12人の芝浦工大高、粘った敗戦にも希望を見つけ満足 

5回に2点三塁打を放った明星・鈴木 雄斗君

 毎年、4月に入ると早々に春季東京都大会が始まる。年度替わりでもあり慌ただしい時期だが、新学年になって早々の大会でもある。選手個々の意識としてはフレッシュな印象が強い大会という意識であろう。

 部員12人の芝浦工大高は、八木 久則監督が持ち駒をフルに活用しながら、可能な限りの中での戦いとなった。試合展開としては序盤に2点リードされたのを追いつき、中盤再びリードされながらも、追いすがった。今の状況の中で何が出来るのか、どうすることがいいのか…。全国には恵まれない環境の中で野球をしていくチームが多くある中で、この日の芝浦工大高の戦い方は、そんなチームへの一つのヒントになったのかもしれない。

 明星に一回、二回と1点ずつ入れられた芝浦工大高だったがその裏、二死一塁から7番橋本君が左中間三塁打し、さらに続く島田君が中前打して同点とした。下位打線ながら、いずれも思い切りのいいスイングで、鋭い打球を放っていた。とにかく、1球に集中して思い切りよくスイングしていくというのは芝浦工大高の一つの姿勢でもある。 こうして同点になって、そのまま明星古谷 歩夢君と芝浦工大高の左腕木村君との投げ合いという感じになってきた。お互いに要所を締めていく投球だった。

 試合が動いたのは5回。この回の明星は9番高野君が右前打するとバントで二進、さらに内野ゴロで三塁へ進むと、伊藤太君が中前打して均衡を破った。さらに4番鈴木 雄斗君が三塁線を破る打球が三塁打となり、一塁から伊藤君が生還した。結果的にこれが決勝点となる。

 芝浦工大高として悔やまれるのは7回だ。2点を追うこの回は、島田君、高木君と下位打線の連打で好機を作ると、1死一三塁から2番浅川君の三遊間を破る安打で1点差。さらに、渡辺君も中前へのポテンヒットになって1死満塁。ここで4番浅井君は、いい感じで捉えたかと思った打球だったが、三塁ライナーとなって併殺。芝浦工大高の好機は一瞬にして潰れてしまった。

 

マウンドに集まる芝浦工大高ナイン

 結局、この回の攻防が試合の明暗を分けることになった。

 それでも、「新2年生8人を格としてチームを作っていかな、しょうがないんですよ。だから、代走がそのままリリーフのマウンドに立つことにもなるんですよ。けれども、限られた中でやらないといけないんです。それでも、先発した左(木村投手)も、何で…というくらいに打たれないでしょう。こんなチームだけれども、それでも一生懸命やって思い切りよく振っていくことで、何とかなっていくんですよ」と、八木監督は結果としては残念だったけれども、現状の中での戦いぶりには納得していた様子だった。

 新入生の確保も大事なチーム強化の要素となるのだろうが、「下(系列中学)からは3〜4人、外からも5人くらい入ってきくれそうなので、夏には20人以上のチームになりそうで楽しみにしています」と、早くも夏へ向けて、気持ちもまた新たにしていた。

 明星ベンチでは、西田君と主将の岡本君が、石山 敏之監督と鈴木 博幸部長の横でメガホンを持って、随時、指示を伝えて学生コーチのような役割を担っていたのが目立っていた。

 明星の古谷君はオーソドックスなフォームの右オーバーハンドだったが、終始自分のリズムで投げていかれることで、安定した投球が出来ていた。

(文=手束 仁)