日本LGBT市場でゲイビジネスが不発なワケ(前編)
【ゲイリーマン発 日本のリアル】
どうも、英司です。いろいろあった2014年もそろそろ終わりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は、ここ数年にわかに盛り上がりを見せているLGBT市場の中の、ゲイをターゲットとした「ゲイビジネス」について、ゲイ当事者の目線から考えてみたいと思います。
日本の「LGBT市場」論に感じる違和感2010年くらいを境に、東洋経済やダイヤモンド等を中心としたビジネス誌が積極的にLGBT特集を組むようになり、それに付随する形で「LGBT向け●●」という商品やサービスの開発に挑戦する人たちも現れました。
ただ、こうした「LGBT専用」を謳ったもので、アダルト系を除いて大きくマネタイズに成功した例は、まだほとんど見ることはありません。
実際、こうした経済誌のレポートや記事を目にしても、当事者としてはどうもピントのズレた印象を受けています。今回は、ここに生じている「違和感」の正体を探ってみたいと思います。
LGBT市場はブルーオーシャンなのか?日本におけるLGBTを自覚する人口の割合は約5%強で、各種経済誌やシンクタンクによると、日本のLGBT市場は約6兆円前後の規模になるという試算が算出されています。
年間6兆円と言えば、ちょうどアルコール飲料の市場と同規模。そう考えると、なかなかの巨大市場であることが伺えます。
このうち、筆者の属性であるゲイに関して言えば、一般的には何歳になっても独身男性と同じような金銭感覚ということになりますから、仕事でキャリアを積んで収入が上がっても、本来既婚男性が子どもへの養育に充てるお金を、ファッションや旅行、カルチャー、美容等の自己投資へかける傾向があり、この可処分所得の多さが、各種経済誌やマーケッターを熱くさせた原因の一つと考えられます。
「日本のLGBT市場は6兆円」
この調査結果が発表され、まるで埋蔵金を見つけたかのごとく、この巨大なブルーオーシャンを狙った資本の動きが活発化。LGBTの中でも特にお金の臭いがした(?)ゲイにターゲットを定め、様々な分野において「ゲイ専用」とか「ゲイ向け」のなんちゃらと言う非アダルト系サービスが生まれていきました。
ゲイは都合の良いお客さんではなかった可処分所得が同年代の既婚男性より高く、ファッションやアート、カルチャーの分野にかけるお金も多いゲイというのは、商売をする側からは非常に良いお客さんのように写るのは当然のこと。だから、「ゲイ専用●●」なんていうものを作ったら、すぐに多くのゲイたちが飛びつき、支持され、多額の儲けを出せると考えるのも無理はありません。
それなのに、これらのサービスの多くは多額の儲けはおろかゲイ業界ではあまり話題にすら登らずに消えていってしまいました。
「ターゲットも明確に定めて、広告やPRもきちんと戦略を立ててやったのに、どうしてダメだったのか……」
こう頭を悩ませるPR担当者やマーケッターも多かったと思います。ただ、これには根本的な部分で認識に誤りがあったのではないでしょうか。それは単純明快で、日本のLGBT市場は決して巨大なブルーオーシャンではなかったからだと、筆者は考えます。(後篇に続く)
著者プロフィールゲイライター
英司
東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)
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