1月29日に、日銀がマイナス金利政策の導入を決めた。マイナス金利と言っても、我々が銀行に預金をするときの金利がマイナスになるわけではなく、銀行が日銀に預けている当座預金の金利を現在の0.1%からマイナス0.1%に引き下げるというものだ。
 マイナス金利の適用は、今後当座預金を増やした分だけに限られるが、それでも銀行は、日銀にお金を預けるより、融資や投資に資金を振り向けるだろうという金融政策だ。

 これは奇策ではなく、欧州中央銀行も一昨年にマイナス金利を導入している。しかし、このマイナス金利が功を奏する可能性は小さいだろう。銀行が貸し渋りをしていて、企業が設備投資の資金を得られないのだったら、もちろん効果がある。しかし、いま設備投資が不振なのは、モノやサービスが売れないからだ。
 実際、総務省「家計調査」によると、昨年12月の実質消費支出は前年同月比4.4%のマイナスと、4カ月連続で減少している。ではなぜ、消費支出が減っているのかと言えば、働く人の実質所得が減っているからだ。「家計調査」でサラリーマン世帯の実質収入をみると、昨年12月は前年比2.9%減と、こちらも4カ月連続のマイナスになっているのだ。
 消費がなければ、企業は生産をしなくなる。実際に12月の鉱工業生産指数は、前月比1.4%の低下と、2カ月連続のマイナスとなっている。
 こうした景気失速を警告する指標を確認したからこそ、日銀は前例のないマイナス金利の採用に踏み切ったのだが、それが効果を発揮するかどうかは、今後消費需要を拡大する政策が採られるかどうかにかかっている。

 ただ、ひとつだけ明らかになったことがある。それは、来年4月からの消費税引き上げが、ほぼ不可能になったということだ。いまの日本経済は、とても消費税の再増税に耐えられる状況ではない。安倍総理もそのことは、十分承知しているだろう。
 ただ、消費税引き上げの凍結は、安倍総理にとって、選挙を有利に運ぶための最大の切札だ。だから、凍結の発表については、タイミングを慎重に見極める必要がある。
 私は、発表のタイミングは6月の中旬から下旬ではないかとみている。6月上旬で国会が閉幕すれば、野党からの追及を気にする必要はなくなる。そして7月10日とみられる衆参同日選挙を勝利に導くために、絶好のタイミングとなるからだ。

 ただ、消費税の再増税を凍結したとしても、それで国民の税負担が減るということではない。だから、消費者の懐を豊かにする施策を考えて行かなければならない。
 私は、消費税率を5%に戻すのが最も効果的だと思うが、日本共産党でさえ、消費税の引き下げは主張していない。だから、その可能性は限りなくゼロに近いだろう。
 それでは、どうしたら庶民の懐を暖かくすることができるのか。私は、国会の最大の論点は、そこだと思うのだが、残念ながらそうした議論は、ほとんどなされていないのが実情だ。それは、国会議員が高給を食み、庶民とかけ離れた生活を続けているからかもしれない。