LTE時代の盲点 意外に快適な3G専用SIMフリースマホ/タブレットのススメ

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2010年12月NTTドコモは超高速通信「LTE」サービス「Xi(クロッシィ)」が開始された。2014年の現在、LTEはNTTドコモのほか、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルなど各キャリアが提供するサービスとなっており、利用できるエリアも拡大の一途をたどっている。超高速通信の恩恵を受けることができるLTEは、これまでの3Gに代わり各キャリアの主力通信サービスとなったと言ってもよいだろう。そしてこのLTEの利用可能エリア拡充に合わせて普及したのが国内向けのLTE対応スマートフォンやタブレットである。現在販売されているスマートフォンの大半がLTE対応モデルとなっている。

本格的なLTE時代となったわけだが、昨年よりやや状況が変化していることをお気づきであろうか。

SIMフリースマートフォンの登場
それは、昨年から家電量販店などの店頭をにぎわせているSIMフリースマートフォンによるところが大きい。日本における正規のSIMフリースマートフォンが一般の利用者に注目されるようになったのは、昨年秋に登場した米Google社の「Nexus 5」からだろう。それより以前にもSIMフリースマホやタブレットは存在していたのだが、ややマニアックな存在であった。さらに日本国内でのSIMフリースマートフォンの存在を決定づけたのは、2013年11月にアップル社が同社の最新モデルである「iPhone 5s」「iPhone 5c」のSIMフリーモデルを日本国内でも投入したことにある。このAndroidとiPhoneの最新機種のSIMフリーモデルが正規に国内での販売を開始されたことで、日本でもSIMフリースマートフォンという存在は認知されたのではないかと思う。


2010年12月25日に日本で初めて発売されたSIMフリースマホ「IDEOS」


SIMフリースマートフォンには3Gモデルがある
ここで注目すべき点が、国内に登場しはじめたSIMフリースマートフォンLTE対応モデルだけではないということだ。昨年11月にはプラスワン・マーケティングが「freetel」という3G専用SIMフリースマートフォンを発売している。ASUSは昨年秋に通話対応7インチタブレット「Fonepad 7」を販売しているほか、小型タブレットとも言えるペン操作が特徴の高性能ファブレット「Fonepad Note 6」も投入した。さらに最近ではコヴィア・ネットワークスが、SIMカードが2枚挿入できるデュアルSIM対応の「FleaPhone」を販売開始している。

これらはいずれも3G専用SIMフリーモデルなのである。

3Gと言えば、NTTドコモが「FOMA(フォーマ)」という名称でサービス提供を開始したことでも知られている、今より10年以上前の2001年に登場した通信規格だ。通信速度などでは新しい規格のLTEに譲るが、現在でもLTEスマートフォン、フィーチャーフォンの通話サービスは3G通信が利用されているなど、日本のケータイ通信の重要なサービスであると言っても過言ではない。

●3G専用SIMフリースマートフォンはMVNOで通信料金がお得
日本国内でもSIMフリーモデルが登場してきた背景には、MVNO事業者による格安のSIMカードの普及が大きな追い風となっていると言っても良いだろう。
NTTドコモやKDDIといったキャリアとデータ通信契約を結んだ場合、一般的にはおおよそ毎月4,000円〜6,000円程度といった月額の通信費用が発生する。対してMVNO事業者のSIMカードは利用できる高速通信の容量がキャリア提供サービスより小さいといった制限はあるものの、月の通信費用は1,000円前後とキャリア提供プランより低価格なプランが提供されている(1,000円台前半〜2,000円以上のプランなども存在する)。


LTE対応の「Nexus 5」とMVNOのSIM。「Nexus 5」にはいくつかのMVNO用通信設定があらかじめ用意されている


次に、端末代金はどうだろうか。LTEの超高速通信が利用できるスマートフォン「Nexus 5」は39,800円〜、7インチタブレットの「Nexus 7 Wi-Fi+LTEモデル」も同様に39,800円、iPhoneに関してはiPhone 5sが71,800円〜、iPhone 5cは60,800円〜となる(価格はすべて2014年3月現在)。

対して3G専用SIMフリーモデルはどうだろうか。「freetel」は12,800円、「Fonepad 7」は39,800円、「Fonepad Note 6」は6インチと大型なためか、やや高めで49,800円、「FleaPhone」は19,800円となっている(価格はすべて2014年3月現在)。つまり、3G専用SIMフリーモデルはLTE対応モデルとほぼ同等か、それよりも手頃な値段で購入することができる。


データ通信量と本体価格を抑えるスタイルを選択する


LTEのほうが良い?いやいやちょっと待て3Gにも利点がある?
MVNOの格安SIMと3G専用SIMフリーモデルの組み合わせは、かなり安価であることがわかった。

多くの人が気にしているのは、スマートフォンは「LTE」でければ駄目なのか?ということだろう。
3G通信よりも新しい通信規格であるLTEのほうが通信品質も通信速度も優れているのは確かだ。しかし、3Gはダメなのかというと、実はそうではない。

例えば、LTEのエリアは広がっているが、まだ電波の弱いエリアやスポットも見受けられる。そういった場所では、3Gのほうが安定して通信できるケースも多い。また、地下鉄や交通機関を利用して移動する場合、LTEと3Gが頻繁に切り替わって、通信が安定しないというケースもある。こうした状況ではスマートフォンのバッテリー消費も大きくなるとも悩ましい点だ。

LTE時代だからこそ、3Gが復活?
おもにWebやメール、SNSに利用するといった使い方であれば、高速通信できる容量が月間500Mバイト〜1Gバイト程度と多くないMVNOの格安SIMでも、十分に実用となる。その場合、高速なLTEでなくても、広いエリアで安定している3Gのほうが快適なケースもある。なにも全ての通信をLTEで行わなければいけないわけではない。実は、LTEが普及した現在、3Gの利用者数が減少したことで通信環境が改善されてきているという、LTE時代だからこその盲点とも言えるのではないだろうか。

ちなみに、3G専用SIMフリーモデルもWi-Fiに対応しているため、動画などで高速通信を利用したい場合にはWi-Fiを利用するという使い分けもできる。

こうして改めて見直してみると、3G専用のSIMフリーモデルとMVNOの格安SIMは、思いのほか相性が良いと判断できる。無駄な通信と料金を使わない時代に入ったスマートフォン。なんでもかんでも高速で高額なLTEに頼らず、適材適所、安価で快適な使い方を選択するほうがスマートと言えないだろうか。

「freetel」という3G専用SIMフリースマホを発売
「Fonepad 7」
「Fonepad Note 6」
「FleaPhone」

布施 繁樹