−−今作の『スペクタクル』というタイトルは、大作映画を形容する際などに目にする言葉ですが、歌詞とタイトルはどちらが先ですか?

植田:タイトルから考えました。『スペクタクル』という言葉が好きで、口にすると気持ちの良い言葉を歌にしたいなと。

それとは全く別のことで、去年の秋口ぐらいに、すごく落ち込んで。前向きな気持ちで曲を書くことができずに、暗い曲しか書けない時期がありまして。仕事とは関係なく、毎日がめまぐるしくて。「どうしてこんなに色んなことが起こってしまうんだろう? もう勘弁して!」と思ってたんです。

でも、私だけじゃなくて、多分、みんな人生の中で、そんなことは沢山起こっていて。「誰にとっても、生きていること自体が、毎日すさまじくめまぐるしいんだな」と考えた時に、「それを受け入れて進まなくては!」と思い、『スペクタクル』というタイトルと合わせて曲にしました。

−−暗い曲を発表しようとは思わなかったんですか?

植田:迷ったんですけど、『わかんないのはいやだ』をリリースしたぐらいの時から、「次は更に開けたイメージの曲が出来たらいいな」と思っていて。暗い曲も一曲一曲にすごく気持ちが入ったので、とても大切な曲たちだなと強く思いながらも、また新しく『スペクタクル』が出来上がったので、タイミングとか、今届けたいものとかを考えて、今回はこっちにしようと思いました。

私自身、受け入れられないことが多くて、もうどこにも行きたくないと思っても、結局ずっと暗い所にいたい訳ではないので。たまたま誰かの耳に届いた時に、少しでも気持ちが前向きに、元気が出る曲を作れたら嬉しいなと、特にメジャーデビュー以来ずっと思ってます。

−−詳しくは聞きませんが、その『スペクタクル』な状況を乗り越えたのですか?

植田:状況は何も変わっていないんですけど、なんだかんだ色んなことが起きたとしても、受け入れることでしか、前に進めないなと思って。守りたい信念に向かって、受け入れて進む方向を選びました。



−−「変わらないとこがあって嬉しくなるのは 変わりつづけるから」という歌詞がありますが、進む方向が変われば「向かい風」が「追い風」になるように、変わることは捉え方次第で良くも悪くもあると思います。植田さんにとって変わらず大切にしたいことや、逆に変化を感じることはありますか?

植田:「変わらないものがない」ということが、私にとって気づきで。「むしろ、変わって当然なんだな」と思った時に、自分が変わらずにいたいと思える部分は大事にしたくて。子供の頃から歌が好きなこととか、親に「ちゃんと人のことを大事に思いなさい」と教えられたことは、守れているか分からないけど、ずっと大切にすべきだと思ってますね。

逆に、「全部受け入れる」という考え方は、3年前の私には全然なかったもので。見た目とか、髪型とか、色々と変わってきている部分もあるし。「前向きな歌を歌いたい」とか、19の頃の私が聞いたら「マジで?」と思うようなことを今言えるのは、すごく大きな変化だなと。

−−前髪が短くなりましたが、どのような心境の変化で?

植田:「髪を伸ばそうかな、じゃあ前髪を短くしようかな」と思って。“LAZWARD PIANO“のアーティスト写真を撮るタイミングで切ったんですけど、真っ白の、さっぱりとした雰囲気の中で撮るなら、絶対に前髪が短い方がいいなと思って、マネージャーさんに相談したら…。

−−メジャーデビュー前に無断で切った話を聞きましたが、今回はちゃんと了承を得たんですね(笑)。

植田:得てみたら、まさか、「早く切ったらいいのに、と思ってました」と言われ、「じゃあ切ります」と(笑)。

−−インディーズ時代を知る身としては懐かしさを感じますが、最近は前髪が短い女性が増えてますよね。

植田:そうなんですよ! 前髪を切ってから、それに気付いて。「やってもうたな」と思ってます(笑)。多分また、気分で何かしらやると思いますけど、しばらくはこんな感じかなぁー。