12月8日から駅構内や車内に掲示される「暴力行為防止ポスター」。その発生を未然に防ぐため、メッセージをストレートに伝えている(資料:日本民営鉄道協会)。

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しばしば発生する鉄道係員への暴力行為。日本民営鉄道協会が発表したその2014年度上半期における統計によると、その発生契機で最も多いのは非常に想像しがたいものでした。

想像が不可能な最も多い暴力のきっかけ

 日本民営鉄道協会が、2014年度上期の鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について発表しました。大手民鉄16社で2014年4月から9月までの半年間に起きたものの集計で、対前年同期より15件多い125件が発生しています。「大手私鉄」とは東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄です。

 なぜそうした暴力行為が発生してしまうのでしょうか。注意したら逆上した、乗客同士のけんかに巻き込まれたといったものなら、想像はしやすそうです。しかし最も多いきっかけは、想像ができないものでした。なぜなら理由が「理由なく突然に」だからです。

 2014年度上期において発生した鉄道係員に対する暴力行為125件のうち、その契機で最も多かった「理由なく突然に」は43件で34%。それに30件24%の「酩酊者に近づいて」、17件14%の「迷惑行為を注意して」、10件8%の「けんかの仲裁」が続き、「その他」が25件20%を占めています。

 2年前、2012年度上期の同じ集計では、「理由なく突然に」と「酩酊者に近づいて」が共に31件26%でトップ。「迷惑行為を注意して」が24件21%で3位です。

 昨年、2013年度上期の同じ集計では、「理由なく突然に」が29件26%でトップ。そして2位「酩酊者に近づいて」が28件25%、3位「迷惑行為を注意して」が26件24%です。

 こうしてみると「理由なく突然に」は例年多いことが分かりますが、2014年度上期に限っては、他の契機と比べその割合が突出しました。

 はたしてどうやって「理由なく突然に」、暴力事件がおこるのでしょうか。にわかに理解できませんが、日本民営鉄道協会によると「改札口付近でお客さまが大声を出しながら改札担当の係員に掴みかかろうとしたため、他の係員と引き離そうとしたところ、頭を殴られて負傷した」という事例があるそうです。発生は火曜日の夜17〜22時の時間帯で、場所は改札口。年齢は60代で飲酒していました。

加害者で最も多い年代は「60代以上」でも

 2014年度上期において、鉄道係員に対する暴力行為が最も多く発生した場所は「改札」で47件38%。続いて「ホーム」40件32%、「車内」17件13%、「通路」9件7%、「階段」2件2%、「その他」10件8%となっています。

 加害者の年齢で最も多いのは「60代以上」の26件21%。そして「40代」25件20%、「30代」21件17%、「20代」19件15%、「50代」15件12%、「10代」7件5%、「不明」12件10%と続きます。

 ただ総務省統計局が発表した2013年度10月のデータを元に、10歳から69歳までの人口を年代別に算出したところ「10代」は12.7%、「20代」は14.0%、「30代」は17.8%、「40代」は19.3%、「50代」は16.5%、「60代」は19.6%となっており、加害者が多い年代は人口も多い傾向がうかがえます。

 さてこうした鉄道係員に対する暴力行為について、その最も多い発生の契機は「理由なく」という漠然としたものでしたが、ひとつ、決定的な数字が出ています。「加害者の飲酒状況」です。全125件のうち、「飲酒あり」の場合が90件で72%を占めています。

噛みつかれ、殴られ、蹴られる鉄道員

 日本民営鉄道協会によると、鉄道係員に対する暴力行為の具体的事例として以下のものがあるそうです。

●乗車券を提示せず有人改札を通過しようとしたため、呼び止め改札付近で確認をしていたところ、加害者が暴れ出し腕に噛みつかれるなどした。【日曜日、深夜(22時〜終電)、20代、飲酒あり】

●終着駅にて車内で寝ていたお客さまを起こそうとしたところ、突然胸ぐらをつかまれた上、顔を殴られて負傷した。【日曜日、夜(17時〜22時)、40代、飲酒あり】

●改札内でお客さま同士のトラブルが発生し、駅係員が制止しようとしたところうち1人から殴る蹴るの暴行を受け負傷した。【日曜日、深夜(22時〜終電)、不明、飲酒あり】

 日本民営鉄道協会を始めJR各社など鉄道事業者は2014年12月8日(月)から共同で、暴力行為の発生防止を目指すポスターを駅や車内に掲出します。「暴力は犯罪」というタイトルでストレートに呼びかけ、「わかりやすく伝えると同時に、社会的に許されない行為であることを強調し、暴力行為を未然に防ぐことを念頭に制作」したそうです。

 また合わせて「酔っていたでは許されない」というメッセージによって、「いかなる状況であろうと暴力は絶対に許されない」ことを鉄道業界が結束して強く訴えるとしています。