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タクシー運転手に目的地を告げて、一息ついたのもつかの間。ふと気づくと、車が目的地と全く違う場所へ向かっていた、なんていう経験はないだろうか。

身の回りの人に聞いてみたところ、「旅先で、全く別のホテルに連れて行かれた」「右折するはずの場所で曲がってくれず、大幅に遠回りになった」など、出るわ出るわ・・・。「運転手が道に迷って、いまどこにいるかもわからないと言われた」というケースもあったし、中にはタクシーの遠回りのせいで、大事な約束に遅れそうになったという人もいた。

このような場合、タクシーの遠回りのせいで余計にかかった運賃を支払う必要はあるのだろうか。また、遠回りのおかげで約束に遅刻したような場合、運転手に損害賠償を請求できるのだろうか。岡田崇弁護士に聞いた。

●理由のない「遠回り」は許されない

タクシーに乗って、乗客が目的地を告げたとき、商法上の旅客運送契約(商法590条)が成立します。そして、旅客運送契約の内容として、タクシー運転手には、乗客を安全かつ迅速・的確に目的地まで運送する義務があると解釈されます」

このように岡田弁護士を説明する。ということは、「遠回り」することは、基本的に許されないのか。

「そうですね。ただし、(1)渋滞や事故を避けるといった合理的な理由があった場合や、(2)通常のタクシー運転手が用いるルートと別のルートを通ることについて、運転手から事前に説明があり、客も承諾した場合などは、遠回りも許されます」

では、理由もなく「遠回り」した場合は、どうなるのか。

「不要な遠回りのせいで余計にかかってしまった運賃については、損害賠償として請求できるでしょう。

運転手と交渉して、余計にかかってしまった運賃を支払わないようにするか、一度支払った上で領収書を受領し、領収書記載のタクシー会社の連絡先に連絡を入れるとよいのではないでしょうか」

では、遠回りのせいで、遅刻してしまった場合は?

「遠回りしたおかげで遅刻したとしても、それによってどのような損害が発生するのかは、個別の事情によって左右され、タクシー運転手が予見するのは困難です。したがって、損害賠償請求をするのは、難しいのではないでしょうか」

岡田弁護士はこのように話していた。

運転手にも個人差があり、道を熟知しているとは限らない。重要な用事にタクシーで向かう際には、しっかりと道を下調べして、変な遠回りをされないように指示を出したほうがいいのかもしれない。

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
岡田 崇(おかだ・たかし)弁護士
大阪弁護士会・消費者保護委員会委員(平成18年・19年度副委員長)、日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会幹事、関西大学法科大学院実務家教員(消費者取引法)
事務所名:岡田崇法律事務所
事務所URL:http://www.okadalaw.jp