甲子園で流した涙は「ムダ」になるのか?

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 「成功するには努力が必要だ」と考えている人は多いはずです。そして、事実、トップクラスの成績を収めているプロスポーツ選手をはじめとした、世で成功している多くの人たちは、不断の努力を実践しています。

 でも、「努力は必ず報われる」と確信している人はどれだけいるでしょうか。
 自分なりに努力をしているのに結果がついてこない。そんな経験をしていると、だんだんと努力というものが「しても意味のないこと」に見えてきてしまいます。
 そんな「努力をすること」に対して一つの答えを出してくれるのが『人生を変える 正しい努力の法則』(増田英次/著、かんき出版/刊)です。本書では努力が「結果を出すこと」以外にもたらす効果について教えてくれます。

■心からの努力が「運」を引き寄せる
 「努力」とは一体なんでしょうか。それをひと言でいうと、自分が達成したいところ、目的地にたどりつくためのツールです。
 つまり、目的地にたどりつくという強い信念、ビジョンやミッションが、努力が結実するために必要不可欠なのですが、実はそれでもまだ足りないと増田さんはいいます。確かに崇高なビジョンを掲げ、どれだけ究極の美しい努力を重ねても、報われないことはあります。

 それは努力が結実するために最後に必要なものが「運」だからです。「運」は、自分ではコントロールできないもの。いつ「運」をつかむチャンスがくるかは分かりません。身を委ねるしかないのです。
 「努力」と「運」は密接に関係しています。強い信念を持って積み重ねてきた「努力」が本当に心から欲するものかどうかが、「運」を引きこむ大事な要素になります。直感に委ねながら、いつチャンスがきてもいいように常に努力をし続ける。それが信念を現実にするために必要なことなのです。

■増田さんが気づいた「本当の努力の意味」
 しかし、それでも努力だけではどうにもならないこともあります。だからといって本当に努力は意味のないものになるのでしょうか。増田さんは、一つのエピソードを通して、「努力」は最終的には結実しなくても、人生に大きな意味をもたらすことを知りました。
 そのエピソードとは、最愛の息子の死です。
 増田さんの息子は生まれながらにして重大な難病を背負っていました。誕生から5ヶ月で人工呼吸器をつける生活になり、医者からは「意識は一生明確には回復しない」と宣告されます。放心状態になった増田さんは多忙な弁護士業務をこなしながら、息子を見守り続けますが、心の底でこうなってしまったことに対して自分を恥じ、責め続けました。
 しかし、ある本を通して、増田さんは息子が生まれてきた意味を見出し、感謝をするようになります。息子が、自分に「もっと成長しないとダメだよ」と激励してくれていると考えるようになったのです。

 人間は試練を乗り越えようとするときに、努力をします。それでも、「運」がわずかに足りなくて成果に結び付かないこともあります。ですが、最も重要なのは、試練に立ち向かうために努力をしているときこそ、人が最も成長している時間です。
 増田さんの息子は3歳10ヶ月で亡くなりましたが、その息子の存在自体が大きな成長の糧になったとこの本で述べています。乗り越えられない、どうにもならないことも、本気で立ち向かうことでその先に、見えてくるものがあるのです。

 今、甲子園では高校球児たちが熱い戦いを繰り広げています。でも、負けた高校は、努力が足りなかったから負けてしまったのでしょうか。それは違うはずです。「運」が足りなかっただけかもしれませんよね。そして、惜しくも負けてしまっても、その甲子園で戦いを挑んでいったという経験は、人生のハイライトのひとつになるはずです。
 「努力なんてカッコ悪い」という風潮もある昨今ですが、本書は今一度「努力」の意味を問い直してみるのに、最適な一冊であるはずです。
(新刊JP編集部)