「何かわからないけど、とりあえず注射」はやめよう(写真はイメージ)

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花粉症対策は、セルフケア方法から対策グッズ、市販薬まで数多いが、できることなら治療してしまいたい。しかし、その治療法もいろいろあり、結局よくわからないのでそのままに、という人も少なくないだろう。

そもそも今現在、医療機関で受けられる花粉症治療にはどのようなものがあるのだろうか。

1本の注射で...中身はステロイド

花粉症の治療として一般的によく知られ、医療機関でも基本的な治療法として実施されているのが、内服薬や点鼻薬、点眼薬などを使う薬物療法だ。日本アレルギー学会でも、最初の治療として推奨している。

薬剤によって原因となる物質の放出を抑制したり、神経や血管に作用するのをブロックしたりすることで花粉症の症状を和らげる対処療法で、くしゃみには、「第二世代抗ヒスタミン薬」、鼻づまりには「抗ロイコトリエン薬」や「鼻噴霧用ステロイド薬」、というように症状に応じた薬剤が処方される。

美容医療ではよく耳にする、レーザーやボトックスも花粉症の治療に用いられる。レーザー治療は鼻の粘膜を焼くことで、ボトックスは点鼻することで粘膜の神経に作用して、アレルギー反応を抑えるが、無症状になるわけではなく、どちらも粘膜が再生すると効果は切れる。

さらに最近SNSなどで見かけるのが、「注射1本で1シーズンの症状が抑えられる」とされている治療法だ。実施している医療機関では長く通院する必要がなく、費用も比較的低いとうたわれ、手軽な治療法に思える。注射で花粉症治療といえば、「アレルゲン免疫療法(アレルゲン特異的免疫療法、減感作療法とも)」という、花粉の抽出液を、濃度の低いものから少しずつ高くして注射し、花粉を防御する免疫を獲得させる根治療法がある。しかし、定期的に2年以上、医療機関で注射を打ち続けなければならず、とても1回では終わらない。また、2014年からは、注射ではなく薬剤を定期的に飲む「スギ花粉舌下免疫療法」という方法も。

では、1本ですむという注射とは何か。実は「ステロイド注射」だ。薬物療法でも利用されているように、ステロイドは非常に強い免疫抑制作用があり、免疫反応の一種であるアレルギー花粉症も抑えることができる。ただし、その高い作用と引き換えに、副腎皮質機能低下や皮膚障害、月経異常など多岐に渡る副作用もある。免疫が抑制されるため、感染症への抵抗力も落ちる。

日本耳鼻咽喉科学会や日本アレルギー学会は、他に副作用の少ない治療法が多数あり、ステロイド注射は一般的にはすすめられないとしている。

副作用やリスクをきちんと把握する

アレルギー疾患を多く診察、治療してきたアンチエイジング医師団の山田秀和医師も、
花粉症治療でのステロイド注射は、まずしません。時間はかかっても、治療ガイドラインに沿った抗アレルギー薬を服用するほうがよいでしょう」と話す。点鼻薬や点眼薬、内服薬にもステロイドを使っているのに、なぜ注射が問題になるのだろうか。

点鼻薬や点眼薬は少量を体の一部に使用するだけで、重症者に処方される内服薬も、ステロイド以外の薬でどうしても効果が確認できない場合のみ、服用期間は短く限定され使用される、いわば最終手段。また、こうした薬剤は仮に副作用が出ても、使用をやめることができる。

しかし、注射の場合、一度注入してしまうとあとから抜き取るということはできない。特に筋肉に注射する筋肉注射は、注射された部位に薬剤がとどまり、徐々に体内に広がっていくため、効果は長続きするかもしれないが、副作用が起きた場合に対処できないのだ。

1回の注射程度であれば問題ないとの声もあるが、厚生労働省科学研究班が「リウマチ・アレルギー情報センター」で公開している2000〜2005年の調査では、ステロイド注射をした花粉症患者70人のうち、結局1回では効果がなかったとして1シーズンに3回以上注射をした人は約40%にのぼる。さらに、ステロイド注射の副作用について、治療を受けた医療機関で適切に説明されていない人も、約60%いたという。

つらい花粉症をなんとかしたいから、何だかわからないけど効果があるなら注射しておこう、ではなく、自分が受ける治療法や薬剤の種類や副作用はきちんと把握する必要がある。[監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]

参考情報
日本アレルギー協会 鼻アレルギー花粉症
http://www.jaanet.org/patient/allergy/nose.html

(Aging Style)