肉をさらに美味しくしてくれるのが、タレだ。
醤油、塩、味噌……店の秘伝が詰まったタレが評判の名店を紹介しよう。



セットの一例。希少部位などは日によって変わる。
フルーティな醤油ダレが赤身肉のコクを引き立てる『焼肉 くにもと 新館』

浜松町


箱入りの肉セットが美しい。

「肉の赤身のとろけるような旨さを知ってほしい」というくにもと新館では、36ヵ月以上肥育された黒毛和牛を厳選して提供。サシが細やかな肉は、赤身にコクがあり、ふくよかな甘さを含んだ和牛の香りが鼻に抜けていく。安易に脂の旨みに頼らない、本当の肉好きに愛される肉といえる。

自慢の肉の美味しさを際立たせるために編み出したのが、デリケートなつけダレ。野菜やフルーツ、そしていくつかの企業秘密と一緒に1日ほど寝かし、自然な甘みを引き出している。ひとくち舐めてみると、フルーティでクリアな味わいが広がり、最後にほのかな酸味がやさしく引き締めてくれる。

シンタマのように脂がのった赤身肉はこの店の真骨頂。その肉を焼いて、このつけダレをつけると、そのまま食べるよりもはるかに肉の甘み、旨みが増す。まさに感動的だ。

「肉を食べたいときに来る店でありたいんです」という店主の国本さん。一人前200g以上ある厳選肉のセットに、そして醤油ダレに、その気合がみなぎっている。こちらも心して、その美味しさを楽しみたい。




透き通ったお出汁は、肉を洗うように浸して食べる
京都からやってきた「お出汁」で食す焼肉
『焼肉の名門 天壇 赤坂店』

赤坂見附


2014年7月に赤坂店がオープンした京都の名門『天壇』は、秘伝のつけダレが有名。「お出汁」と呼ばれる、黄金色に透き通ったタレは、牛コツからとったスープをベースにしている。

透き通ったこのスープは本店のみで作られる秘伝の味。東京の支店にも、京都から毎日作り立てが届けられ、それを本店のレシピ通りに、薄口醤油やお酢などで味をととのえて仕上げている。これが、思わずそのまま飲みたくなるような、品のよい爽やかな味わいなのだ。

「お出汁をくぐらせて完成させる焼肉です」と店長の三坂さん。きれいにサシが入った牛肉を焼いて、お出汁にくぐらせると、余分な脂が洗われ、そこにお出汁の旨みが染みる。

席についたら真っ先に頼みたいのが、芯の赤身だけを薄切りにしたロース。そして同じ部位をもっと薄く切って重ねたミルフィーユロース。こちらは重ねた隙間に、お出汁が絶妙に浸透する仕組みになっている。

赤身の味が濃いロース、お出汁のまろやかさを吸ったミルフィーユロースという、同じ部位で異なるふたつの味が愉しめるというわけだ。
京都食文化の奥深さは、焼肉にも及んでいたと思い知る。


定番の醤油ダレ&コクと香りの味噌ダレは次へ



赤身肉は焼きしゃぶの要領で炙り焼きにしてごまダレで食べるのが同店のイチオシ!
上質な肉にこそタレも工夫する
『赤身焼肉 ホルモン処 肉萬』

浜松町


サッと炙ること約6秒! ほどよく火が通ったイチボをごまダレにくぐらせたら、一気に口の中へと押し込むべし。薄く大きなカットには、ごまダレとの絡み具合が計算し尽くされている。とろけんばかりに柔らかな肉を噛みしめれば、ごまの香りと脂の甘みが口中に広がる。

「タレとしては変化球ですが、焼肉を食べたという満足感を残すため、ノーマルな醤油ダレやコチュジャンも使って仕上げています」とオーナーの片瀬真一さん。確かにこのごまダレ、サラリとして肉に絡み過ぎず、甘くないため脂の少ないロース系の肉の旨みをガツンと引き出す。
古民家を改装した趣ある同店は、部位もカットもタレも多彩なのが特徴。初めての味わいに会えるかも。




厳選赤身肉の塊焼き150g 。塩やわさび、特製スパイスなどお好みの味で
極上肉と熟成ダレのマリアージュ
『SATOブリアン にごう』

阿佐ヶ谷


肉マニアが集う阿佐ヶ谷の人気店の2号店、その名も『SATOブリアン にごう』。この店のテーマはずばり“塊肉”だ。

「肉はやはり塊で焼いたほうが、旨みが中に凝縮するので、断然おいしい。焼いているシーンを見るだけでも、テンションが上がりますよ!」

そう語る店主・佐藤明弘さんのイチオシの部位は、洒落を効かせた店名からも分かるように、もちろんシャトーブリアン(ヒレ肉の中心)。この部位の最上品を提供するために店を開いたという。牛肉のいろんな部位の中でも「赤身の質といい、サシの入り方といい、他の部位とはひと味違う孤高の味わい。まさにKING OF BEEFです」と熱く語る。

シャトーブリアンの焼き方は驚くほど繊細ゆえ、佐藤さんや店のスタッフが担当。250gほどの塊肉を約20分間、火加減を3段階で調整しながら、表面がカリッとなるまで焼き、途中、ヒマラヤ産岩塩の板を敷いて、ほんのり塩味を染み込ませる。客は肉の焼き色や炎とともに、香りや音も楽しみながら、期待値を最大限に高めるというわけだ。

焼き上がった肉に添えられるのは、通称“ブリダレ”なる醤油ダレ。使用する熊本の溜まり醤油は、シャトーブリアンに合う味わいを長年探し求めた末に辿り着いたという一品だ。

この醤油ににんにくを入れて3カ月熟成させ、バターと黒こしょうでアクセントをプラス。塊から滲み出るリッチな味わいの肉汁に、コクと深みをもたらしてくれる。さらに、それをご飯とともに食べる“ブリ飯”にすれば、誰もが思わず唸ること間違いなし。

「うちに来てブリ飯を食べなかったら犯罪です(笑)」と佐藤さん。珠玉の醤油ダレを纏った極上肉とごはんという、頬をとろけさせる危険な組み合わせをぜひご堪能あれ。




名物プリプリホルモンは、大きくカットした新鮮なホルモンで食べごたえ十分
高級店の味をリーズナブルに
『焼肉伝説 肉衛門』

亀戸


こちらのお店は、銀座で高級店として人気を博す『韓流 安歡(アンファン)』のカジュアル店。予算一人約1万円という接待仕様の銀座とは異なり、こちらは肉を味わうことに特化したシンプルな店構え。焼肉メニューは銀座とほぼ同等でありながら、予算¥4,000程度とかなりお手軽に食べられる。

霜降りの厚切り肉の美味しさを引き立てるつけダレは醤油ダレ、味噌ダレ、塩の3種類。九州産の味噌を用いた味噌ダレは、ピリ辛でスパイシー。霜降り肉をよりまろやかにするから、酒にもごはんにも合う。自腹でも気軽に行ける気安さも手伝って、思わず足繁く通ってしまうかも?!


良質な肉をさらに引き立てる塩・塩ダレは次へ



シンシン(200g)
塩が演出する魅惑の肉
『トウカ ハナレ』

人形町


芝浦食肉市場から仕入れるA5雌牛の、さっぱりとした赤身の塊肉。炭火の上で表面に網目模様の焼き色が付き始めると、七輪から煙とともに香ばしい匂いが立ち上る。肉汁と肉の旨みがギュッと閉じ込められ、じわじわと届く炭火の熱に美味しさを増す。焼肉というよりステーキかと思われるそれは、名物・俺の肉だ。

『トウカ ハナレ』は、近隣の焼肉店・燈花がプロデュースした、ホルモンとワインがメインのバルスタイルという新業態。認可取得により提供できるユッケやビストロ風ホルモン料理などもそろい、早くもビジネスマンからカップル、家族客など幅広い客層に支持されている。

同店では、長年肉を見極め続けてきたオーナーが、これはと思った赤身を厳選仕入れ。上質な素材の旨みを豪快にほおばれるよう、200g以上の塊で提供をしている。

下味は岩塩を軽くまぶす程度。じっくり焼き上げる間に塩味が浸透し、肉の旨みを引き立てる。食べる際、香り贅沢なトリュフ塩や爽やかな辛みの茎わさびをオーダーして共に口に運べば、ビールにもワインにもごはんにも合う美味しさが広がる。




近江牛と呼べるのはA4以上のみ。赤身の柔らかさ、旨さは感動もの
甘みのある天然塩で味わう肉の旨み
『近江牛肉店』

新橋


近江牛専門の精肉店がイートインスペースを併設・開業し、精肉販売と同程度の低価格で焼肉が食べられるのがこのお店。なかでもロース、シンシン、カイノミなど赤身肉5〜6種を一切れずつ盛り合わせた赤皿は、原価率7割を超える採算度外視の目玉商品だ。「飼育数が少なく、関東では珍しい近江牛のおいしさをもっと知ってもらいたくて」とオーナー。

その脂は香り豊かでしつこくないのが特徴。ほどよくサシの入った肉は、細かな部位ごとにすべて手切りで提供される。「さっぱりとした味わい、部分ごとの肉と脂の味の違いを感じて欲しいので下味なし。お好みで塩かわさび醤油をどうぞ」大粒の天然塩は微かに甘く、そのままでも美味しい肉の旨みを引き立ててくる。


塩・塩ダレで味わうのがオススメの焼肉店、続きはこちら



極上ハラミはサッと焼いてそのまま、またはレモンで。ピリ辛のネギムンチ(奥)を巻いても美味。
やみつきになる至高の塩ダレ
『黒毛和牛専門店 精香園』

田町


まだ焼肉と塩の組み合わせが珍しかった1970年の開店当初から、「塩ハラミといえばここ」との呼び声高い名門である。

もともとタンのために考案された塩ダレだが、あっさりしていながら旨みをたっぷり含んだその塩ダレで「他の肉も食べてみたい」という客の一言をきっかけに、塩ハラミはリピート必至の人気商品となった。

塩とごま油をベースににんにくなどを使って作られる塩ダレは、それ自体が美味しい。だが、同店の名物が素晴らしいのは、塩ダレと厳選された肉の味とが相まっていっそう旨くなるという点だ。

創業以来、肉はA5和牛を貫き、そのとき最良のものを仕入れる。松阪牛のこともあれば、但馬牛や米沢牛などの日もある。それを、塩で食べさせる分のみ、少し熟成させて旨みと味わいを濃くする。塩で食べると肉の味が舌に素直に伝わるからだ。熟成された肉はより柔らかくジューシーになり、さっぱりした塩ダレとマッチする。とりわけ脂がしつこくないハラミなら、いくらでも食べられる気がしてくる。

「素材の美味しさだけに頼らず、手間をかけてお客様を喜ばせる」という重光オーナーの姿勢が伝わってくる傑作としか言いようがない。




脂の旨さが堪能できるギアラ(左)と角切りで食感を強調したハツ
まろやかな「海人の藻塩」が旨みを引き出す
『ホルモン焼と焼酎 よねきち』

国立


国立エリア屈指の人気を誇る同店。店主・高久龍太郎さんが吉祥寺の名店『ホルモン酒場 焼酎家 わ』の味を継ぎ、暖簾分けで独立した店だ。

鮮度に自信があるから、ホルモンは素材の味を楽しませる塩のみで提供。とがった塩辛さがない藻塩を使い、部位ごとに異なる味わいを引き立てる。たとえばギアラの脂の甘みやハラミのコク、噛むほどに染み出す豚ガツの独特の味わいが、口当たりマイルドな藻塩の穏やかな塩みでグッと増す。仕上げにたらすオリーブオイルは、風味だけでなく、動物性の脂の消化を助ける心遣いだ。

国立駅から徒歩15分ほどの距離をものともしないファンは多く、訪れる際はあらかじめ電話(予約)を入れておくのがおすすめだ。