日本初の買ったらピザがついてくる本 気になる内容は？
そんな付録ブームの出版界において昨年末、購入すればピザがついてくるビジネス書が登場した。その名も『無名のピザ屋が販売記録世界一を達成できたワケ』。著者は續大輔(つづく・だいすけ)氏。昨年オープンし、開店初日に1500枚のピザを販売したナポリス渋谷神南店を皮切りに、各地で支店を立ち上げていった。これにメディアも注目、日本国内に革命を巻き起こした低価格ピザの"影の仕掛け人"として有名になった。
しかし續氏は、お店のロゴすら決まっていなかったにも関わらず、広告費ゼロでFacebookキャンペーンを開催し、10日間で6,500以上の「いいね! 」を集めている。そして、ある秘策により開店初日に長蛇の列を作ることに成功し、予想を大幅に上回る1,500枚のピザを販売するに至った。本著には、知名度が全くなかったピザ屋が、なぜ初日から爆発的な人気を集めたのか、そのプロモーション方法を包み隠さず、わかりやすく解説している。
そもそも續氏は、飲食業界に精通していたワケではなく、以前は映画会社の宣伝・制作宣伝を担当していた。同じ宣伝というジャンルとはいえ、映像コンテンツとピザでは同じやり方は通用しない。……はずなのだが、彼はこれまでの自身のノウハウと無謀な、失礼、果敢なチャレンジ精神で、販売記録世界一という偉業を達成してしまったのである。
そんな彼のマーケティングのモットーが興味深い。一言で説明すると"ドラマーケティング"だ。これは"ドラマ＋マーケティング"という續氏の造語。續氏いわく、「人生は映画である。だれもが自分の人生の主人公を演じており、その物語を面白くするのはドラマだ。ドラマとは、人生の要所要所で起きる特別な出来事。たとえば、卒業式や入社式といったわかりやすい出来事から、3度の食事というささやかな事柄まで。そういった心揺さぶられる日々の変化の中で、"自分でつくるドラマ"を生み出し、行動させてしまうこと。ドラマーケティングとは、そんな新たなドラマを作ってしまう仕掛けである」
續氏は「窯焼きピザ一生無料キャンペーン」など、さまざまなアイデアやTwitterなどのメディアを駆使して、「ナポリスでピッツァを食べる瞬間があると幸せ！」というドラマをお客が勝手に作り出す仕組みを考えた。
本書を読むと、つぶやく内容やタイミングなど、フォロワーを増やす工夫がよくわかる。また、そこで気をつけるべきことや、精神的苦痛を伴わず続けていくことのコツも語られ、TwitterでPR活動を行っている人にとっては大いに参考になるだろう。その他にも、大泉洋、原田知世主演の大ヒット作『しあわせのパン』（2012年公開）の事例を用いてFacebookページの活用方法を紹介。宣伝に協力したいと応募した各地のパン屋さんが投稿した写真が、パン好きと女性たちのハートをつかみ、作品への興味へとつながったそうだ。
このように、續氏はこれまでの経験を元に、自分だったらどう思うか、友達だったらどう思うか、友達の友達だったら……と、お客の立場に立ったアイデアを膨らませて成功した。もちろん、運命の出会いを果たしたナポリスの創業者、遠藤氏と交わした「ナポリスを窯焼きピザのマクドナルドにしたい」という大きな夢も忘れない。
本著は、店舗のブランディング考、宣伝ツールであるTwitter、Facebook、LINEの役割の違いが具体的な事例とともに、わかりやすく説明されていて、PRを学びたい方にとっては非常にありがたい1冊。また、本人が試行錯誤しながらファンを増やしていった過程がそのまま描かれているので、ひとつのドラマとしても楽しめる。将来自分の店を持ちたい若者にとっては、たくさんの勇気をもらえそうだ。
気づいた人もいるかもしれないが、読み終わるとやはりピザを食べたくなる。冒頭でもご紹介した付録は無料引換券で、渋谷神南店でしか使えないのがちょっと残念（※）。とはいえ、せっかくなので、オープンから約1年、初日に1,500枚販売した伝説の店舗が今、どれだけにぎわっているか見に行ってみるのも楽しいかもしれない。
(ミカマイコ)
（※）無料引換券は、マルゲリータ+AセットorBセット注文の方に限り引き換え可能。Aセット、Bセット分はお客様負担。引換有効期間は2014年12月末まで。
