一躍話題の的になれるお土産“ゆるパイ”の魅力と可能性とは?
夏休みの旅行シーズンまっただ中。旅先で何をお土産にしようか悩んでしまったら、ちょっと注目してみてほしいお菓子がある。それはその土地の名産品とコラボした「パイ」――いわゆる「ご当地パイ」だ。
ご当地パイといえば、浜松市の「うなぎパイ」を思い出す人も多いだろうが、実はこの手の「パイ」が日本のいたるところにある。その中には思わず「えっ」と思ってしまうパイや、まるで味が想像できないパイもあり、よく見てみるととっても「ゆるい」のだ。
そんな、ゆるい「ご当地パイ」を一堂に集めたのが『ゆるパイ図鑑 愛すべきご当地パイたち』(扶桑社/刊)だ。 作家・エッセイストの藤井青銅さんが日本全国から集めた「ご当地パイ」約200を掲載。そのうち、実際に120パイ弱を食べ、94パイを写真つきで紹介している。
今回、新刊JPは「ゆるパイ」の第一人者ともいうべき藤井さんにお話をうかがうことができた。どんな「ゆるパイ」のエピソードが飛び出すのだろうか? 後編をお伝えする。
(新刊JP編集部/金井元貴)
■コミュニケーションのツールに、地域活性化に…「ゆるパイ」の魅力とは!?
――8月3日まで「全国ゆるパイ展」という前代未聞の「ご当地パイ」展示会を渋谷ヒカリエで開催されていましたね。藤井さんはキュレーターをされていらっしゃいました。
藤井:10日間で10000人以上の方にきていただきまして、「そんなに日本人はパイが好きなのか」と思いました(笑)そこでは、30種類くらいのパイを売っていたのですが、やはりちょっと変なパイから売り切れるんですね。「むつごろう入りパイ 干潟あそび」(佐賀県鹿島市/夢創庵中村屋/書籍26ページ)とか。バラ売りがすごく好評でしたね。
また、「どじょうパイ」(松江市/中浦食品/書籍19ページ)も初日で売り切れました。このパイはいわくつきで、パッケージが「うなぎパイ」とよく似ているんです。
このパイをつくっているメーカーは島根県内でも有名な菓子メーカーなのですが、ホームページには「どじょうパイ」が載っていないんです(*オンラインショップには掲載)。でも、今回の企画にご協力いただけましたし、すごく人気が高くて、売れ切れだと聞いてショック受ける方や、「どじょう好きなんですよね…」とおっしゃる方もいました。すごく不思議なパイです。
――また、「全国ゆるパイ展」のトークイベントに、「ゆる」文化の研究をされている方がいらっしゃったそうですね。
藤井:そうなんですよ。宮崎国際大学で教授をされているアメリカの方なのですけれど、非常に日本語が堪能で、「ゆる」文化についての論文も書かれているそうです。その後、その方とメールをやり取りする中で「わび、さび、もえの次は“ゆる”ですか?」と書いてみたら、相手から「そのキャッチコピーをいただけますか!?」と返信がきて(笑)
確かに「ゆる」という概念は面白いですよね。若者文化の中にも「ゆる」が根付いているように思いますし、エンターテインメント業界にも、昔ほどきちっと作っていなくてもいいというところで「ゆる」が浸透しているようにも思います。
「ゆるさ」を笑えること、いじれることって、余裕がないとできないことですから、日本の文化が高くなっているということにもつながるのではないでしょうか。
――藤井さんが考える「ゆるパイ」の魅力について教えていただけますか?
藤井:まずはコミュニケーションのツールになりますよね。お土産として買ってきて、職場や友達に配って、食べてもらって、味がしてもしなくても盛り上がる。それに、パッケージを見ても盛り上がる。話題を提供してくれます。
また、企業の視点でいえば、地方でありながらも全国制覇ができるツールです。僕はこれを「パイ・ドリーム」と呼んでいるのですが、「うなぎパイ」は浜松のご当地パイながら全国に名が知られていますよね。こうしたレベルのパイが日本にもう2つ、3つ登場すると、日本経済を支えられるのではないかと思います(笑)九州北部か広島あたりに一箇所、あとは新潟か東北あたりに一箇所あってもいいですね。全国レベルでヒットしているパイがあって、そこで工場見学ができたり、楽しめる要素があれば、地域経済の活性化にもつながりますよ。
――まさに「パイ・ドリーム」ですね(笑)
少し話は変わるのですが、「日本ゆるパイ愛好学会」というFacebookページで、この本をつくっている段階からその本作りの過程を見せるという試みをされていましたね。すごく新鮮でした。
藤井:この本に限ったことではないのですが、打ち合わせがあった、デザインが決まった、というような出版の過程を皆さんに晒して、楽しんでもらいたいと思っているんです。
それは、実はラジオでそういう作り方をしてきたところがあって、「こういう風になっています」と報告したり、「ハガキはまだ間に合います!」と呼びかけたりして、途中の過程を見せながら、双方向でコミュニケーションができるようにする。そうすると、リスナーが参加意識を持ってくれて、例えば番組からCDを出すときもそれを買ってくれるんです。自分たちも一緒に作ったという空気があるから。
特に今はFacebookをはじめとしたSNSが出てきましたから、以前に比べてその過程を見せやすくなりましたね。
――そういった面も含めて、藤井さんの発想はものすごく魅力的です。どうしてこんなに面白いことを見つけられるのだろうと思うのですが、普段気をつけていることはあるのでしょうか。
藤井:僕自身はそれが普通だと思っているから、意識していることはないですね。「ゆるパイ」についても、こうしたパイが2、3個あることを知り、「これはなんかにおうぞ」と思って探してみたらたくさんあったということですから。
実は結構面白いことって世の中にたくさんあるんです。ほとんどの人が「うなぎパイ」を知っているはずですし、ご当地パイも1つか2つは知っていると思いますが、そこから関連付けて膨らまそうとするところまではなかなかいかないですよね。それが大きな違いなのかもしれません。面白そうなことをつかんだら、ふくらましてみる。そう思いながら、キョロキョロと野次馬のように顔を出せば、面白いことが見つかるのではないかと思いますね。
――最後に、この本をどのようなときに読んでほしいですか?
藤井:これは夏休みの旅行のお供にしていただくと嬉しいですね(笑)また、自由研究のネタにも使ってみてください(笑)
――この本で気になったパイに会いにいくのもいいですよね。
藤井:そこまではしなくてもいいけれど(笑)旅行のときに何かウケのいいお土産がないかなと思ったら、パッと開いて探してみるといいと思います。
(了)
ご当地パイといえば、浜松市の「うなぎパイ」を思い出す人も多いだろうが、実はこの手の「パイ」が日本のいたるところにある。その中には思わず「えっ」と思ってしまうパイや、まるで味が想像できないパイもあり、よく見てみるととっても「ゆるい」のだ。
今回、新刊JPは「ゆるパイ」の第一人者ともいうべき藤井さんにお話をうかがうことができた。どんな「ゆるパイ」のエピソードが飛び出すのだろうか? 後編をお伝えする。
(新刊JP編集部/金井元貴)
■コミュニケーションのツールに、地域活性化に…「ゆるパイ」の魅力とは!?
――8月3日まで「全国ゆるパイ展」という前代未聞の「ご当地パイ」展示会を渋谷ヒカリエで開催されていましたね。藤井さんはキュレーターをされていらっしゃいました。
藤井:10日間で10000人以上の方にきていただきまして、「そんなに日本人はパイが好きなのか」と思いました(笑)そこでは、30種類くらいのパイを売っていたのですが、やはりちょっと変なパイから売り切れるんですね。「むつごろう入りパイ 干潟あそび」(佐賀県鹿島市/夢創庵中村屋/書籍26ページ)とか。バラ売りがすごく好評でしたね。
また、「どじょうパイ」(松江市/中浦食品/書籍19ページ)も初日で売り切れました。このパイはいわくつきで、パッケージが「うなぎパイ」とよく似ているんです。
このパイをつくっているメーカーは島根県内でも有名な菓子メーカーなのですが、ホームページには「どじょうパイ」が載っていないんです(*オンラインショップには掲載)。でも、今回の企画にご協力いただけましたし、すごく人気が高くて、売れ切れだと聞いてショック受ける方や、「どじょう好きなんですよね…」とおっしゃる方もいました。すごく不思議なパイです。
――また、「全国ゆるパイ展」のトークイベントに、「ゆる」文化の研究をされている方がいらっしゃったそうですね。
藤井:そうなんですよ。宮崎国際大学で教授をされているアメリカの方なのですけれど、非常に日本語が堪能で、「ゆる」文化についての論文も書かれているそうです。その後、その方とメールをやり取りする中で「わび、さび、もえの次は“ゆる”ですか?」と書いてみたら、相手から「そのキャッチコピーをいただけますか!?」と返信がきて(笑)
確かに「ゆる」という概念は面白いですよね。若者文化の中にも「ゆる」が根付いているように思いますし、エンターテインメント業界にも、昔ほどきちっと作っていなくてもいいというところで「ゆる」が浸透しているようにも思います。
「ゆるさ」を笑えること、いじれることって、余裕がないとできないことですから、日本の文化が高くなっているということにもつながるのではないでしょうか。
――藤井さんが考える「ゆるパイ」の魅力について教えていただけますか?
藤井:まずはコミュニケーションのツールになりますよね。お土産として買ってきて、職場や友達に配って、食べてもらって、味がしてもしなくても盛り上がる。それに、パッケージを見ても盛り上がる。話題を提供してくれます。
また、企業の視点でいえば、地方でありながらも全国制覇ができるツールです。僕はこれを「パイ・ドリーム」と呼んでいるのですが、「うなぎパイ」は浜松のご当地パイながら全国に名が知られていますよね。こうしたレベルのパイが日本にもう2つ、3つ登場すると、日本経済を支えられるのではないかと思います(笑)九州北部か広島あたりに一箇所、あとは新潟か東北あたりに一箇所あってもいいですね。全国レベルでヒットしているパイがあって、そこで工場見学ができたり、楽しめる要素があれば、地域経済の活性化にもつながりますよ。
――まさに「パイ・ドリーム」ですね(笑)
少し話は変わるのですが、「日本ゆるパイ愛好学会」というFacebookページで、この本をつくっている段階からその本作りの過程を見せるという試みをされていましたね。すごく新鮮でした。
藤井:この本に限ったことではないのですが、打ち合わせがあった、デザインが決まった、というような出版の過程を皆さんに晒して、楽しんでもらいたいと思っているんです。
それは、実はラジオでそういう作り方をしてきたところがあって、「こういう風になっています」と報告したり、「ハガキはまだ間に合います!」と呼びかけたりして、途中の過程を見せながら、双方向でコミュニケーションができるようにする。そうすると、リスナーが参加意識を持ってくれて、例えば番組からCDを出すときもそれを買ってくれるんです。自分たちも一緒に作ったという空気があるから。
特に今はFacebookをはじめとしたSNSが出てきましたから、以前に比べてその過程を見せやすくなりましたね。
――そういった面も含めて、藤井さんの発想はものすごく魅力的です。どうしてこんなに面白いことを見つけられるのだろうと思うのですが、普段気をつけていることはあるのでしょうか。
藤井:僕自身はそれが普通だと思っているから、意識していることはないですね。「ゆるパイ」についても、こうしたパイが2、3個あることを知り、「これはなんかにおうぞ」と思って探してみたらたくさんあったということですから。
実は結構面白いことって世の中にたくさんあるんです。ほとんどの人が「うなぎパイ」を知っているはずですし、ご当地パイも1つか2つは知っていると思いますが、そこから関連付けて膨らまそうとするところまではなかなかいかないですよね。それが大きな違いなのかもしれません。面白そうなことをつかんだら、ふくらましてみる。そう思いながら、キョロキョロと野次馬のように顔を出せば、面白いことが見つかるのではないかと思いますね。
――最後に、この本をどのようなときに読んでほしいですか?
藤井:これは夏休みの旅行のお供にしていただくと嬉しいですね(笑)また、自由研究のネタにも使ってみてください(笑)
――この本で気になったパイに会いにいくのもいいですよね。
藤井:そこまではしなくてもいいけれど(笑)旅行のときに何かウケのいいお土産がないかなと思ったら、パッと開いて探してみるといいと思います。
(了)