人々はなぜ「うわさ」に魅了されるのか?
口裂け女や人面犬といった一昔前にはやった都市伝説、ネットで大量に出回るデマ、3.11後急激に広まった風評被害、芸能人や友人についてのゴシップ、レストランの口コミなど、人間は「うわさ」が大好きな生き物です。
TVのニュースから井戸端会議まで、誰もがうわさをせずにはいられません。古今東西、人々はうわさに魅了され惑わされ続けてきました。
『うわさとは何か』(松田美佐/著、中央公論新社/刊)は、そんな「うわさ」から人間関係を解き明かそうとした一冊です。
■人と人とをつなぐ「うわさ」の魅力
ゴシップやデマといった呼び方があるように、そもそもネガティブに捉えられがちな「うわさ」。どうして私たちはうわさに惑わされてしまうのでしょうか。
3.11後、「次は○○地方に大きな地震が来る」などといったうわさが目立ちました、地震についての情報は生命の危機に直結しますから、誰もが情報を求め、憶測を言い合います。けれど、危機的な状況でうわさが生まれる理由はそれだけではありません。
「大きな災害がきたらどうしよう」と強く不安を感じていると、自分だけで抱え込むより、誰かに話したいと感じます。そんなときに、同じように不安を感じている相手を見つけられると、それだけで少し気持ちが楽になりますよね。これがうわさの引き金となることもあります。
そして「ここだけの話だけどね・・・」という枕詞とともに伝えられるうわさは、「他人は知らないことを知っている」という優越感と、「その話をあなただけに教える」という仲間意識を生み出すといいます。そういったうわさが持つ効用は、内容よりも「2人が”ここだけの話”をたったいま共有した」という”つながり”を生み、関係性を強めるということにあるのです。
事実かどうか疑わしい話が広まってしまうのは悪意のせいではなく、人との”つながり”や信頼を基盤としているので情報が嘘であっても指摘がしづらいためであることも、ままあるといえるはずです。
■ネット時代の「うわさ」は大量拡散、けれど短命
本書では、ネット上に流れる「うわさ」についても言及されています。
匿名・不特定多数の人々による投稿によって作り上げられるインターネットは、嘘の情報や悪意のあるうわさが流布しやすいと言われています。しかも、現在ではツイッターやフェイスブックで気軽にリツイートやシェアが可能なため、話題性のある情報はその真偽を問わず瞬時に拡散されてしまいます。口頭で交わされるうわさとは比べ物になりません。
けれども、ネットのうわさは足がつきやすいということも事実です。一度発信された情報は半永久的に残りますから、記録をつき合わせればうわさの検証が容易です。しかも、多く拡散されればそれだけ多くの人から根拠のなさや矛盾などが指摘されることになりますので、収束もそれだけ早いといえます。
本書は、まず『デマの心理学』(G.W.オルポート、L.ポストマン)、『流言と社会』(タモツ・シブタニ)、『流言蜚語』(清水幾太郎)の3つの古典を取り上げた後に、著者によるネット時代の「うわさ」についての分析・考察が述べられています。その中でうわさにまつわる事件などが多く紹介されているので大変読みやすくなっています。「うわさ」の正体が何か知っておくことは、情報社会を生きる上で参考になるはずです。
(新刊JP編集部)
TVのニュースから井戸端会議まで、誰もがうわさをせずにはいられません。古今東西、人々はうわさに魅了され惑わされ続けてきました。
『うわさとは何か』(松田美佐/著、中央公論新社/刊)は、そんな「うわさ」から人間関係を解き明かそうとした一冊です。
ゴシップやデマといった呼び方があるように、そもそもネガティブに捉えられがちな「うわさ」。どうして私たちはうわさに惑わされてしまうのでしょうか。
3.11後、「次は○○地方に大きな地震が来る」などといったうわさが目立ちました、地震についての情報は生命の危機に直結しますから、誰もが情報を求め、憶測を言い合います。けれど、危機的な状況でうわさが生まれる理由はそれだけではありません。
「大きな災害がきたらどうしよう」と強く不安を感じていると、自分だけで抱え込むより、誰かに話したいと感じます。そんなときに、同じように不安を感じている相手を見つけられると、それだけで少し気持ちが楽になりますよね。これがうわさの引き金となることもあります。
そして「ここだけの話だけどね・・・」という枕詞とともに伝えられるうわさは、「他人は知らないことを知っている」という優越感と、「その話をあなただけに教える」という仲間意識を生み出すといいます。そういったうわさが持つ効用は、内容よりも「2人が”ここだけの話”をたったいま共有した」という”つながり”を生み、関係性を強めるということにあるのです。
事実かどうか疑わしい話が広まってしまうのは悪意のせいではなく、人との”つながり”や信頼を基盤としているので情報が嘘であっても指摘がしづらいためであることも、ままあるといえるはずです。
■ネット時代の「うわさ」は大量拡散、けれど短命
本書では、ネット上に流れる「うわさ」についても言及されています。
匿名・不特定多数の人々による投稿によって作り上げられるインターネットは、嘘の情報や悪意のあるうわさが流布しやすいと言われています。しかも、現在ではツイッターやフェイスブックで気軽にリツイートやシェアが可能なため、話題性のある情報はその真偽を問わず瞬時に拡散されてしまいます。口頭で交わされるうわさとは比べ物になりません。
けれども、ネットのうわさは足がつきやすいということも事実です。一度発信された情報は半永久的に残りますから、記録をつき合わせればうわさの検証が容易です。しかも、多く拡散されればそれだけ多くの人から根拠のなさや矛盾などが指摘されることになりますので、収束もそれだけ早いといえます。
本書は、まず『デマの心理学』(G.W.オルポート、L.ポストマン)、『流言と社会』(タモツ・シブタニ)、『流言蜚語』(清水幾太郎)の3つの古典を取り上げた後に、著者によるネット時代の「うわさ」についての分析・考察が述べられています。その中でうわさにまつわる事件などが多く紹介されているので大変読みやすくなっています。「うわさ」の正体が何か知っておくことは、情報社会を生きる上で参考になるはずです。
(新刊JP編集部)