ももクロの「男性限定ライブ」が波紋ーー「憲法違反の可能性あり」と弁護士が指摘
福岡県太宰府市で10月31日に開かれるアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のコンサートが、波紋を呼んでいる。コンサートは国特別史跡の大宰府政庁跡で開かれる予定だが、「ももクロ男祭り2015 in 太宰府」と題して、観客を「男性」に限定していることに、疑問の声があがっているのだ。
コンサートは、太宰府天満宮や太宰府市、九州国立博物館などによる実行委員会が計画し、ももクロが所属する芸能事務所「スターダストプロモーション」が主催する形で開かれる。報道によると、お膝元の太宰府市の市民団体が「市が関わる行事で、なぜ男性限定なのか」と問題視して、市の男女共同参画推進条例に基づいて苦情を申し立てた。
申し立てを受け、太宰府市が実行委員会に対して、コンサートの名称変更と、性別を限定しないチケットの販売を申し入れる事態となっている。はたして、ももクロの「男性限定ライブ」は、法的に何か問題があるのだろうか。作花知志弁護士に話を聞いた。
●男性に限定する「合理的理由」はあるのか?作花弁護士は「多様な要素を含む問題ですが,市が実行委員会に入っている点や、特別史跡での公演を認めた点を重視して、憲法違反とされる可能性があると考えます」と述べる。なぜ、そう言えるのか。根拠として、3点をあげる。
「1つめは、『性別』による差別を禁止した憲法14条です。そこには、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない』と書かれています。
2つめは、地方自治法244条3項。そこでは、『普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない』と規定しています。
そして最後に、太宰府市が制定した男女共同参画推進条例の存在などからすると、男性観客限定で行われるコンサートに行政が関わりを持った点が、それらの法規範に違反すると評価される可能性があるからです」
ただ、他のアーティストでも男性限定、女性限定のライブを開催することは珍しくない。今回の「男祭り」に限らず、性別限定のライブ開催そのものにも問題があるのだろうか。
「機械的に申込者にコンサートホールを貸し出すような『純粋に民間が行うコンサート』と、市が入るなどした実行委員会がコンサートの実行に関わる場合では、評価は異なるように思います。
この事件が訴訟になるとすれば、コンサートに行けなかった女性が行政に対して慰謝料を請求する訴訟や、公金が支出されている場合にはその支出の違法性を争う住民訴訟などが考えられます。仮にそうなった場合、さきに挙げた法規範が適用されるとすると、行政は男性に限定する『合理的な理由』を証明する必要があります。
さらに行政は、そのように『男性に限定すること』が、性同一性障害の方のような性的マイノリティの方の人権を侵害しているのではないか、という疑問にも答える必要があります。性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律も、やはり行政を拘束する法規範だからです」
作花弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/