題名のない音楽会、まさかの「ノイズ」特集 はしゃぐ「あまちゃん」大友良英、司会者は呆然
日曜朝の老舗音楽番組「題名のない音楽会」(テレビ朝日系)で、「ノイズ・ミュージック」が大々的に取り上げられ、視聴者をあっと言わせた。
「題名のない音楽会だと思って見たらタモリ倶楽部だった」
「今日の題名のない音楽会は神回w」
「大友(良英)さんだけが、きゃっきゃしてて、顔が曇っていく佐渡(裕)さんと、疑問符浮かびまくりの本間アナの異空間が朝から繰り広げられてます」
朝のお茶の間に鳴り響く金属的な轟音
そんな感想がツイッターで飛び交ったのは、2014年4月13日の放送だ。
この日、ゲストとして「あまちゃん」の音楽担当として話題を呼んだミュージシャン・大友良英さんが出演した。大友さんは多くの劇伴音楽を手掛けるとともに、ノイズ音楽の領域で活躍しており、番組では「大友良英を作った3曲」というテーマで、大友さんがおすすめの楽曲を紹介することとなった。
しかし「ノイズ」といえば、多くの人が「雑音」「不快な音」「工事現場にいるよう」と評するような、かなり独特の音楽だ。クラシックを中心とした「正統派」の音楽番組として知られる「題名のない音楽会」とは、まさに「異種格闘技」の感さえある。
果たして、番組が進むにつれてスタジオはかつて見られない独特のムードになっていった。最初に紹介されたジミ・ヘンドリックスの「星条旗」までは司会の指揮者・佐渡裕さん、本間智恵アナウンサーも「確かにこれはかっこいい」とにこやかだったが、続いて高柳昌行・阿部薫「集団投射」の金属的な轟音が響き渡ると、思わず本間アナが、
「もう、始まってるんですよね? これ前奏で、このあとメロディーラインのようなものが出てくるわけでは……ない?」
と質問するなど、早くも置いてけぼりに。一方の大友さんはひたすら上機嫌で、
「地上波の朝からこれがかけられる時代が来たなんて……21世紀ですよ!」
とつぶやきながら、「3曲」どころか次々と持参したCDをかけていく。Sachiko M、非常階段(BiS階段)、インキャパシタンツ、メルツバウ、さらに武満徹、デレク・ベイリーといったラインアップ、さらには大友さん自身による即興演奏に、佐渡さんも何とか自らの音楽との接点を見出そうとするが、中盤以降は逃避するように「お菓子食べよっと」とテーブルの上の桜餅を食べ始めるという、普段の番組ではなかなか見られない光景が展開された。
あえての「共感できない状態」
この温度差は演出などではなかったようで、本間アナのブログでも、
「佐渡さんの微妙な表情からも分かるように、途中から何とも言えない空気が漂い始めます」
と、収録中は2人がひたすらノイズの世界に戸惑う「共感できない状態」(大友さんの番組中の発言)だったことが明かされている。
また番組スタッフブログによれば、大友さんは佐渡さんに「分からないものに変にいいね、って同調しないで下さい。そんなに共感される音楽ではないので」とも伝えていたそうだ。
ある意味「放送事故」すれすれの内容を、しかもスタジオの「共感できない状態」も含めてあえてそのまま放映した番組に、「やっぱ題名のない音楽会は懐が深い!」と、視聴者からは感嘆の声が上がっている。