アキバの鉄道居酒屋「LittleTGV」(外神田3丁目、イサミヤ第3ビル4F)。入り口で渡された切符にハサミを入れる。下は同店内の列車関連のオブジェ

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鉄道で旅をすることが好きな人はご存じであろう「寝台特急あけぼの」。上野〜青森間を走るブルートレインだが、3月15日のダイヤ改正とともに現役を引退した。それを惜しむ鉄道ファンは多いと思う。
そこで、“さよなら車両感謝祭「寝台特急あけぼの」”と題して、イベントを3月10日〜14日まで開催していたのが秋葉原(以下アキバ)の鉄道居酒屋「LittleTGV」である。鉄道居酒屋ってどんなお店なのだろうか。同店の様子をレポートする。

アキバは最近よく歩くので大抵の場所には迷わずたどり着けるつもりだったが、「LittleTGV」はなかなか見つからなかった。外神田3丁目のエリアは大小のビルがたくさん固まっているため、その間に埋もれて見つけづらいのだ。10分以上うろうろしてやっとたどり着くことができた……。

ドアを開けてみると、店内はまるで電車の中のよう。路線図や時刻表、つり革、網棚が備え付けられ、なんと、本物の車両で使われていた座席が置かれているのだ!
さらに、左奥には鉄道模型が走っており、先頭車両に小型カメラが仕込まれ、走っているジオラマの情景を店内のモニターに映しだして、お客さんに見せるという趣向。これがなかなかおもしろい。ほかにも、大型モニターで鉄道ビデオの上映や、いろいろな列車の写真、グッズ展示もあり、見ていて飽きない。

で、アキバの居酒屋といえば、店員の衣装が注目なのだが、ここでは当然のごとく乗務員の制服を着たかわいい女の子たち(4名〜5名)が、「いらっしゃいませ。ご乗車ありがとうございます」とあいさつし、入り口で渡された乗車切符にハサミを入れてくれる。旅をしている気分になれる、最高の演出だ!

それから、肝心のドリンク、フードメニュー。これも鉄道仕様になっており、メニューを開くと「新秋葉鉄道路線図」とあり、たとえばデザート線上にマル囲みで350、その下にキラキラバニラアイスと表示されている(関連写真参照)。オススメは電車カクテル、新幹線カクテル、乗務員が目の前で握るおにぎりなどだそうだ。

「寝台特急あけぼの」のイベントのスペシャルメニューは以下の通り。
【ドリンク】
・「青森車両センター EF81形(赤)コリンズグラス」――長岡駅-青森駅間をけん引した列車をイメージし、青森県産りんご100%のリンゴジュースを使ったカクテル。トッピングには、客車2段寝台を表す三ツ星(星型パイナップル)
・「長岡車両センター EF64形1000番台 (青)ロックグラス」――上野駅-長岡駅間をけん引
した長岡車両センター近くの地酒「吉乃川」を使った爽快感あふれるカクテル。月夜を静かに、また、力強く走る姿をイメージ

【フード】
・「大館駅(秋田) 鶏めし」――1980年頃から2008年まであけぼの車内で販売されていた名物駅弁を同店仕様にアレンジ。比内地鶏の出汁で炊きあげ。具材も比内地鶏を使用
・「鶴岡駅(山形) だだちゃ豆」――江戸時代からの在来種の枝豆で、独特の甘みと風味。鶴岡以外の土地で作ると品種特性が失われるなど希少価値が高い

同メニューが書かれた「寝台特急あけぼの」の写真入りメニューカードを見つつ、引退をしのぶというわけだ。期間中、実際にあけぼのに乗ってきたお客も訪れたのだとか。まさに、列車を愛する人たちが集うお店である。

とはいえ、そうした電車、旅行愛好家だけでなく、ランチタイムには子供を連れた家族連れも多く、列車内独特の暖かい雰囲気を味わう一般客もいるそうだ。言われてみれば、筆者のような電車マニアでなくても、さまざまな電車の車両デザインやプレートなど見ていると、若い頃によく仕事で新幹線や地方の在来線に乗って出張したことを思い出されたりもして、懐かしい感情が湧いてくる。

「寝台特急あけぼの」、ありがとう、お疲れさま!
(羽石竜示)