仕事ができる人ほど、あえて「立ち止まる」?
気づけばいつも終電で、休みの日でもついついスマホで仕事メールをチェックしてしまう。やらなければいけない仕事は次から次へ発生し、いつも何かに追われている……こんな経験はないだろうか? アメリカのとある調査では、休日中にメールをチェックする人は約7割にも上るという(*1)。
誰もがインターネットにアクセスでき、情報が瞬時に伝わる現代では、仕事のスピードを上げることが求められているように見える。しかし、果たしてもっと速くなることが本当に成果に結びつくのだろうか?
■変化の波に溺れないために
実は、世界のリーダーたちはスピードを上げるのではなく、あえて「立ち止まる」ことによって問題に対処すると『優れたリーダーは、なぜ「立ち止まる」のか――自分と周囲の潜在能力を引き出す法則』(ケヴィン・キャッシュマン/著、樋口武志/訳、英治出版/刊)の著者キャッシュマン氏は説く。キャッシュマン氏は30年以上にわたり、60か国以上のCEOおよびエグゼクティブに対してコーチングを行ってきた実績をもつ。ノバルティスの元会長、世界屈指のメーカーの社長、ハーゲンダッツの元CEOなどさまざまなリーダーの実践と自身の研究成果に基づいて、「立ち止まる」ことがいかに成果につながるかを説明している。
疲れを癒すために「睡眠」が必要なように、複雑な状況にあるときは拙速に答えを求めるのではなく、「立ち止まる」ことで進むべき道を見いだせるという。なぜなら、立ち止まって一歩引くことで「内省」することができ、問いかけと耳を傾ける力が強まる。それによって、状況を整理して理解する、目的を明確にする、新しいアイデアを探求する、挑戦するリスクをとる、内外の現状を疑う、ということが可能になるからだ。
著者は、複雑な状況こそ「立ち止まり」が効果を発揮するという。逆にシンプルな状況とはゴールが明確で、やるべき手順がはっきりとしており、問題の解決策も見つけやすい。一方で複雑な状況ではゴールが曖昧となり、対症療法的な施策では問題を解決できない。変化が激しく、グローバル化が進む現代では、複雑な状況が増えている。しかし多くのビジネスパーソンが、変化の波に溺れて自分を見失い、罠にはまってしまうと著者は言う。
■「立ち止まる」コツとは?
これは仕事に追われがちな日本のビジネスパーソンにとって耳の痛い話だ。「忙しいのに立ち止まっている暇はない」と思われるかもしれない。また、現実問題として「どう立ち止まればいいのかわからない」という人も多いだろう。
そこで本書には、内省するための「立ち止まるポイント」が随所に盛り込まれている。「ためらいから行動へ」「会議での役割を問いかける」など、普段は意識しないが、ビジネスパーソンが直面するさまざまなシチュエーションに応じて、どのように問いかければよいかがわかる仕掛けになっている。つまり、読者は読み進めながら、同時に「立ち止まり」を実践できるようになっているのだ。
たとえば「ためらいから行動へ」では、「職場や私生活で、あなたにためらいや不安を起こさせる状況や人物を想像してみよう」と促したうえで、「その状況への自分の反応で、理性的だった部分、非理性的だった部分はどこだろうか」「そこから学びとれることはなんだろうか」という問いを並べている。確かに私たちは仕事上で「ためらい」を感じる場面は多々あるだろうが、その原因を深く探ることは少ないだろう。「ためらいは一歩引いて内外の状況を検討せよという合図なのである。そうすることで、……無駄な対応をすることを避けられる」というくだりには思わずなるほどと膝を打つ。
普段の忙しい日常のなかで本当の自分を見失っていると感じる人、いまの状況に不安や迷いを感じている人や、リーダーとしてチームや組織をどう導けばいいかわからない人は、本書に書かれた「立ち止まり」を実践してみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)
(*1)Xobni Survey: Nearly 70 Percent Of You Will Check Email Over The Holidays(techcrunch)を参照(2014年8月19日確認)
http://techcrunch.com/2011/11/22/xobni-survey-nearly-70-percent-of-you-will-check-email-over-the-holidays/
誰もがインターネットにアクセスでき、情報が瞬時に伝わる現代では、仕事のスピードを上げることが求められているように見える。しかし、果たしてもっと速くなることが本当に成果に結びつくのだろうか?
実は、世界のリーダーたちはスピードを上げるのではなく、あえて「立ち止まる」ことによって問題に対処すると『優れたリーダーは、なぜ「立ち止まる」のか――自分と周囲の潜在能力を引き出す法則』(ケヴィン・キャッシュマン/著、樋口武志/訳、英治出版/刊)の著者キャッシュマン氏は説く。キャッシュマン氏は30年以上にわたり、60か国以上のCEOおよびエグゼクティブに対してコーチングを行ってきた実績をもつ。ノバルティスの元会長、世界屈指のメーカーの社長、ハーゲンダッツの元CEOなどさまざまなリーダーの実践と自身の研究成果に基づいて、「立ち止まる」ことがいかに成果につながるかを説明している。
疲れを癒すために「睡眠」が必要なように、複雑な状況にあるときは拙速に答えを求めるのではなく、「立ち止まる」ことで進むべき道を見いだせるという。なぜなら、立ち止まって一歩引くことで「内省」することができ、問いかけと耳を傾ける力が強まる。それによって、状況を整理して理解する、目的を明確にする、新しいアイデアを探求する、挑戦するリスクをとる、内外の現状を疑う、ということが可能になるからだ。
著者は、複雑な状況こそ「立ち止まり」が効果を発揮するという。逆にシンプルな状況とはゴールが明確で、やるべき手順がはっきりとしており、問題の解決策も見つけやすい。一方で複雑な状況ではゴールが曖昧となり、対症療法的な施策では問題を解決できない。変化が激しく、グローバル化が進む現代では、複雑な状況が増えている。しかし多くのビジネスパーソンが、変化の波に溺れて自分を見失い、罠にはまってしまうと著者は言う。
■「立ち止まる」コツとは?
これは仕事に追われがちな日本のビジネスパーソンにとって耳の痛い話だ。「忙しいのに立ち止まっている暇はない」と思われるかもしれない。また、現実問題として「どう立ち止まればいいのかわからない」という人も多いだろう。
そこで本書には、内省するための「立ち止まるポイント」が随所に盛り込まれている。「ためらいから行動へ」「会議での役割を問いかける」など、普段は意識しないが、ビジネスパーソンが直面するさまざまなシチュエーションに応じて、どのように問いかければよいかがわかる仕掛けになっている。つまり、読者は読み進めながら、同時に「立ち止まり」を実践できるようになっているのだ。
たとえば「ためらいから行動へ」では、「職場や私生活で、あなたにためらいや不安を起こさせる状況や人物を想像してみよう」と促したうえで、「その状況への自分の反応で、理性的だった部分、非理性的だった部分はどこだろうか」「そこから学びとれることはなんだろうか」という問いを並べている。確かに私たちは仕事上で「ためらい」を感じる場面は多々あるだろうが、その原因を深く探ることは少ないだろう。「ためらいは一歩引いて内外の状況を検討せよという合図なのである。そうすることで、……無駄な対応をすることを避けられる」というくだりには思わずなるほどと膝を打つ。
普段の忙しい日常のなかで本当の自分を見失っていると感じる人、いまの状況に不安や迷いを感じている人や、リーダーとしてチームや組織をどう導けばいいかわからない人は、本書に書かれた「立ち止まり」を実践してみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)
(*1)Xobni Survey: Nearly 70 Percent Of You Will Check Email Over The Holidays(techcrunch)を参照(2014年8月19日確認)
http://techcrunch.com/2011/11/22/xobni-survey-nearly-70-percent-of-you-will-check-email-over-the-holidays/