デキル朝型人間vsデキル夜型人間「1週間の予定の立て方」

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朝型ばかりが注目される昨今だが、夜型は本当に非効率なのか。デキル朝型とデキル夜型の行動を徹底分析する。

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【朝型人間代表】
沢渡あまね(大手メーカー 購買チームリーダ):自動車会社、情報システム企業などを経て現職。2012年からはキャリア育成のための講演会や研修を開催。

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2013年に共著で『英語で働け!サラリーマン読本』を上梓。おおむね月1回の研修・講演を行いながら、この2月には草食系ビジネスマン向けのキャリアアップのための単著を出版する予定です。私がビジネスマンとの“二足の草鞋”を両立できているのは、朝型生活のおかげなのです。

そういう私も20代前半の頃は超夜型人間で、連日の深夜残業は当たり前、始業ギリギリ出社の毎日でした。しかし、転職先で米国とのやりとりが増え、朝7時半前後からテレビ会議や電話会議を行うようになった8年ほど前から自ずと朝型にシフト。そこから朝時間活用のメリットに気づいて活用し始めました。

1つ目のメリットは誰もが知っている、「朝早い時間はオフィスに誰もいないので、自分の仕事に集中ができる」こと。そして、意外と知られていないのが2つ目のメリットで、他人よりワンテンポ早く仕事を進めることで、仕事全体の回転を速くし、効率をアップできることです。

スケジュール表にあるように、私は毎朝7時半には出社して前の晩にたまったメールをチェックして返信します。メールのなかには私の指示や判断を求めているものが少なくありません。朝時間にレスポンスしておくと、定時に出社した発信者は、すぐにアクションを起こせます。たとえば、午後の社内会議に関する“依頼メール”を朝イチで送っておけば、部下は事前に自分の考えをまとめたり、資料を作成するなど十分に準備して会議に臨むようになります。

ところが、私の出社が始業時間通りであったらどうでしょう。私からのメールの返信は早くて10時過ぎ。それを部下がチェックするのがお昼近くと、どんどん後へズレ込んでいきます。その結果、肝心の会議では「まだ考えがまとまっていなくて……」となり、何も決められない無駄な会議になってしまいがちです。

毎朝、私がメールチェックに割く時間は30分から1時間ほど。これを早朝にやることの効果は絶大です。それから始業時間の9時か9時半までに、今日1日どういう段取りで仕事を進めるか考えて計画します。

全員が顔を揃える始業時間以降は、職場がざわついて落ち着いて仕事ができなくなると思われがちです。でも実際そんなことはありません。周りの人もたいてい出社してから1時間くらいはメールチェックに没頭します。その時間は他人に話しかけることが少ないのです。すなわち、静かな環境で仕事に集中できる、私にとっての“ゴールデンタイム”は7時半から10時まであるのです。

■ざっくりと組む1カ月単位の予定

朝イチで組んだ段取りも、上司の「突発」の一言で狂いが生じることがあります。そんなときは、“早かろう、悪かろうのレベルの合意”をまず取り付けるようにします。「1時間でやります。ただし、このレベルの成果物になります」と伝え、時間に見合ったクオリティを納得してもらいます。時間をかけて一生懸命にやっても、「遅い」と怒られたのでは、時間と労力の無駄遣いでしょう。

1週間のスケジュールは月曜日ではなく、金曜日の夕刻に必ず立てます。これにより「翌週はこの仕事はここまで進めればよい」とイメージできますよね。また、月曜朝の仕事の立ち上がりが早くなり時間に余裕が生まれます。先の例のような突発的な用件にも柔軟に対応できるようになりますね。

1カ月単位のスケジュールは、自宅の壁かけの大きなカレンダーを見ながら考えます。「今月は仕事が忙しかったので、来月は家族との時間を増やそう」「書籍原稿の締め切りが近い。今月はサラリーマン稼業のアクセルは緩めて夜の時間を確保しよう」など、ざっくりとした予定を組みます。そこから週単位、日単位のスケジュールに落とし込みます。

最後に一言。朝型生活により、私は娘と毎朝一緒に朝食を取り、夜は妻との会話を楽しむこともできています。そして「家庭人」「仕事人」「個人」のバランスを取ることができる。なによりのメリットでしょう。

▼沢渡あまねさんの1週間のスケジュール

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【夜型人間代表】
神吉康太(AOI Pro.エグゼクティブプロデューサー):1968年生まれ。91年、早稲田大学卒業後、葵プロモーション(現AOI Pro.)入社。2011年より現職、執行役員も兼務。

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仕事の8割強がCMの制作で、広告会社と組んだり、ときには直接広告主から依頼を受けることもあります。部にはプロデューサーが4人、そのプロデューサーをアシストするプロダクションマネジャーが6人いて、基本的に2人1組で1つのCMを担当します。具体的な仕事は彼らをまとめたり、依頼されたコンテンツのプロデュースや、新規のCM制作の依託を取ってくることなどです。

そこで1番大切にしているのが、お客さまにとってナンバーワンのサービスマンになること。「こうしたら、もっといいCMができるのではないか」など、お客さまのアイデアはつきず、それに瞬時に対応することが重要なのです。連日夜8時くらいまでミーティングが続き、帰宅が11時頃になっても、残業をしている意識はありません。私はお客さまに喜んでもらうことが嬉しくて、自ら率先して仕事をしているのです。

平日の就寝時間はいつも深夜2時頃ですが、遅くとも翌朝7時半頃には起床するようにしています。そこから朝食を済ませ、メールのチェックを始めます。そして、広告会社やクリエーター、社内のスタッフなど必要に応じて電話やメールでの連絡を取ります。夜型とはいうものの、この時間帯が最も大切なのです。

何をしているのかというと、当日のミーティングの仕込みです。広告会社やクリエーターの方は、皆さん忙しい方ばかり。そうした方々に集まっていただいて、何も決められないのでは、ミーティングの意味がありません。テーマについて全参加者が、自分にとっての「正解」を持ち寄れるようにしておきます。

その事前準備のための連絡であり、その間にどう打ち合わせを仕切っていくかを徹底的に考えます。私はここにかける時間を惜しみません。ですから自宅を出るのは11時近くになってしまいます。幸いなことに私の会社ではフレックスタイム制の労働時間制度を導入しており、その制度をフルに活用しています。

また、私を“ハブ”にして連絡のやりとりをしていると、自分のところにどんどん情報がたまり、そのプロジェクトに最も精通している人間になっていきます。すると皆さんから頼りにされる存在になって、ミーティングを含めてプロジェクトの全体をコントロールしやすくなるという副次的な効果も得られるようになります。

そうした点において重要なのが「スピード・コミュニケーション」の実践です。電話にせよ、メールにせよ、連絡を受けたら、その場ですぐに返事をします。遅くても3時間以内というのが原則で、そのクイック・レスポンスだけでライバルが10人いたら、そのうち8人には勝てると考えています。

■自由に動くため緩めの予定組み

連絡の大半は、お客さまからの相談事だったり、依頼事です。それらに即対応するため、がちがちのスケジュールは組みたくありません。それで週末に翌週のスケジュールを固めるというようなことをしないのです。もちろん、ミーティングの時間は順次決めていきますが、それもギリギリまで待って、なるべくフリーな時間を確保しています。

また、ミーティングの途中で入ってきた連絡で、中座して違う現場に急行しなくてはならないときも出てきます。そうした際には部下にミーティングの仕切りを任せます。ですから、普段から部下と情報を共有するようにしています。結局、時間はお金と違って貯めておくことができません。ある時間にどれだけ同時並行で物事を動かせるかがマネジメントの要諦なのだと思います。

私の場合、社内にいる時間は短くて、月曜日の午前中の定例会議以外は、伝票の整理などのデスクワークは30分程度で済ませて、外に出てしまいます。翌日の仕事の段取りを考える「To Do」の整理・予想の時間もほとんど外で取っています。そして、そこで決めたスケジュールは社内の全員に公開し、何かあっても対応できるようにしています。

▼神吉康太さんの1週間のスケジュール

(伊藤博之=構成 加々美義人=撮影)