昨年9月以来、待望の流れの中での得点…トンネル抜け出した香川真司
文=元川悦子
ブラジル・ワールドカップ初戦のコートジボワール戦(レシフェ)を2週間後に控えた日本代表。アメリカ・タンパで行われた2日のコスタリカ代表とのテストマッチは本番を想定した非常に重要な一戦となった。
序盤から主導権を握った日本だが、前々からの課題であるクロス対応の悪さを露呈し、前半は0−1とリードを許した状態で折り返した。それでも後半から入った遠藤保仁が同点弾を叩き出し、彼らは反撃体制に突入する。その勢いをいち早く結果につなげたのが、エースナンバー「10」をつける男・香川真司だった。
80分、左サイドでボールを持った彼がドリブルで中へ切り込んだ瞬間、柿谷曜一朗は「真司君が得意なプレーなので、自分がしっかり囮になろうと。(本田)圭佑君もスペースを空けてくれたから」とセレッソ大阪同期の盟友の動きを巧みに読んで、パスを受けるや否やリターンを戻した。このワンツーでフリーになった香川は右足を一閃。ゴール右隅にチーム待望の2点目を決める。
彼の日本代表戦のゴールは3月のニュージーランド戦(東京・国立)のPK以来だが、公式戦での流れの中からのゴールは昨年9月のガーナ戦(横浜)まで遡らなければならない。今シーズン、マンチェスター・Uでゴールに見放され、プロ入り初のシーズン無得点に終わった香川にとっては、本当に心の底から待ちわびた一撃だったに違いない。
「流れの中から決まったし、チームとしても2失点目をやられずに守った結果、逆転できた。守ってくれたことはすごく感謝したいですし、もっと早い時間帯にああいう結果を残せるように、次に向けてやりたいです」
「正直、今日はコンディションがあんまりよくなかった。時差ボケもあって、最近眠れていなかったので。ある意味、最悪なコンディションで今日を迎えたのに、意外と動けたということは、メンタル的な準備が大きかったのかなと。練習もやりすぎだと感じていたけど、今になって動きの質やキレにつながっている。それが良かったですね」と香川は嬉しそうに語っていた。
この日は左サイドバックに本職ではない今野泰幸が入ったため、ボールを持った香川へのフォローが足りず、孤立気味になる場面も少なくなかった。それでも彼は徐々に思い切ったシュートやドリブルでの切れ込みを見せるようになる。左サイドのハーフウェーライン付近から一気にドリブルでフィニッシュに持ち込んだチャンスなどは、絶好調だったドルトムント時代を彷彿させた。残念ながらシュートはリーガ・エスパニョーラ屈指の守護神であるケイラー・ナバスに阻まれたが、少しずつゴール前での怖さや迫力を思い出していったようだ。そして後半になって遠藤、岡崎慎司ら主力組が入ったことで、香川のパフォーマンスは一段と活性化され、得点という形につながった。
それだけではない。後半ロスタイムに柿谷が決めた3点目も香川が起点を作った。彼が上げたクロスに岡崎が反応。ここにマークについていたジュニオール・ディアスのクリアが小さくなり、柿谷がすかさず飛び出してダメ押し点を叩き込んだのだ。2006年にプロの門を叩いてから、常にお互いのことを意識し、切磋琢磨してきた柿谷といい連携を随所に見せたことは、両者にとって大きな自信になっただろう。
ただ、あくまで香川が見据えるのは、コートジボワール戦だ。4年前の南アフリカ大会にサポートメンバーとして帯同していた彼は、残された2週間でチームが激変する可能性があることを熟知している。前回と同じ轍を踏みたくないという危機感は非常に強い。
「ホントに大事なのはコートジボワール戦。課題はあるし、絶対に満足してはいけない。彼らはウイングがすごく強力。今回のコスタリカもサイドバックがガンガン上がってきて、数本行かれた場面はあったし、マークの受け渡しがスムーズに行かない場面もあった。相手のレベルがもっと上がれば2〜3本はやられていたかもしれない。しっかりコミュニケーションを取ってやらないといけない」と改めて強調していた。
自分が点を取っても、チームが勝っても、反省を忘れないのが、香川の香川たるゆえん。常に高みを目指すこの男が求めるものはもっともっと高い。その領域に到達した時、彼は日本のエースというにふさわしい働きをブラジルで見せてくれるはずだ。
ブラジル・ワールドカップ初戦のコートジボワール戦(レシフェ)を2週間後に控えた日本代表。アメリカ・タンパで行われた2日のコスタリカ代表とのテストマッチは本番を想定した非常に重要な一戦となった。
序盤から主導権を握った日本だが、前々からの課題であるクロス対応の悪さを露呈し、前半は0−1とリードを許した状態で折り返した。それでも後半から入った遠藤保仁が同点弾を叩き出し、彼らは反撃体制に突入する。その勢いをいち早く結果につなげたのが、エースナンバー「10」をつける男・香川真司だった。
彼の日本代表戦のゴールは3月のニュージーランド戦(東京・国立)のPK以来だが、公式戦での流れの中からのゴールは昨年9月のガーナ戦(横浜)まで遡らなければならない。今シーズン、マンチェスター・Uでゴールに見放され、プロ入り初のシーズン無得点に終わった香川にとっては、本当に心の底から待ちわびた一撃だったに違いない。
「流れの中から決まったし、チームとしても2失点目をやられずに守った結果、逆転できた。守ってくれたことはすごく感謝したいですし、もっと早い時間帯にああいう結果を残せるように、次に向けてやりたいです」
「正直、今日はコンディションがあんまりよくなかった。時差ボケもあって、最近眠れていなかったので。ある意味、最悪なコンディションで今日を迎えたのに、意外と動けたということは、メンタル的な準備が大きかったのかなと。練習もやりすぎだと感じていたけど、今になって動きの質やキレにつながっている。それが良かったですね」と香川は嬉しそうに語っていた。
この日は左サイドバックに本職ではない今野泰幸が入ったため、ボールを持った香川へのフォローが足りず、孤立気味になる場面も少なくなかった。それでも彼は徐々に思い切ったシュートやドリブルでの切れ込みを見せるようになる。左サイドのハーフウェーライン付近から一気にドリブルでフィニッシュに持ち込んだチャンスなどは、絶好調だったドルトムント時代を彷彿させた。残念ながらシュートはリーガ・エスパニョーラ屈指の守護神であるケイラー・ナバスに阻まれたが、少しずつゴール前での怖さや迫力を思い出していったようだ。そして後半になって遠藤、岡崎慎司ら主力組が入ったことで、香川のパフォーマンスは一段と活性化され、得点という形につながった。
それだけではない。後半ロスタイムに柿谷が決めた3点目も香川が起点を作った。彼が上げたクロスに岡崎が反応。ここにマークについていたジュニオール・ディアスのクリアが小さくなり、柿谷がすかさず飛び出してダメ押し点を叩き込んだのだ。2006年にプロの門を叩いてから、常にお互いのことを意識し、切磋琢磨してきた柿谷といい連携を随所に見せたことは、両者にとって大きな自信になっただろう。
ただ、あくまで香川が見据えるのは、コートジボワール戦だ。4年前の南アフリカ大会にサポートメンバーとして帯同していた彼は、残された2週間でチームが激変する可能性があることを熟知している。前回と同じ轍を踏みたくないという危機感は非常に強い。
「ホントに大事なのはコートジボワール戦。課題はあるし、絶対に満足してはいけない。彼らはウイングがすごく強力。今回のコスタリカもサイドバックがガンガン上がってきて、数本行かれた場面はあったし、マークの受け渡しがスムーズに行かない場面もあった。相手のレベルがもっと上がれば2〜3本はやられていたかもしれない。しっかりコミュニケーションを取ってやらないといけない」と改めて強調していた。
自分が点を取っても、チームが勝っても、反省を忘れないのが、香川の香川たるゆえん。常に高みを目指すこの男が求めるものはもっともっと高い。その領域に到達した時、彼は日本のエースというにふさわしい働きをブラジルで見せてくれるはずだ。