放送作家・藤井青銅さんに聞く「ゆるパイ」と「ラジオ」の話。(後編)
新刊JPニュースで2回にわたってインタビューを配信した『ゆるパイ図鑑』(扶桑社/刊)著者で、作家の藤井青銅さん。実は放送作家としても活躍中で、ラジオ好きならば知らない人はいないというほどの人物なのだ。
現在は「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)に構成作家として番組制作に加わっているほか、ラジオ以外にも書籍『ゆるパイ図鑑』の執筆、47都道府県1県ずつテーマにした新作落語を作る「d47落語会」を展開するなど、活動はとにかく幅広い。
そんな活動の原動力はどこにあるのか? 一体どんなことを考えているのか? もっとその頭の中を知りたい! というわけで、今回は特別企画として、藤井さんと熱狂的ラジオフリークの株式会社オトバンク社長・久保田裕也の対談が新刊JP上で実現! 「ゆるパイ」と「ラジオ」がクロスオーバーするトークが繰り広げられた。
今回はラジオの話が詰まった後編だ。
(記事・構成:金井元貴/新刊JP編集部)
■輪を広げる「ゆるパイ」というコミュニケーションツール
久保田:僕がいつも感じるのは、ラジオ番組のイベントに行くと、リスナーたちの熱量が他のイベントとまったく違うんですよ。すごく熱いんです。
藤井:その話でいうと、「オードリーのオールナイトニッポン」で9月に5周年のイベントをするんです。
久保田:「史上最大のショーパブ祭り」ですね!
藤井:場所が東京国際フォーラム・ホールAで、キャパシティは5000人ですよ。そして、オードリー。しかも、東京国際フォーラムを使うということは、チケット代が高くなってしまうんです。どうしても6000円を超えてしまう。そこを抑えて5800円にしてもらったのですが、それでも5800円ですからね。「本当にお客さん来てくれるかな?」って、発表時は大不安なわけです。オードリー本人たちも不安で、「大丈夫?」って言っていましたから。
テーマを「ショーパブ」にして、第一次の先行予約のときに、出演者の一部を発表しました。そのとき、名前を出したのが、西城秀樹のものまねをしているバーモント秀樹。
久保田:バー秀!
藤井:そう(笑)この番組でさんざん使い倒しているショーパブ芸人。あと、ビトタケシというビートたけしのものまね芸人。もう名前からしてショーパブですよね。そしてオードリーの若林・春日。
その第一次の先行予約で「このセコい人たちで5000人を埋めるという暴挙なんだ。助けてほしい」という発表をしたんです。リスナーはそれを面白がってくれるはずだと思っていたので。でも、実際はドキドキですよ。どれだけ人が集まるのか分からないですから。
いざ蓋を開けてみたら、ニッポン放送のイベントページが一時サーバーダウンするくらいアクセスがあったんです。第一次先行予約のときは、一晩かそれくらいで用意していた枚数が埋まって、抽選。でも、予約が確定した後にお金を払うシステムだから、まだどれだけ入金をしてくれるかわからないわけです。あの3組に5800円ですよ。普通は払わないと思うけれど(笑)でも、すごく入金率が高かったんです。
久保田:ファンだったら絶対に行きたいですよ。もし、チケット代が倍でもそのイベントは行きたいと思います。
藤井:そう思っていただけるのは、毎週番組を聞いているリスナーたちが、「この人たちはひどいことをしない」と信用してくれているからなんですよね。面白いと確信してくれている。その後、第二次先行予約のときにmiwaちゃんとCzecho No Republicのアーティスト出演者を発表したのですが、そこまでで(チケット枚数の)ほとんどが埋まってしまったんです。だから、一般販売は本当に少ない枚数しか出せなかったですね。
久保田:以前、「オードリーのオールナイトニッポン」で、春日さんが住んでいるむつみ荘の部屋をそのまま再現するという企画を日比谷公園でやりましたよね。2010年5月の「THEラジオパーク」のときだったと思いますが、それも見に行きました。すごい人でしたね。
藤井:そうなのですか! それは嬉しいです。意外に人が来てくれたんですよ。あの企画は僕が提案したもので、最初は「誰が見にくるんだ」って言われたけれど、やってみたらたくさんの方が見に来てくれた。
久保田:その期間、ずっと春日さんが住んでいるむつみ荘の部屋が再現されていた。
藤井:これも面白いことがあって、春日さんの部屋の家財道具を運搬してくれた日本通運の方がすごく協力してくれたんです。まず部屋の写真を撮影して、全部家財道具を運び出して、それから日比谷公園の小音楽堂のステージの上にその再現するのですが、その荷物を運んだ方々に引越しのプロの魂を見せてもらいました。春日さんも若林さんも面白がっていましたね。
それに味を占めて、その年クリスマスの「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」では、「移動むつみ荘」という、トラックに春日さんの部屋を再現して都内を走り回るということもしました。
久保田:その「ミュージックソン」も藤井さん脚本で映画になりましたよね。ラジオが中心になりながら、いろいろな展開に広がっていく。いろんな人が面白がってくれる、その「面白がる」ということが一つの原点なのでしょうか。
藤井:ラジオは基本的にたくさんの人の力が必要なんですね。その原点にあるのが、「面白がること」だと思います。面白がってくれるリスナーをはじめ、「むつみ荘」ならば日通の人、そして「ミュージックソン」のときは映画館の人もそうでした。その面白がってくれる人を増やすことが大事で、自分も面白がることが原点じゃないかなと。
話を『ゆるパイ図鑑』に戻しますけど、「ゆるパイ」ってなんだか面白いじゃないですか。僕はパイ大好き人間ではないけれど、こんなパイがあるんだ!と思うと面白くなる。
久保田:そこからコミュニケーションが生まれますよね。そして輪が広がっていく。
藤井:そうそう。高くても1000円くらいだし、だいたい700円から800円で買えるものですから、それだけでみんなで盛り上がれるって、「ゆるパイ」はすごくいいツールだと思いますね。
(了)
現在は「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)に構成作家として番組制作に加わっているほか、ラジオ以外にも書籍『ゆるパイ図鑑』の執筆、47都道府県1県ずつテーマにした新作落語を作る「d47落語会」を展開するなど、活動はとにかく幅広い。
今回はラジオの話が詰まった後編だ。
(記事・構成:金井元貴/新刊JP編集部)
■輪を広げる「ゆるパイ」というコミュニケーションツール
久保田:僕がいつも感じるのは、ラジオ番組のイベントに行くと、リスナーたちの熱量が他のイベントとまったく違うんですよ。すごく熱いんです。
藤井:その話でいうと、「オードリーのオールナイトニッポン」で9月に5周年のイベントをするんです。
久保田:「史上最大のショーパブ祭り」ですね!
藤井:場所が東京国際フォーラム・ホールAで、キャパシティは5000人ですよ。そして、オードリー。しかも、東京国際フォーラムを使うということは、チケット代が高くなってしまうんです。どうしても6000円を超えてしまう。そこを抑えて5800円にしてもらったのですが、それでも5800円ですからね。「本当にお客さん来てくれるかな?」って、発表時は大不安なわけです。オードリー本人たちも不安で、「大丈夫?」って言っていましたから。
テーマを「ショーパブ」にして、第一次の先行予約のときに、出演者の一部を発表しました。そのとき、名前を出したのが、西城秀樹のものまねをしているバーモント秀樹。
久保田:バー秀!
藤井:そう(笑)この番組でさんざん使い倒しているショーパブ芸人。あと、ビトタケシというビートたけしのものまね芸人。もう名前からしてショーパブですよね。そしてオードリーの若林・春日。
その第一次の先行予約で「このセコい人たちで5000人を埋めるという暴挙なんだ。助けてほしい」という発表をしたんです。リスナーはそれを面白がってくれるはずだと思っていたので。でも、実際はドキドキですよ。どれだけ人が集まるのか分からないですから。
いざ蓋を開けてみたら、ニッポン放送のイベントページが一時サーバーダウンするくらいアクセスがあったんです。第一次先行予約のときは、一晩かそれくらいで用意していた枚数が埋まって、抽選。でも、予約が確定した後にお金を払うシステムだから、まだどれだけ入金をしてくれるかわからないわけです。あの3組に5800円ですよ。普通は払わないと思うけれど(笑)でも、すごく入金率が高かったんです。
久保田:ファンだったら絶対に行きたいですよ。もし、チケット代が倍でもそのイベントは行きたいと思います。
藤井:そう思っていただけるのは、毎週番組を聞いているリスナーたちが、「この人たちはひどいことをしない」と信用してくれているからなんですよね。面白いと確信してくれている。その後、第二次先行予約のときにmiwaちゃんとCzecho No Republicのアーティスト出演者を発表したのですが、そこまでで(チケット枚数の)ほとんどが埋まってしまったんです。だから、一般販売は本当に少ない枚数しか出せなかったですね。
久保田:以前、「オードリーのオールナイトニッポン」で、春日さんが住んでいるむつみ荘の部屋をそのまま再現するという企画を日比谷公園でやりましたよね。2010年5月の「THEラジオパーク」のときだったと思いますが、それも見に行きました。すごい人でしたね。
藤井:そうなのですか! それは嬉しいです。意外に人が来てくれたんですよ。あの企画は僕が提案したもので、最初は「誰が見にくるんだ」って言われたけれど、やってみたらたくさんの方が見に来てくれた。
久保田:その期間、ずっと春日さんが住んでいるむつみ荘の部屋が再現されていた。
藤井:これも面白いことがあって、春日さんの部屋の家財道具を運搬してくれた日本通運の方がすごく協力してくれたんです。まず部屋の写真を撮影して、全部家財道具を運び出して、それから日比谷公園の小音楽堂のステージの上にその再現するのですが、その荷物を運んだ方々に引越しのプロの魂を見せてもらいました。春日さんも若林さんも面白がっていましたね。
それに味を占めて、その年クリスマスの「ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」では、「移動むつみ荘」という、トラックに春日さんの部屋を再現して都内を走り回るということもしました。
久保田:その「ミュージックソン」も藤井さん脚本で映画になりましたよね。ラジオが中心になりながら、いろいろな展開に広がっていく。いろんな人が面白がってくれる、その「面白がる」ということが一つの原点なのでしょうか。
藤井:ラジオは基本的にたくさんの人の力が必要なんですね。その原点にあるのが、「面白がること」だと思います。面白がってくれるリスナーをはじめ、「むつみ荘」ならば日通の人、そして「ミュージックソン」のときは映画館の人もそうでした。その面白がってくれる人を増やすことが大事で、自分も面白がることが原点じゃないかなと。
話を『ゆるパイ図鑑』に戻しますけど、「ゆるパイ」ってなんだか面白いじゃないですか。僕はパイ大好き人間ではないけれど、こんなパイがあるんだ!と思うと面白くなる。
久保田:そこからコミュニケーションが生まれますよね。そして輪が広がっていく。
藤井:そうそう。高くても1000円くらいだし、だいたい700円から800円で買えるものですから、それだけでみんなで盛り上がれるって、「ゆるパイ」はすごくいいツールだと思いますね。
(了)