「三菱鉛筆」は三菱グループ? 立大・西谷教授の「不買運動」発言に批判殺到
フランス哲学者である立教大学の西谷修教授が、鉛筆やペンなどを製造販売する「三菱鉛筆」を三菱グループの一員と誤った情報を発信し、批判の声が寄せられている。
三菱グループといえば、銀行・証券に保険、鉄鋼・金属、エネルギーや化学、繊維、精密機器、電気機器、不動産、食品......とあらゆる業種がそろう、旧三菱財閥の流れを汲む一大企業グループ。菱形を3つ組み合わせたシンボルマークの「スリーダイヤ」とともに、知らない日本人は少ないだろう。
三菱鉛筆は「とんだ風評被害だなwww」
発端は、ジャーナリストの岩上安身氏が、西谷修教授の発言をツイートしたこと。岩上氏はツイッター(2015年9月17日付)に、
「昨日、西谷修教授は『(防衛産業を抱える)三菱のものは明日から鉛筆一本買わないことが大事!』と演説した。徹底した不買運動や落選運動など、これからの日常の運動こそが肝心」
と書き込んだ。
岩上氏自身も、西谷教授の考えを支持していることがうかがえる。
西谷教授は安保法案に反対の立場をとり、国会前でSEALDsとともにデモ活動に参加もしている。防衛産業の一角を占める「三菱グループ」の息がかかる商品を買わない、買いたくないといった考えを持っているのだろう。
「鉛筆」を持ち出したのも、学生らになじみ深いことがあったかもしれない。
とはいえ、三菱鉛筆は「三菱」を冠に、商標には「スリーダイヤ」を使ってはいるものの、三菱グループの一員ではない。三菱グループが株式を持ち合っているようなことはなく、人的関係もないようだ。
インターネットには、
「三菱鉛筆にとっちゃとんだ風評被害だなwww」
「これは恥ずかしい。鉛筆の三菱がグループじゃないことくらい、誰でも知ってんだろ」
「え、信じられない。教授もジャーナリストもその知識のなさは危険」
「三菱鉛筆はまったくの別会社なんだけど...」
「ギャグにしても無責任すぎる。これはりっぱな業務妨害罪でしょ」
と、大顰蹙を買った。西谷教授への批判と、呆れぎみの声が入り混じって殺到している。
「スリーダイヤ」は三菱鉛筆が発祥だった
おそらく西谷修教授のように、多くの人が勘違いしているのは「三菱」鉛筆の名前と、商標の「スリーダイヤ」に原因があるのだろう。
文房具屋さんドットコムによると、三菱鉛筆の「スリーダイヤ」の由来は1903(明治36)年に遡る。三菱鉛筆は、眞崎仁六氏が「眞崎鉛筆製造所」として東京・四谷で創業。「スリーダイヤ」は、その眞崎家の家紋である「ミツウロコ」をアレンジして、同年に商標登録したと有価証券報告書にも記録されている。
どうやら、三菱グループよりも早く、「スリーダイヤ」を「三菱」鉛筆の商標として登録していたようだ。
ちなみに、商号については1952(昭和27)年に「三菱鉛筆」に変更した。
とはいえ、三菱鉛筆が三菱グループの一員と思っていた人は案外少なくないのではないか――。三菱鉛筆によると、「たしかにそう(三菱グループ)でないことを知らない人も少なからずいると思います」という。「ただ、誤解されたり、思い違いされたりしたことで、これまで業務などに影響があったことはありません」という。
今回、ツイッターなどで「不買運動」の呼びかけが拡散されたことについても、「今のところ販売などに影響はありません」と話している。