いろんな感情が自分の中で交錯します。

相手のすべてを知らないし、「こういう人なんじゃないか?」「こうであってほしい…」って理想化して妄想しちゃう部分もあったり(笑)。こんな料理が得意で、部屋はこんな感じで…って僕、気持ち悪いですか!?(苦笑) いや、みんなそういうもんでしょ? すべてを知らないからこそ自分で見えない部分を埋めようとする。切ないけど楽しいですよね。



――本作に限らず、恋愛作品に出演することが多いですが、作品の中のいろんな恋愛シチュエーションに身を置くのはどんな気持ちですか?

今回の作品はすごくリアルな感じでしたが、作品によって、特に少女漫画原作の話だと「現実ではこんなこと絶対できない!」というアプローチをすることもあるじゃないですか。それは貴重な経験だし、面白いなとは思いますが…。

――ふと我に返ると…

メチャクチャ恥ずかしいですよ!(笑) だからこそ、どれだけ自分が役に入り込めるかが勝負なんです。客観視したら照れくさくなっちゃいますから!