「ドリルで穴」証拠隠滅を図った小渕優子議員が墓穴
総選挙で大勝し、「禊は済んだ」といわんばかりだった小渕優子・前経産相に、とんでもない証拠隠しが発覚した。東京地検特捜部が2013年10月、後援会の小渕優子事務所などを家宅捜索した際、会計書類などが入ったパソコンのハードディスクが破壊されていたことが判明。手口は、ハードディスクにドリルで穴を開けるという乱暴なものだった。
地方議員へ資金流出!? もっと危ない事件の証拠封じか読み取りを不能にしたという意味で証拠隠滅は明白だが、これほど特捜部をバカにした被疑者は聞いたことがない。
小渕事務所では、観劇会の収支の不一致や不記載が発覚した際、
「責任は私にある」
と、元秘書で前群馬県中之条町長の折田謙一郎氏が名乗り出て潔いところを見せ、小渕氏は「捜査には協力するように指示している」と述べていた。ところが、その対応は全てウソだったことになる。
特捜部の捜査は、現在本格化しており、政治資金規正法違反容疑での立件が確実視されている。
まず、任意の事情聴取の段階で、折田氏が“自白”していること。次に、不明朗収支や不記載の金額が大きく悪質なこと、などからだ。
ただ、責任者の折田氏が否認に転じるようなことがなければ、既に町長は辞任して制裁を自らに下し、逃亡する恐れもないことから「在宅起訴」と見られていた。
ところが、「ドリルで穴」は、いかにも挑戦的だ。特捜部の捜査に備えたもので、政治資金規正法違反以外の、例えば系列地方議員への資金支出など、もっと危ない別の事件につながるものが隠されていたのではないか。
それだけに、ハードディスクに入っていたものは何か、それは誰の指示で壊されたのか、コピーはどこかに残されていないか――などが、今後、徹底的に調べられる。
元秘書の逮捕は人身御供ではないのか当然、小渕氏自身へと捜査は及ぶ。
現段階で、小渕氏の刑事事件を問うのは難しい。小渕氏は政治団体の代表だが、政治資金規正法は、
「会計責任者の選任と監督について相当の注意を怠った時」
と、代表の刑事責任の範囲を定めているからだ。
折田氏が、「私が責任者」と名乗り出たのは小渕氏を守るためであり、小渕氏も「任せていたので知らなかった」と述べている。
「折田逮捕」となっても、「知らなかった」というカベを突破するのは難しいが、政治家には倫理的社会的責任もある。
ベビー服を購入、実姉の高級ブティックから高額商品を買いながら、「知らなかった」で通るのか。元秘書逮捕(起訴)は「人身御供」ではないのか。ハードディスクを破壊するほどのデータとは何か、といった批判は避けられず、説明責任を果たせないまま辞職に追い詰められる可能性は十分にある。
伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。最新刊『黒幕: 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)が好評発売中。ほか、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数