都会のにぎやかな繁華街は客引きの出没率が高い。彼らのターゲットは大人しくて優しそうな人たちだ。言葉巧みに近づき、ときには色仕掛けを用いて、商品を買わせようとしたり、店に誘導したり、新興宗教に勧誘したりする。
日中から活動するケースもあれば、仕事帰りの社会人を狙って夕方から活動を本格化する人種もいる。10月下旬ともなれば陽が落ちる時刻は早くなり、彼らの行動時間は長くなる。
Jタウンネットは、秋葉原界隈に客引きが出没するといわれるスポットに出かけ、彼らがどんな行動をしているか調査した。


平日22時頃の秋葉原(写真は全て編集部撮影)

昭和通りは男性客引きの密集地帯と化した

平日の20時過ぎ。JR秋葉原駅の昭和通り口に降り立った編集部。東京メトロ日比谷線の乗り換え口となっており、人の往来が激しいスポットだ。待ち合わせをしている人の姿も目につく。


目の前の昭和通り沿いは飲食店が軒を連ねる。ガールズバーや大衆向けキャバクラも多い。
横断歩道付近で獲物を狙っているのが、それらの店へ誘導する男性の客引きだ。まだ10月下旬というのに、彼らはなぜかジャケットの下にチョッキを着ている。
スーツ姿の客引きはそれほどしつこくなかったが、私服の男性が近づいてきて、10メートルくらいつきまといながら次のように声をかけてきた。

「社長、可愛い子いますよ。1時間3000円ポッキリでいかがですか。今日は店がヒマなんですよ。助けると思って、お願いします!」

手でNOの仕草を続けると、やがて彼は離れていった。
新宿・歌舞伎町や池袋北口ではよくある光景だが、興味がないなら、立ち止まらずに拒否の意思表示をしよう。諦めた客引きは次のターゲットに向かう。


再開発が進んだ秋葉原はオフィス街としての顔も持っている。駅ですれ違ったサラリーマン3人組は「これからキャバクラ行こうぜ!」なんて話していた。
神田や新橋がサラリーマンご用達の街であるように、秋葉原もまたこの類の店は増えていくのではないか。そして客引きも。

新興宗教にCDの押し売り...彼らはみな外国人!?

こんどはバス乗り場のある電気街口へ向かった。すると男女2人組が近寄ってきて、死後の世界に興味がないか尋ねてきた。聖書に書かれている天国と地獄の説明を始め、永遠の命を得る方法を教えたいので、近くにある教会まで来ませんかと誘ってきたのだ。
30分くらい問答を繰り返した。彼のイントネーションに若干クセがあることに気づいた。宮城出身の純粋な日本人と名乗っていたが、もらった小冊子の片隅には隣国の言語が1カ所小さく記載されている。発行元は「○○の教会 世界○○宣教協会」。宗教観の違いは埋まりそうもないので丁重に断った。


「今日閉店全品1000円!」でおなじみの店舗の前では、日本語の達者な白人男性がチラシを配っていた。何気なく受け取ると猛烈な勢いで話し出す。音楽活動をしており、CDをもらってほしいという。
「タダならもらうけど」と返事すると、「気持ち分だけくれないかな。お布施だと思って」と言うではないか。「本気で売りたいなら音楽聞かせるとか、プロモーションの工夫をしろよ!」と腹が立ち、チラシを返してその場を去った。


中央通りはメイドやコスプレイヤーでいっぱい

中央通りを北に進み、銀座線末広町交差点で反対の歩道に渡って、アキバ南端の万世橋まで歩くことにした。
チラシを配る女性が最も密集しているのはドンキの店舗前。彼女たちはメイドカフェのチラシを配っているのだが、ファンもついているのか、うやうやしく声をかける男性もいる。スーツ姿の中年男性である記者に対してはあまり積極的でなく、ラフな格好の若い男性によく声をかけている印象だ。


21時過ぎ、末広町駅近くで絵画を売っている店の前を通過した(参照:秋葉原から「エウリアン」消滅!? その行方を追ってみた)。すでに店じまいしたようで、中にいた女性がひたすらスマホをいじっていた。

パーツ屋街一帯はディープな雰囲気

パーツ屋が密集する地帯に足を踏み入れた。ほとんどの店舗はシャッターを閉めていて、営業しているのは飲食店くらいか。
カツアゲ=恐喝する人が出没するらしいとネットで噂の昌平小学校付近。照明が心なし明るかった。立ち寄ったときはちょうど区の職員がぞろぞろと退館するところで、身の不安を感じる瞬間はなかったが......。


周囲を見渡していると、近所のメイドリフレから女性5・6人が一斉に出てきた。彼女たちは駅の方向へ向かい、「触られた」「大丈夫だった」といったことを、あっけらかんと話している。


さらに南下を続けると、目つきの悪い外国人と何度か遭遇した。決して人種差別するつもりはないが、体格の優れたアフリカ系外国人が客引きを始めたら、六本木みたいになるのかなと夢想した。

駅に近づくにつれ、裏通りにもかかわらず女性が増える。地下アイドルが12月開催のライブのチラシを配っているケースもあったが、多くは居酒屋やメイドカフェ、ガールズバーに誘導する、コスプレ姿の客引きだ。髪の毛の下に隠したイヤホンで誰かと連絡を取っていた。
独特な雰囲気はJR総武線ガード下まで続いていて、「Photo NG!」と書かれたプラカードを持つ女性もいる。


中央通りに出た。時刻は間もなく22時になろうとしている。アキバで働いた女性も帰宅のため駅に向かっているが、この界隈で最も目立つメイド喫茶「めいどりーみん」はまだチラシ配りをしていた。メイド姿の女性からチラシを受け取ると、「わっ、ありがとうございます!」と喜んでくれた。


プロ野球のスタジアムで、9回裏になっても「ビールいかがですか〜」と頑張る売り子と重なった。なんというか健気な姿で、一度来店してみようかなと思ってしまった。

そのななめ向かいに建っているのが、エウリアン出没地として知られたギャラリー跡地。10月初旬の訪問時はシャッターが閉まっているだけだったが、建物全体がベニヤ板や幕で覆われている。工事内容を示すパネル類は見当たらない。アートを売っていた場所だが、現在の状態は美観を損ねている。


2時間ほどの夜のアキバ散歩だったが、身の危険を感じることはなかった。チラシを受け取ったら、そこに書かれた情報や口コミをネットで調べてから来店を決める――。そうすればぼったくりなどに遭う危険はかなり減るのではないか。

最後に。ツイッターユーザーのThe!リペあきさん(@ripetakobozu)が、秋葉原駅周辺で美人局に遭遇した体験を投稿している。マスクを着用した女性から「すみません地方から出てきて場所が解らないのですがポストは何処ですか?」と声をかけられ、一緒に探してあげたところ、強制的にジュースを渡してきて、体に寄り添ってくるなど、不可解な行動を取り始めたという。


遠くから誰かに監視されている=身の危険を感じた彼は、無事別れることができたそうだが......。

記者はその女性に遭遇しなかった。とはいえ、異性からの思いもよらない誘惑に殿方は十分注意したいものだ。