電車にナマケモノ!? 表からみたナマケモノの「ケロロ」

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電車に乗るとじっと、こちらを見つめる動物と目があった。まるで私に何かを訴えかけているようなクリッとした可愛らしい目。一瞬にして心が奪われた可愛い動物の正体は……ナマケモノだ。

電車内にナマケモノがぶら下っているように見えるのは、実は電車の広告。一般的に電車の広告といえば文字や商品が並んでいて、乗客が乗車中に色々と情報を得ることができるが、こちらはナマケモノが丸々チラシになっていてインパクト大!

乗客も、電車内のリアルなナマケモノに視線が釘づけの様子だった。通勤時間にふと見上げると、ナマケモノがぶらり。酔っ払って視線を上げると、ナマケモノがぶら〜り。「たまには、怠けてもいいんじゃな〜い?」と言っているかのようで癒される。

こちらは「海遊館」で企画展示されている「体感!熱帯雨林」の広告で、なんと同展では本物のナマケモノが2匹も登場するという。じっくりみると可愛いが、ナマケモノって怠けている動物というイメージだけで、実際のところは何も知識がない。同館の広報担当・田中さんに、意外と知らないナマケモノの実は……を聞いてみることにした。

ナマケモノは体重の3分の1にあたる大きな胃を持つが、消化速度が遅いため餌がすべて消化されて腸に出るまで1カ月もかかるという驚きの事実。人間で言えば、極度の便秘症じゃないか……。

トイレも1〜2週間に一度、わざわざ地面に降りて用を足すという。あまり動かないのに木の上から粗相をしないところが、非常に律儀である。

「熱帯雨林の植物の葉は動物に食べられないように毒が含まれていることが多いので、ナマケモノのように生の葉を直接食べられる動物はほとんどいません。ナマケモノはその毒のある葉を時間とエネルギーをかけて、なんとか消化しています。実は、理由があって怠けている奥が深い生き物なんです」(田中さん)。

ナマケモノはただ怠けているのではなく、毒のある葉という、みんなが食べないものを食べて生きる超エコロジーな動物だったのだ。また、木の上でじっと動かないのは、敵に見つからないようにするためという理由もあるそうだ。まさに、怠けていることで生存競争に勝ってきた生き物。それなのに怠けている人を見て「ナマケモノみたい」などと言ってはナマケモノに失礼だ。今までごめん、ナマケモノ様。

また、電車広告に使われているナマケモノの撮影には、かなり苦労があったそう。というのも、1日約20時間を寝て過ごすというナマケモノ。ナマケモノが起きていて、なおかつぶら下り振り向いた可愛い瞬間をカメラにおさめるためには、数時間にわたるナマケモノ待ちが必要。電車の可愛いポスターは、スタッフの皆さんの努力の賜物だったのだ。

「うっかりしていると寝てしまうので、寝ないで〜! とニンジンをエサに機嫌をとろうとするも、餌を持ってムシャムシャしながら寝ようとすることも。怠けるのもほどほどに……と内心思ってしまいました」というほんわかエピソードも。

実はデリケートなナマケモノ。同展のように手に届きそうなほどの位置でナマケモノを見られるのは珍しいという。 「広告のモデルになった男の子で少しサイズの大きいのが『ケロロ』、少し小さい方が女の子の『マロロ』です。マロロの方が気が強いです。人間と同じかな……?」(田中さん)

また、首が270度動くので体を動かさずに周囲をチェックできることや、手足を木にかけぶら下って寝ていると思いきや、うまく木の部分を背中にあてて眠るから落ちることはない、などと色々なコネタを教えてもらった。電車の中では、ぶら下って可愛い視線で私たちを癒してくれたナマケモノ。でもやっぱり、ナマのナマケモノに会いに行きたい。
(山下敦子)

※本物をみているかのようで癒されるこのナマケモノ広告は、北大阪急行【千里中央〜江坂〜梅田〜難波〜なかもず】に31日まで掲載中。